将来のカーデザイナー育成のために!…第5回カーデザインコンテスト開催 | CAR CARE PLUS

将来のカーデザイナー育成のために!…第5回カーデザインコンテスト開催

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カーデザイン大賞(最優秀賞)bonds 苫小牧市立青翔中学校3年 青木智志君
カーデザイン大賞(最優秀賞)bonds 苫小牧市立青翔中学校3年 青木智志君 全 8 枚 拡大写真
公益社団法人自動車技術会が主催、デザイン部門委員会が企画する、第5回カーデザインコンテストの授賞式が3月27日に行われた。各社のカーデザイナーがメーカーの垣根を越えて、将来のカーデザイナー育成のために活動しているもので、今回は大賞を含め5作品が選ばれた。

このコンテストは、様々な技術革新が生まれつつあるクルマ社会において、カーデザインの世界では、新しい価値の創造に向けての備えとして、創造人づくりが大切な時代となっている。その一方、若者のクルマ離れ、モノ離れや、新興国の台頭、教育現場での、創造人への導きの弱さという懸念もある。

コンテストの狙いについて、デザイン部門委員会人材育成ワーキンググループリーダーの菅原重昭氏(トヨタ自動車)は、「創造の喜びを学べる場づくりをしっかりと企画推進。感受性の高い思春期の中高生に照準を合わせ、創造の喜びへの気付きを通じて、自動車開発志望者の裾野を拡大し、世界をリードするカーデザイナーの誕生につなげること」と話す。

今回のテーマは“10年後の暮らしを楽しくするクルマのデザイン”とし、「現在のクルマにとらわれない、全く新しい発想のオリジナリティ溢れる革新的なデザインを募集した」と菅原氏。

応募資格は全国の中学生(A部門)と、高校生、高専生の1年から3年生(B部門)とし、応募期間は2016年11月1日から2017年1月20日までで、今回は268作品の応募があった。

審査内容は、自分が考えているイメージや機能が表現されているか。また、新規性、進歩性、独創性があるかが審査の基準となった。賞の種類は、カーデザイン大賞が、A部門・B部門の中から最も優れた作品1点。カーデザイン賞が、A部門・B部門それぞれから1名ずつ。ダビンチ賞は工学的な工夫に優れた作品に贈られるもので、A部門B部門それぞれ1名。そして審査員特別賞だ。

第5回を迎えた今回のコンテストで大きなエピソードが披露された。菅原氏によると「第1回のコンテストにおいて、小学5年生の応募があった。しかし、残念ながら対象者が中高性としていたため、ぜひ中学になったら応募してほしいと、デザインの描き方のアドバイスを行った。その後、その方は中学1年生でカーデザイン賞を受賞、2年生でもカーデザイン賞を受賞した。我々は無記名でデザインを審査しているのでたまたまそういう結果になった。そして今回カーデザイン大賞を受賞した」と話し、「まさしくこういった成長のあり方そのものが我々にとっては大変な喜びであり、この委員会が目指すところでもある」とコメントした。

また、「第1回の受賞者はこの4月からプロになった。第2回以降の受賞者もプロを目指してトライ中の人達がいる。今後も本活動を継続的に取り組み、カーデザイン界の芥川賞のように発展できるように望んでいる」とこのコンテストが着実にカーデザイナー育成につながっていることをアピールした。

今回の受賞作品は次の通り。

・カーデザイン大賞(最優秀賞):bonds 苫小牧市立青翔中学校3年 青木智志君
・カーデザイン賞(A部門):Wear 広島市立高取北中学校2年 上川千学君
・カーデザイン賞(B部門):SIZUKU 福岡市立博多工業高等学校2年 占部晴君
・ダビンチ賞(A部門):該当なし
・ダビンチ賞(B部門):Car Bee 女子美術大学付属高等学校2年 佐藤雲母さん
・審査員特別賞:プリュム 女子美術大学付属高等学校2年 足立玲音さん
・佳作:18名

イベントワーキンググループリーダーの木村徹氏(川崎重工業)は、「毎年着実に進歩し、ついに高校生を凌駕してデザイン大賞を獲得するという快挙を成し遂げた」と大賞受賞者を讃えるとともに、「スポーツカー本来の要素である滑らかに走る気持ちよさと、ダイナミックさを素直に表現し、また、確実にその楽しさを伝えてくれている。造形コンセプトも日本刀の形状に注目するなど、プロ顔負けの取り組みだ。また、機能面でも社会の変化をよく理解した、好感の持てる提案がされている」と評価した。

最後にデザイン部門委員会委員長の高嶋晋治氏(本田技術研究所)は、応募作品全般の感想として、「目覚まし進化、進歩を見て凄いと感動している。特に今年はAI(人工知能)を意識したような自動運転や、高齢化による事故をどうやって解決するかなどに視点を向けた提案が多くあった」と今年の特徴を語る。

また、「我々がカーデザインを始めた頃は、絵を描いてモデルを作ったりと、手先の器用なちょっと変わった人達が行っていたが、最近では、ブランド戦略や、ビジネス上でも経営面や、自分達のアイデンティティの表現方法として、デザインは非常に大きな役割を果たしている」とし、「単純にモノをデザインするだけではなく、社会、会社、街をデザインするなど、デザインが捉える領域が非常に広くなってきている」とデザインの社会における重要性を述べる。

そして、「これからの自動車産業を引っ張っていくためにも、若い人達の色々なアイディアや取り組み、感じ方、感性がますます不可欠になっていくと捉えている。更にこのコンテストを通して世界のリーダーを育てていきたい。もっと発展させ、デザイン業界の芥川賞にしていきたい」と今後の抱負を語った。

この授賞式後は、各メーカーの現役デザイナーによるレクチャーがマンツーマンで行われ、受賞者たちは真剣に、かつ楽しそうにアドバイスを受けていた。

カーデザインの芥川賞を目指す…第5回カーデザインコンテスト開催

《内田俊一》

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