【岩貞るみこの人道車医】道が道でなくなったとき、クルマは…災害と情報伝達 | CAR CARE PLUS

【岩貞るみこの人道車医】道が道でなくなったとき、クルマは…災害と情報伝達

特集記事 コラム
平成30年7月豪雨
平成30年7月豪雨 全 4 枚 拡大写真
◆災害と情報伝達

西日本を中心とした大雨で、亡くなられた方にお悔やみ申し上げますとともに、被災された地域の一日も早い復興をお祈り申し上げます。

平成30年7月豪雨と名付けられた今回の大雨。気象庁は、50年に一度と言って早めの避難を呼び掛けたけれど、死者は200人を超える(原稿執筆時)大災害になった。土砂に埋まったクルマ。川に流されてつぶれたクルマ。そして、水につかったたくさんのクルマたち。人的被害のほか家屋や道路に加え、車両の被害も甚大である。被害にあった地域は自家用車利用率が高く、日常生活にはクルマでの移動が組み込まれている。ガス、水道、電気と同時に、クルマ(+道)が命をつなぐライフラインゆえ、クルマが使えない生活の厳しさは容易に想像がつく。

今回の土砂災害や浸水被害を見ていると、これが自動運転になったときは、どうなるのだろうという思いが強くなる。気象庁は50年に一度の大雨というけれど、広島県の土砂災害はほぼ同じ場所で4年前にも起こっている。50年に一度どころか、4年に一度ではないか。さらに年々、線状降水帯だのバックビルディング現象だの、新しい言葉が次々と出てきて説明されるほど、雨は激しくなっている。それに、雨だけじゃない。熊本は大雨で冠水の被害が出る前年は激しい地震にも襲われており、大雨、地震、突風、高潮……と、自然災害全体を見ていけば50年に一度などと悠長なことは言っていられないのだ。

◆道が道と認識できなくなったとき

道が道と認識できなくなったとき、自動運転の車両はどうなるのか。冠水が予想されるとき、どこへ逃げるようにプログラムを組めばいいのか。

一般道で、完全自動運転の車両が走るのは、まだまだ遠い先である。しかし、限定された地域や車線を使って走らせるやり方は、かなり現実的なところまできている。歩行者や自転車が入り込まない場所を設定すれば、技術的なハードルはぐっと下がるからだ。ここでは運転席がない車両を使うこともできる。遠隔操作だってできるのである。

では、そういう状況で災害が起きたらどうなるのだろう。台風の日、走行ルートに街路樹が倒れて車両が止まったら、おそらく遠隔で監視しているスタッフが気づいて助けにきてくれることだろう。車内に人がいれば、119番通報をすることも可能である(車内にいるのが、視覚障がい者だけならば、ほかに手段を考える必要があるけれど)。でも、冠水はどうなるのか。遠隔スタッフは、ちゃんと助けにきてくれるのか。119番通報すれば、救助隊はすぐにきてくれるのか。今回の大雨で、ある消防本部では対応すべき要救助者が300人を超えたという。既存の電車やバスなら、運転士や車掌が対応してくれるだろう。でも、そうした人がいない自動運転の車両の中にいる人は、特にそれが、下肢障がい者や視覚障がい者だった場合、水没をはじめた車両のなかで、いったいどうすればいいのだろうか。

こうした被害に合わせないためには、大雨警報が出たら、走らせないという方法もあるだろう。でも、あまり頻繁に運行を中止していたら、日常の足としての使い勝手は下がるばかりだ。結果、なにも起こらなければ、オオカミ少年になりかねない。

となると、必要なのは情報の精度を上げることである。質の正確さとリアルタイム性。この二つを徹底的に高める必要がある。

◆「数年に一度」の自然災害に向けて

今回も、ダムの放水に関して、ダムの管理責任者が「放水する」と判断して自治体に伝えたあと、自治体が住民に伝えるまでに数時間のタイムラグがあったという報道を見かける。なんのために数時間も待ったのかは、いまの時点ではわからない。ただ、最終的に市民への情報提供が遅かったのは事実だ(市民は遅いと感じている)。「放水」の情報伝達方法を再考することはもちろんだが、放水の可能性があるのなら、前の日の段階で、「降り続いたら明朝、放水をする」と予備情報を出し、住民に心構えをさせておく工夫も併せて取り入れるべきだろう。

人がいない公共交通機関としての自動運転。災害時でも的確に運行を判断するためには、まず、情報である。

あれ? でも待てよ。こうした大雨や川の氾濫情報が必要なのは、なにも自動運転の車両だけではない。レベルゼロの手動運転にだって役に立つ。いや、役立てなければ救えない。50年に一度どころか、数年に一度のスパンで起こる自然災害。情報伝達は、マニュアル作ってやったつもりでは役に立たない。本気で考えて見直す必要があると思う。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

道が道でなくなったとき、クルマは…災害と情報伝達【岩貞るみこの人道車医】

《岩貞るみこ》

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