【インタビュー】新生SUBARUの第一弾、XVに込めた思いとは…担当デザイナー
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■XVらしさとはアンバランスの妙
----:「際立とう2020」戦略のもと、社名が新しくなり、デザインにおいても様々な取り組みがなされていると思います。これらを踏まえ、磯村さんがこの新型XVのデザインに込めた思いについて教えてください。
磯村さん(以下敬称略):スバルのクロスオーバーの歴史を振り返ると、二代目『レガシィ』の途中から『グランドワゴン』という名称でデビューし、それ以降長く販売し続けてきました。そして現在、我々のクロスオーバー戦略には3つの柱があります。ひとつは長男の『アウトバック』、次男の『フォレスター』、そして三男にあたるのがXVです。
このXVはスバルXVという名称になってからは二代目。インプレッサXVを合わせてもやっと三代目と歴史の浅いクルマにも関わらず、“XVらしさ”という言葉をお客様からもらうようになりました。
そこで、新型XVを開発する際に、このXVらしさというお客様の言葉を因数分解しました。XVらしさとはアンバランスの妙だと思います。よりタフなクルマはフォレスターがありますし、よりグランドツーリングという方向ではアウトバックがある。しかしXVらしさという言葉で考えられるのは、もっとカジュアルで街中でも普通に使え、行った先でも十分楽しめるという、両方を兼ね備えたクルマ。その唯一無二がお客様のいうスポカジらしさだと思っています。
そこで、“スポカジ”という我々のクロスオーバーの中で唯一XVが持っているこのワードを突き詰めていきました。
一方で、今回の開発コンセプトである“ファンアドベンチャー”が掲げられた時に、それがそのままデザインのテーマにもあてはまったのです。我々としては、お客様にスポカジをこれまで以上に感じてもらいながら、ワクワクドキドキ、クルマに乗ってどこかに出かけようと、気持ちを高めてもらえるデザインにしたいと考えました。XVをデザインする際、スポカジの進化、スポカジの追求という言葉を我々の中では使っていたほどです。
■XVがデザインの始まり
----:XVらしさ、スポカジをデザインの基本と考えるにしても、インプレッサを踏まえながらデザインする必要があり、そういう点で制約が多かったとも考えられますが、いかがですか。
磯村:私は新型インプレッサ系の前に、5代目レガシィに携わっていました。その時もB4セダンを見ながらツーリングワゴンという屋台骨と、アウトバックもあるという、3つのクルマを考えなければならなかったのです。同時に考えるのは大変だという言葉はよくもらいましたが、こういう場合は、一番大切にしたいクルマを先にデザインするのです。その時はアウトバックを最初にデザインしました。そして、今回は、XVを先にデザインしています。
もちろん、効率化を図るために、部品の一部を共有することは当然行っています。これはお客様に効率よく商品を届けるために我々がとっている戦略でもありますから。しかし、この共有化のために苦労をしたということはありません。XVありきのデザイン、ここを起点にデザインし、このデザインを一番大切にしているのです。
----:では、セダンや5ドアはどのようにデザインしていったのですか。
磯村:XVのデザインのこの考え方をセダンや5ドアにあてはめて、おかしければ両方でブラッシュアップしていきました。ですから、セダンを買っていただいたお客様を不愉快にすることもなく、5ドアを買ってくれたお客様は5ドアをものすごく愛してもらえるようにデザインしているのです。
その一例がボディサイドの「ヴィジブライン」です。まずXVでの比率を見て、この比率をセダンにあてはめてみる。そして、セダンが一番大事にしている伸びやかさをスポイルするようであれば、跳ね上げる角度をセダンベースで少し直して、それをXVにもう一度戻して再確認していきました。なので、あるクルマを完成させてから、それを無理やり取り入れるということは一切やっていません。
----:どのあたりが他のモデルと共通なのでしょう。
磯村:例えばリアハッチゲートは5ドアと形は共通です。しかし、リアスポイラー部分を艶のある黒に変えました。薄く見えるキャビンを作りたいというテーマは一緒なのですが、真後ろに回ると5ドアはローアンドワイドというデザインに対し、XVは、リアをブラックアウトすることで、ガラスの面積があたかも上までであるような視覚的な効果を狙い、縦基調のスタンスを作っています。バンパー下からウィンドウまでのボディ色を使い、そこから上を艶のある黒にしているので、 5ドアでは比較にならないぐらいの厚みのある、XV独特のスタンスが出来上がっています。
このような合わせ技を使いながら専用化、共用化を図ることで、より効率的にものが作れるのであれば、我々はその方法を選択するでしょう。
■XVの最も特徴的なのはフロントグリル
----:フロント周りを比較すると、フロントグリルはこのXVのみ表現が違っていますね。
磯村:フロントグリルはかなり特徴的です。いわゆるヘキサゴンの象徴で外周を作っており、これは他と変わりません。しかし、先代XVやセダン、5ドアでは、クルマの顔なのでクロームメッキを外周に使って充実感を出しています。ここをあえてXVのテーマであるクラッティング、プロテクター類と同じ表面処理を与えることで、大事なものをプロテクトしているというテーマを反復させているのです。これにより、他のクルマでは絶対に真似できないXVらしさを出しています。新型XVの一番の特徴はこの部品でしょう。
少し詳細に説明しましょう。まず、発想をヘキサゴンの外側ではなく、内側で何が出来るかに変えました。六角形という我々のコアのアイテムはそのまま使いながら、重要なものをプロテクトするという考え方です。
具体的には、我々の顔である中央の七つ星をベースに、その下に黒い艶のある充実感のある横バーを入れました。そこにメッキのシルバー加飾パネルも与え、かつ左右から押さえるようにすることで、七つ星という大事なものをプロテクトするイメージを持たせているのです。それは、フォグランプ周りもプロテクトしてあるのと同じで、統一した考え方を持たせているのです。
こういう組み合わせの結果、似ているようで全く違って見え、独自の世界を作ることが出来ました。ヘッドランプやいくつかのパーツを共通にしていますが、XVの顔に見えるようにすることが、我々プロダクトデザイナーの見せ場だと思います。
■オレンジのトータルコーディネートが楽しめるインテリア
----:インテリアでのこだわりはいかがですか。
磯村:先代よりもXVらしさという点にはとても気を使いました。先代インプレッサはすごく丹精で真面目で、ロングライフデザインに根付いたスバルのインテリアらしい作り方をしていましたが、お客様がよりグローバルになると同時に、若いお客様、特に女性という、我々が一番苦手としていたお客様がたくさんXVを買ってくださいました。
そこで今回は最初からXVのインテリアのあり方を考え、テーマカラーであるオレンジを使いながら、形状、立体、素材それぞれのコントラストを組み合わせつつ、ひとつか二つ上の格、質感にする作り方をしています。
実はオレンジのステッチを使うことなどは我々にとって一番苦手だったところなのですが、XVとしての世界観をどう与えられるか、ひとつひとつ表現方法を吟味しながらデザインをしていきました。
ちょっと隠しネタなのですが、メーターのリングなどにもオレンジを反復させ、ドライバーしか気付いてもらえないようなところなどがあります。しかもショールームでは気付かず、購入して初めて気付く、そういう隠し技みたいなものを入れながら楽しさ表現もトライしました。
----:オレンジといえば、フロアマットなどにも使われていますね。
磯村:はい。実は効率よくお客様に届けるためにこういったところは我慢することがありました。しかし今回は、我々本丸の開発が出来ないところを、用品開発とのタイアップを早めにして、最初からテーマカラーを共有することで、お客様にはトータルでXVらしさを体感できるような新しい取り組みをしています。
----:XVが発表されたいま、思うことを教えてください。
磯村:XVは、ファンアドベンチャーというテーマを掲げ、何かに挑戦しようという、マインドの若い方がターゲットになります。そういった方にちゃんと響くよう具現化していきました。また、セダン、5ドア、XVそれぞれキャラクターを立てることで、それぞれのお客様が喜んでもらえるようにすることが私の仕事です。
5ドアを購入したお客様とXVの先行受注のお客様を見ると、住み分けが完全に出来ており、どちらかがシュリンクしているということもありませんでした。つまり、我々が行ってきた、専用とそうでない部分とを区分けしデザインしたことは間違ってなかったということを改めていま感じています。
《内田俊一》
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