【ドライブコース探訪】丹後半島から山陰へ…出雲で出会った絶景 | CAR CARE PLUS

【ドライブコース探訪】丹後半島から山陰へ…出雲で出会った絶景

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立秋前ながらすでに秋的な色合いの夕日。
立秋前ながらすでに秋的な色合いの夕日。 全 38 枚 拡大写真
フォルクスワーゲンのプラグインハイブリッドカー、『ゴルフGTE』で4000km、旅をした。クルマやバイクでの気ままなツーリングはとても楽しいことだ。目的地を決め撃ちする旅もそれはそれでいいが、下調べをすることなく移動するのは、自分の知らないものとの出会いのオンパレード。かりに有名な観光地であっても、季節、天気、時間帯は自ずと違うので、一度として同じ顔を見せることはない。また、同じようなルートを旅していても別の道を通れば見える風景も全然違う。そういうネタが全国、ひいては全世界に転がっているのだ。自由旅行とは、どれだけやっても完結することのない遊びのひとつといえる。

前置きはこのくらいにして、ツーリング情報をお届けしよう。今回は晩夏の京都北部の日本海に突き出た丹後半島から山陰を縦貫するルート。


◆日本海沿岸のヴェネツィア

丹後半島は日本三景のひとつとして知られる天橋立を擁するエリア。浦島太郎伝説(鹿児島人の筆者としては長崎鼻の龍宮神社を推したいが)や天女の羽衣伝説など、古来の民話の伝承地としても名高く、また江戸時代までは貿易港としても栄えていたが、今日ではメインの街道から外れ、ひっそりとしている。高速道路が整備されたため、昔よりはアプローチしやすくなったが、近畿地方や中国地方東部、北陸西部以外の人たちにとってはなかなか訪れにくい場所でもある。

その丹後半島エリアで非常に印象深かったのは、ヴェネツィアのように軒先に船を繋留できる舟屋が立ち並ぶことで知られる伊根の先、日本海沿岸の光景だった。波打ち際から大岩塊が切り立つ様子は、東尋坊や西伊豆をもしのぐのではないかと思われるほどのダイナミズム。何でも、丹後半島から鳥取砂丘の西、白兎海岸までの海岸線はユネスコ世界ジオパーク(地形的、地質学的に著しい特徴がある場所)に認定されているらしいが、この景観はそれにふさわしい勇ましさだと思われた。

丹後半島北岸の国道178号線は、その断崖絶壁の中腹を縫うように延々と走るワインディングロード。海側を回る登りのコーナーでは、ちょっとした空中浮遊感を覚えられたりもする面白いルートだった。一定レベル以上の脚を持つクルマだと、そういう道のドライブはより爽快なものになる。そういったシーンでは、アンジュレーション(うねり)やギャップにめっぽう強いゴルフGTEはとても生き生きとしていた。

奇岩ロードを抜けると、今度は砂浜に着く。綺麗な浜だな~と思い、琴引浜というところに立ち寄ったら、そこは鳴き砂の名所なのだとか。足で踏むときゅっきゅっと音を立て鳴き砂は、石英の微粒子が多く含有された砂浜でみられる現象…と、ホンダが全国の鳴き砂を復活させるべくATVで引っ張るタイプの砂浜清掃機を開発したときに習ったんだったな~と思い出した。石英の砂は花崗岩質が風化してできるので、この一体は古来から深成岩が暴露していたことの証し。さすがはジオパークである。海水浴場ではあまり鳴かなかったが、そこから少し離れたところで踏んでみたら、思ったより威勢よく砂が音を立てて満足だった。

そんなことをして遊んでいると、ドライブがなかなか先に進まない。そろそろ泊地として予定している出雲に向かうかと思ったのだが、琴引浜から少し走ったところで今度は夕日ヶ浦という地名のスポットが。偶然、日没直前の時間帯だったため、そこで夕日を眺めてみることにした。

夕日というものは全国津々浦々で見られるもので、どこであれ美しいものだ。が、夕日ヶ浦などという名称がついていると、プラシーボのためか、余計に美しく見えた。訪れたのは立秋直前だったが、すでに柿色っぽさを帯びるようになっていて、猛暑の中に秋の気配を感じさせられた。この日は水平線に雲がかかっていたため、海に沈む夕日は見られなかったが、そのかわり水平線の雲に隠れた太陽の光が上空の雲に当たって光る残照が見事で、息を呑むビューだった。


◆出雲大社に行くなら朝に限る

鳥取から先はしばらくの間、無料区間が続く山陰自動車道を走った。ところどころ有料区間もあるが、走ったキロ数に対して支払う額は、ヨーロッパの中では高速料金の高いフランスと同じくらい。このレベルの金額であれば、高速道路と一般道をミックスさせた旅ももう少しやりやすくなるのだが。

出雲で泊まったのはネットカフェ。ロングツーリングにおいては、日中は寄り道で忙しいぶん、日没から夜中までの時間は貴重な距離かせぎタイムである。せっかくの素敵な宿に素泊まりというのはいかにも口惜しいし、地方部ではあまりに到着が遅いとビジネスホテルのチェックイン時間を過ぎてしまうこともある。そういうとき、ネットカフェはめちゃくちゃ便利だ。

テントだろうが車中だろうがどこでも平気で寝られるタチの筆者にとっては、空調がバッチリ効き、ブランケット貸し出しがあり、床が平らなフラット部屋やマッサージチェアの部屋などコンパートメントを選び放題のネットカフェは、泊まる場所として上等すぎるくらいである。日本には各地に温泉があるので、汗はそこで流せばいいが、入りそこなったときには追加料金を支払えばネットカフェでシャワーを浴びることもできる。元気があればダーツやビリヤードもやり放題。いい時代になったものだ。

翌朝、さっさと出雲を発って鹿児島に向かおうかと思ったのだが、天気は絶好の快晴。真夏の出雲大社はまだ見たことがなかったと思い、出雲大社に行ってみた。出雲大社は言わずと知れた観光名所で、ヴァカンスのシーズンは混雑する。が、朝の9時前に着いたときは駐車場にはまだまだ余裕があった。2時間半ほど滞在して駐車場に戻ってみたら満杯になっていたので、出雲大社に行くときは朝に限るといえそうだった。


日本一大きな国旗のはためきを眺め、大社にお参りをしてからおみくじを引いた。開けてみると、吉凶は書かれておらず、占いだけが記されていた。自他共に認める末吉大王の筆者にとっては嬉しい配慮だが、中身を読んでみたら、これは大吉以外あり得ないというような良いことばかりが書かれていた。

境内には主神にして国づくり、国譲りのヒーローである大国主命のブロンズ像が設置されている。なかなかのイケメンだ。午前中のわりと早い時間帯ながら、参拝客はそれなりにいる。家族連れが像のところにやってきて、父親が解説を読み、「おい、縁結びの神様だってよ。お願いしなくていいのか」と言ったら、娘のひとりがちょっと間をあけてから素っ頓狂な声で「よろしくおねがいしまーす」などと言っていた。大喜利を見ているようで、笑いをこらえるのに必死であった。


◆気ままなツーリングにはもってこい

参拝をすませた後、参道にある蕎麦屋で早めのブランチ。阿国と八雲という名の2軒の蕎麦屋が並んでいた。言うまでもなく、それぞれかぶき踊りの創始者である出雲阿国と、怪談の編纂で知られるラフカディオ・ハーンこと小泉八雲にちなむ。迷った末、阿国のほうに入って出雲の割子そばを食べてみた。新そばの季節ではなかったが、暑さも手伝ってとてもうまかった。

出雲を過ぎると、風景の寂寥感はにわかに濃くなる。今年の5月に立ち寄ったイソタケルノミコトゆかりの地、五十猛(いそたけ)の灯台、江津の砂浜、山口に入って須佐、宇田郷を経由し、萩に至った。カーナビが萩城の近くに充電会員でなくとも年中無休、24時間使えるという普通充電設備があると言うので、ためしに行ってみたら休日でやっていなかった。

…って、そもそもここは一般企業の敷地内に置かれているプライベート設備じゃないか!!フォルクスワーゲンやカーナビのソフトウェアが悪いのではなく、充電インフラの情報を取りまとめる団体があやふやな情報を出しているのが、情報錯誤の原因だ。日本の充電インフラは、スポットの数自体は素晴らしいものがあるが、ネットワーク化という点ではまだまだ遅れている。経産省や業界団体はもっとしっかり仕事をすべきだ。

過疎化が危惧されている山陰地方だが、こうしてドライブしてみると、積極的に訪れて風景を楽しみたいような場所が山のようにある。休日を利用した気ままなツーリングにはうってつけのルートだと思われた。

《井元康一郎》

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