日本初の小型四駆「くろがね四起前期型」をフルレストア!…NPO法人防衛技術博物館を創る会
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コラム
◆日本初! 実用の乗用四輪駆動車「くろがね四起」
くろがね四起(正式名称:九五式小型乗用車)とは、実用の乗用四輪駆動車として、日本で初めて開発・製造・使用された車。
1934年に旧帝国陸軍の要請で、自動車メーカー「日本内燃機(現・日産工機)」の創業者で技術者の蒔田鉄司氏(1888~1958年)が設計を行い、1935年にプロトタイプ(試作型)が完成。その後、改良を加えられながら終戦まで生産され、戦後は復興のためにトラックなどに改造された。総生産数は5千台以下といわれており、現存する車両は極めて少なく、日本国内では「日本自動車博物館」(石川県小松市)に後期型トラックタイプが展示されている。
◆「クラウドファンディング」で資金を調達!
今回復元された車両は、日本内燃機の販売代理店を行っていた自動車修理会社「日工自動車」(京都市上京区)が所有していたもの。実車を修理して走らせることを条件に、NPO法人防衛技術博物館を創る会が譲り受け、2014年3月から修復プロジェクトがスタートした。
小林代表理事は、旧車の復元(レストア)を専門に行っている鈑金塗装工場「有限会社永遠ボディー」(神奈川県相模原市)へ修復費用を相談。その結果、エンジンに手を加えない状態で700~800万円、エンジンも完璧に直すならば1,000万円という見積りになり、小林代表理事が個人で用意できる金額の域を超えていた。
そこで小林代表理事は、資金を集めるためにインターネット上で支援者から出資を募る「クラウドファンディング」を利用。日本に一台もないと思われていた「くろがね四起前期型」を復元し、目の前で走っている姿を見てみたいという、熱烈な思いをもつ支援者たちからの応援があり、約3ヶ月の期間で765名から1,300万円以上の資金を調達することに成功した。
◆サビだらけで腐食した車両の復元作業は難航
支援者たちの熱い思いが託された資金をもとに、小林代表理事は自身が社長を務める自動車整備・販売会社「カマド」(静岡県御殿場市)の整備士とともに、本格的な復元作業を開始。
しかしながら、約40年前に故障して以来、そのままの状態で保管されていた車両は、サビだらけで腐食が激しく、欠損している部分が多かったため、作業は難航。オリジナルに忠実なレストアをするには、さまざまな情報や部品が不足していた。
このためインターネットを活用し、数多くの支援者から話を聞いたり、設計資料や現物写真、部品などを収集。さらには、現存する車両が保管されているモスクワへ3度も訪問し、車両の細部を確認するなど、根気強く情報を集めながら復元作業が続けられた。
◆約2年半の歳月をかけて、車両を復元!
プロジェクトを開始してから、約2年半となる本年9月25日。新車と見間違うほどの完成度で復元された「くろがね四起前期型」が、静岡市の御殿場高原ホテル時之栖にて、一般公開された。
会場には、各地から多くのマニアや支援者たちが集まり、復元完成セレモニーや体験試乗会などが行われた。試乗会では、レーシングカーデザイナーの由良拓也氏が同乗し、乗り心地などをインプレッションする場面も見られた。また、静岡県のテレビ局や新聞社、Webニュース媒体などマスコミ関係者による取材も行われ、注目を浴びた。イベントの様子を撮影した動画が公開されているので、ぜひチェックしてほしい。
◆御殿場市内や関東エリアでの出展を予定
今後は、小林代表理事のプライベートミュージアム「社長の小部屋」や、関東エリアでの各種イベントに出展を予定している(個人向けの一般見学は行っていない)。試乗体験については、運転できる技術者が限られていることや、70年以上前に製造された車種のため、補修部品の入手が望めないことから、車両展示やエンジン始動は個別協議の上で決断しているという。
写真提供:NPO法人防衛技術博物館を創る会
《カーケアプラス編集部》
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