しかし先日、自動車整備業者のサポートを担うプロ集団「Y-PIT」で防錆作業(サビ止め)を担当している方に話を伺い、その甘い考えを吹き飛ばされた。
◆クルマはそもそもサビるもの
まず衝撃を受けたのが、「鉄の塊であるクルマはそもそもサビるもの」という大前提。・・・確かにそうだ。言われてみれば至極当然である。では、なぜその当然のことに気づかなかったのか。それは、クルマの表面は塗料やコーティング剤で覆われているのでサビにくいから。だから、クルマを擦ってしまったり、飛び石などでキズがついたりで鉄の部分が露出しない限り、サビが進行しないのだ。目に見えるところにサビがないから、クルマはサビないと思い込んでしまうのだろう。
◆塩分はクルマの天敵
では、どんな部分がサビやすいのだろうか?
それは、構造上袋状になっており水が溜まりやすいボンネットやドアの内側。そして、走行中常に飛び石や砂利の攻撃を受け続けているクルマの底面。こういった普段あまり目にしない部分がサビやすくなっている。
ちなみに塩分は鉄の天敵で、沿岸部の潮風を受ける建物が軒並みサビているのを目にしたことはあると思うが、クルマも同様で、沿岸部に行った後は丁寧に洗車をして、塩分をとってあげないとサビの原因になってしまう。
また、意外と見落としがちなのが積雪地域のサビ。これは、道路の雪を溶かすために撒かれる凍結防止剤や融雪剤が原因だ。これらの正体はいわゆる「塩」。つまり、これが撒き上がりクルマに付着すれば当然サビの原因になる。
◆サビを放置すると大事故に
目に見えないところで進行するサビ、これを放っておくと大変なことになる。
ボンネットやドアの内側のサビを放置すると、そのうち車体に穴が開いてしまう恐れがある。そこまで進行してしまうと当然、修理代も莫大な額になってしまうし、中古買取の査定価格も大幅に下がってしまう。
そして、底面でのサビは露出している金属パーツを腐食させ、走行中に振動で落下させることもある。そういえば学生時代に友人の原付でそのようなことがあったのを思い出した。あの時は大笑いしたものだが、考えてみれば大事故に繋がりかねない危険なことであった。
◆世界各国の自動車メーカーが採用するシステム
防錆が重要なことは分かったが、自分ではできないのだろうか? ケチな筆者は出費を抑えられないかと思い聞いてみた。すると次のような回答が返ってきた。
「出来ないことはないと思いますよ。ただ、市販のものとプロが使うものとでは、まず防錆剤が違います。私どもが導入しているシステムは、世界各国の自動車メーカーでも採用されているダイノール社のデニトロールというもので、非常に剥がれにくく永く保つという特徴があります。さらに特殊器具を使って、ボンネットやドアの裏側の水が溜まりやすい部分にも処理ができる優れものです」
◆素人が完璧にこなすのは無理
続いて、「それから作業環境も違います。例えば、一番サビが発生しやすいクルマの下回り。工場では車体をリフトアップさせて作業を行いますので細部までくまなく処理が可能です。しかし、これを自分でやろうと思うとどうでしょう、クルマの下に手をいくら伸ばしてみても、少なからずムラが出てしまいますよね」だそうだ。
つまりは、素人が完璧にこなすのは無理だということだろう…。
◆本格防錆はむしろ経済的!?
ここまで読んでいただき、本格的な防錆処理に興味を持って頂いた方もいるだろう。でも、お店に頼むと高いというイメージがあるというのが本音ではないだろうか?
それに関して、一つ耳寄りな情報を提供しよう。それは、ここまで徹底して処理をすれば、次のクルマに乗り換えるまで安心して乗れるようになることだ。初期コストこそ多少かかるかもしれないが、一度施工すれば効果が何年も持続するのでトータルで考えると決して高くないはずだ。さらに中古買取の査定が下がらないと考えればむしろ経済的と言えるかもしれない。
最近は、一台のクルマを長く乗り続ける人が増えてきていると聞く。また、マイカーリースや残価設定ローンのように、契約終了時に車両の状態を査定されるシステムも増えてきている。車両の価値を下げないためにもサビ対策は重要と言えるだろう。
本格的な冬が到来し積雪がある前の今こそ、サビ対策におすすめの時期。地元で本格的な防錆処理をしてくれるお店を探してみてはいかがだろう。また、施工にベストなタイミングは新車購入時、クルマの買い替えを検討中の方はぜひ、併せてサビ対策も検討して欲しい。
最後に、今回取材にご協力頂いた「Y-PIT天童」さんに感謝の気持ちを伝えたい。
<取材協力>
店舗名:Y-PIT天童
住所 :山形県天童市石鳥居一丁目1-76
TEL :023-674-0017