【川崎大輔の流通大陸】モータリゼーションが今…ミャンマーに展開する“日本流”自動車整備の現場 | CAR CARE PLUS

【川崎大輔の流通大陸】モータリゼーションが今…ミャンマーに展開する“日本流”自動車整備の現場

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整備工場内
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日本企業とミャンマー企業の合弁で設立された整備会社“GOLDEN JDA AUTO SERVICE”における日本人代表の水谷氏に、ミャンマーでの整備ビジネスの課題と魅力について話を聞いた。


◆ミャンマーの日系整備会社“GOLDEN JDA AUTO SERVICE(JDA)”

2015年9月に日本の中古車輸出会社(株)ダイレクトオークションと現地ミャンマーで中古車販売をするGolden Sea & Land Car Sales Centerとの合弁でミャンマーに整備会社JDAを設立し事業をスタートした。

JDAでのサービス内容は自動車の整備全般、車両美化、パーツ販売、車両販売(仲介)だ。現在は、ミャンマー人総責任者1名、日本人責任者1名、日本人整備士1名、ミャンマー人メカニック2名、アシスタント2名、通訳1名、事務1名の合計9名で運営をしている。工場の規模は他(ほか)を比べると小規模であるが、日本的な対応、日本の設備でワンストップサービスを提供して固定顧客を獲得している。

顧客は、ミャンマー人が7割、日本人が3割だ。日本人整備士が常駐し、顧客の要望を細かく受けて、痒(かゆ)いところに手が届く日本的なサービスによって日本人だけでなくミャンマー人にも信頼を得ている。


◆ミャンマーの整備ビジネスの現状と今後の展望

ミャンマーの整備工場はヤンゴン市内で徐々に増えてきている。JDAのような日系企業の関与するケースもあり、5、6社の日系整備会社がヤンゴンに存在する。ミャンマーは分業体制が当たり前の整備市場である。総合的に行える整備工場が少ない。

そのため、いちいち顧客がエンジン修理はエンジン修理業者へ、エアコン修理はエアコン修理業者へとたらい回しで、そのための移動や時間に無駄なコストがかかってしまう。また、車検制度がしっかり確立されておらず、定期点検という考え方がまだ普及していない。壊れてから直すというのが一般的だ。

一方で、海外を知る裕福層には、少ないながらも日本的な整備やサービスを欲しがる人がおり、今後そのような層が増えてくると考えられる。オイル交換やプラグ交換、サスペンションなどの足回りに関しては、日本以上に頻繁に交換が行われるという話も聞く。自動車市場の拡大に伴い、メンテナンスのニーズは確実に増えていくことが期待される。

ミャンマーの整備市場に残されている課題として、「日本では当たり前のことがされていない」と水谷氏は指摘する。整備士の教育、純正部品の迅速な調達、修理履歴の記録、アフターフォローの接客サービスなどがなされていない。日本で当たり前の教育・サービスをミャンマーに合うようにカスタマイズして提供していくことが、1つのビジネスチャンスになるのかもしれない。そうであれば、予防点検的な対応も求められ、整備ビジネス市場は拡大しサービスが多様化することが予想される。


◆JDAの強みと今後の方向性

JDAではすべての整備を1つの整備工場で行える総合整備工場を目指している。リフトなどの大型設備だけでなく、タイヤチェンジャーやバランサー、診断機器、工具類なども高い精度にこだわり日本から輸入をしている。

また、整備だけでなく自動車の販売もできるワンストップサービスを顧客に提供できるのが強みだ。更に整備以外の付加価値サービスを行っている。ミャンマー初のコーティング専用ブースを持ち込んだ。コーティングに重要な埃(ほこり)の入らない、温度管理のできるブースだ。現在、水谷氏自らボディコーティングやウィンドウコーティングのサービスを提供している。

今後は「日本企業としてのイメージももう少し前面に出し、顧客が安心して車を預けられるようなスタッフの教育と組織作りをしていきたい。」と水谷氏は考えている。


◆ミャンマーにおける整備ビジネスの魅力

ミャンマーで整備ビジネスを行う魅力は、「日本で当たり前のサービス提供などがまだ整っておらず、整備ビジネスから波及する周辺ビジネスにまだまだ大きな可能性がある。」と水谷氏は考えている。例えばJDAの強みとなっているコーティングや自動車のチューニングなどもミャンマーにはほとんど入っていない。ブルーオーシャンの市場がまだ残っているのだ。

2015年11月の総選挙ではアウン・サン・スーチー女史が率いる野党のNLDが勝利を収めミャンマーでは新政権が4月からスタートした。新政権になり、既存の自動車政策が変更されようとしている。そして今、ミャンマーは日本が約半世紀前に経験したモータリゼーションの波をミャンマーは今迎えようとしている。

変化が起きている市場には、常に新たなビジネスチャンスが生まれることはどこの市場も変わらない。日本で当たり前のサービスをどのようにミャンマー社会に適合していくかは難しいが、ミャンマーでの整備事業の大きな可能性がそこに存在していることは間違いない。


<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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