【輸入車パワーユニット比較】いま選ぶべきはディーゼルか、PHEVか…大谷達也
特集記事
コラム
ディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』、プラグインハイブリッドのフォルクスワーゲン『ゴルフGTE』。そしてガソリンエンジンを搭載したメルセデスベンツ『Aクラス』とBMW『120i』の4台をモータージャーナリストの大谷達也氏と南陽一浩氏が解説する。前編は大谷氏による比較インプレッションをお届けする。
◆走行条件が厳しいほど光るディーゼル…プジョー 308 GT BlueHDi
「ディーゼルは走りが悪い」という既成概念はもはや幻想に過ぎない。308GT BlueHDiの最高出力は180psで、184psを発揮するガソリンモデルのBMW120iと同等。いっぽうで最大トルクは400Nmに達し、350NmのA250 スポーツ 4MATICを凌いで4台中堂々の1位に君臨する。
その魅力がもっとも輝くのは追い越し加速。アクセルペダルを踏み込めば、エンジン回転数が上がるよりひと足早くトルクがモリモリと沸き上がり、背中を軽く押されるくらいの勢いで速度を増していく。乗車人数や荷物が多いとき、上り坂を走っているときなど、条件が厳しければ厳しいほどガソリンエンジンに対するアドバンテージが拡大するのもディーゼルの特徴だ。
燃料代が安いのもディーゼルの魅力。120iとA250のJC08モード燃費が13.9~15.9km/リットルに留まるのに対し、308 GT BlueHDiは20.1km/リットル。しかも、軽油はガソリンより20~30%ほど安いから、同じ距離を走行したときの燃料代は20~70%も安くなる可能性を秘めている。
一方でディーゼルの難点はノイズがややうるさく、バイブレーションも大きめなこと。これらは次第に改善されているとはいえ、最良のガソリンモデルに比べて一歩劣るのは仕方ない部分だ。
◆静かさとスポーツ性を両立したPHEV…フォルクスワーゲン ゴルフGTE
コンパクトカーのベンチマークというべきゴルフのプラグインハイブリッドモデル。排気量は1.4リットルと小さいものの、最高出力109psを生み出す電気モーターの力を借りて“GT”Eを名乗るに足るパフォーマンスを生み出している。もっとも、走りの性能は同じゴルフのGTIなどに比べればかなりマイルドで、足回りもソフト。加速もスムーズな印象が強く、GTIのような凶暴さは感じさせない。
ただしエコカーという言葉から連想される「かったるさ」とは無縁。「フツーのゴルフよりちょっと元気」というレベルの速さを想像してもらえればいいだろう。もっとも、エンジンを掛けずにモーターの力だけで走っているときの静けさ、滑らかさは当然のことながら電気自動車並みで、そうした走りをしていると自分が未来を先取りしているような満足感が得られる。
また、家庭用コンセントなど外部電源から充電した電力で走行しているときのCO2排出量は小さく、その意味では環境に優しいクルマといえる。ただし、カタログに謳われている53.1kmのEV走行距離はあくまでも理想値で、現実的には30~40kmといったところ。また、これはPHV全般にいえることだが、コンセントをつないで充電しないと環境性能の高さを十分に発揮できないところも、ひとつの弱点といえる。
469万円の価格はPHVとしては安いが、Cセグメントとしては高いと言わざるを得ない。
◆ハッチバックモデルの最高級…メルセデスベンツ A 250 4MATIC
Cセグメントに参入して3世代目となる現行Aクラスは、この価格帯でもメルセデスらしいクォリティ感を上手に演出しているという点において完成度は高い。
車両価格534万円のA250 スポーツ 4MATICはAクラスの全ラインナップ中、AMG A45 4MATICに次ぐ“高級モデル”で、2リットルターボエンジンは218psを発揮。しかも4輪駆動の4MATICを装備しているのでトラクション性能も十分。前輪駆動ではタイヤが空転しそうなシーンでもしっかりと路面にパワーを伝えてくれる。
残念なのはエンジンの回転フィールがややがさつなことと乗り心地が荒れていること。エンジンがより滑らかに回り、もう少し足回りがしなやかに動いて路面からのショックを吸収してくれると、さらに完成度は高まるはずだ。
◆クラス唯一のFRモデル…BMW 120i Style
このクラス唯一の後輪駆動モデルは、素直なステアリングフィールに大きな魅力がある。また、しっかりとしたボディ剛性、優れた静粛性、しなやかな乗り心地などはBMW『3シリーズ』を思わせるレベルに到達している。こちらも上級モデル並みといえる8速ATは、シフトが速いにもかかわらずショックは小さく、また高速巡航時のエンジン回転数を下げて静粛性をさらに高める効果がある。
いっぽう、シャシー性能がエンジン性能より大幅に高いため、後輪駆動に期待される「アクセルひとつでコーナリングをコントロール」する感覚は味わいにくい。エンジンを縦置きするゆえ、後席の居住性に代表されるスペース効率の点でもライバルたちをしのいでいるとは言いがたい。内外装のデザインについては「BMWらしく落ち着きがあっていい」という意見と「保守的でやや退屈」という意見の両方がありそうだ。
大谷達也|モータージャーナリスト/AJAJ会員/日本モータースポーツ記者会会員
1961年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に、二玄社に入社し、CAR GRAPHIC編集部に配属。2002年、副編集長に就任。2010年よりフリーランスのライターとして活動を開始。現在は自動車雑誌、ウェブサイト、新聞、一般誌などに記事を寄稿。
協力:プジョー・シトロエン・ジャポン、フォルクスワーゲングループジャパン、BMW、メルセデス・ベンツ日本
《大谷達也》
この記事の写真
/