【カーオーディオ・マニア】愛車に低音増強ユニット導入したら「サウンドチューニング」が必須!
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■コンサート会場で、低音だけが後ろから聴こえてくることはあり得ない…。
ここまでは、低音を増強するためのユニットのいろいろを紹介してきたが、今回からはそれらを活かすための「サウンドチューニング術」の解説を行っていく。
最初に、低音チューニングにおける目標について考察する。結論から入りたい。低音チューニングにおける目標とは、“前方定位”である。音圧を体感しようとするスタイル等々、これにこだわらない楽しみ方も存在しているが、Hi-Fi的なアプローチでは、“前方定位”が目指されるのが一般的だ。
ところで、使用する低音強化アイテムが小型・薄型のパワードサブウーファーならば、設置場所はシート下とされることが多い。それ以外ならば、設置場所はトランクとなることがほとんどだ。であるので低音は普通、自分自身の真下か真横、もしくは後方から発せられることとなる。
しかしながら、音楽は前から聴こえてくるべきだ。例えばコンサートに行って、ステージは前方にあるのに低音だけが後ろから聴こえてきたらどうだろう。もしもそうだったとしたら違和感を覚えるはずだ。
カーオーディオにおいてもそれは同様だ。例えサブウーファーを後方に置いたとしても、低音も前から聴こえてきたほうが自然だ。この「低音も前から聴こえてくる状態」が、“前方定位”だ。
とは言うものの、低音の出所はあくまでも真下か真横、または後方だ。にもかかわらず低音が前から聴こえてくる状況を作り出せるのだろうか…。
答は“イエス”だ。フロントスピーカーの音とサブウーファーから発せられる音が“一体化”すると、低音も前から聴こえてくるようになるのである。
■“指向性”の弱い音は“指向性”の強い音に引っ張られる…。
“前方定位”が実現されるメカニズムは以下のとおりだ。まずは次のような前提を理解していただきたい。音には“指向性”の強い、弱いがある。“指向性”が強いとどこから音がしているのかがわかりやすい。逆に“指向性”が弱いと音の出所がわかりにくくなる。そして、高音は“指向性”が強く低音は“指向性”が弱い。
続いては、音楽を再生する状況をイメージしていただきたい。中高音をフロントスピーカーに、低音をトランクのサブウーファーとに役割分担させて再生したとする。このときもしもフロントスピーカーの音とサブウーファーの音が上手く混ざり合うと、“指向性”の弱い低音は“指向性”の強い高音に引っ張られて、前から聴こえてくるように錯覚する。“前方定位”は、このようにして成り立つのである。
ちなみに、フロントスピーカーがセパレート2ウェイタイプのときも、ツィーターから発せられる高音とミッドウーファーから発せられる中低音が一体化すると、サウンド全体が目の前から聴こえてくるような状態が作り出される。中低音は足元のミッドウーファーから発せられているのに、“指向性”の強いツィーターの音に引き上げられるのだ。セパレートスピーカーが人気となっている一因が、まさにここにある。音場を高い位置に上げられることが、セパレート2ウェイスピーカーの利点の1つなのである。
さて、問題はフロントスピーカーの音とサブウーファーの音をいかにして“一体化”させるか、だ。
ポイントは主に2点ある。1つは音の到達時間を一致させること、そしてもう1つは“位相”を一致させること。この両方が成り立つと、サウンドが一体となり低音の“前方定位”が成り立つのである。
■音の到達時間を整えるには、“タイムアライメント”を活用すベシ。
続いては、音の到達時間と“位相”のそれぞれを一致させるにはどうすればいいのかを解説していこう。まず音の到達時間を一致させるためには、“タイムアライメント”という機能が必要となる。これは、近くにあるスピーカーに対して音を発するタイミングに遅延(ディレイ)をかける機能だ。そうすることで、すべてのスピーカーから発せられる音の到達時間が揃い、あたかもすべてのスピーカーから等距離の場所にいるかのような状況を作り出せる、という機能である。これを運用することで、フロントスピーカーが奏でる音とサブウーファーから発生される音とが、同時に自分の耳に届くようにできる。
次いで、“位相”を一致させるにはどうすればいいのかを解説しよう。重要度はむしろこちらのほうが大きい。これが合うか合わないかが、“前方定位”が実現できるか否かのカギとなる。
まず“位相”とは何なのか、から説明しよう。ざっくり言うならば、「音波のタイミング」だ。音は、水面に石を落としたときにできる波紋のように、上下動を繰り返しながら空気中を進んでいく。この上下動のタイミングを、フロントスピーカーとサブウーファーそれぞれで一致させる必要性があるのだ。
やっかいなのは、この音波のタイミングはさまざまな要素で変化する、ということ。なので、複数のパラメーターを総合的に整えていく必要がある。例えば、接続のプラス・マイナスを逆にすれば“位相”を反転させることができる(実際の調整では、正相・逆相切替スイッチで“位相”を反転させる)。または、“クロスオーバー”機能の“スロープ”を変化させても“位相”は変わる。さらには“タイムアライメント”や“イコライザー”を変化させても“位相”が変わることがある。
これらを総合的に調整して、フロントスピーカーとサブウーファーの音を“一体化”させ、“前方定位”を実現させるのである。
今回はここまでとさせていただく。次回は、“前方定位”を実現させるための具体的なチューニング方法について解説していく。お楽しみに。
“ロー”を制する者はカーオーディオを制す! Part.5 チューニングで目指すべきは“前方定位”!
《太田祥三》
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