タイヤの空気圧チェック、最後にしたのはいつですか?【岩貞るみこの人道車医】
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先日、レスポンスでも記事になったけれど、4月にダンロップ(住友ゴム)が全国47会場3014台に行った全国タイヤ安全点検の結果はこちら。
空気圧の過不足:25.2%
残溝不足:7.3%、
表面の損傷:6.7%、
偏摩耗:5.2%
10年以上前になるけれど、私は、ブリヂストンでタイヤ・セーフティ・セミナーのインストラクターをさせてもらっていた時期がある。一日かけて座学と実技をするのだが、その間、スタッフがこっそり参加者のクルマのタイヤをチェックするのである。
参加した人たちは、休日を使ってこうしたセミナーに来るくらい意識高い系であるにもかかわらず、空気圧不足がかなりの割合でいて、中には、残溝が法律で決められている1.6mmギリギリというタイヤまであって、「ほんっとに気を付けてね!」と声をかけてセミナー終了時に、ざんざかぶりの雨のなか帰りゆく姿を祈る気持ちで見送ったものである。
このころ、タイヤ販売店さんによくお会いしていたのだが、彼らの印象としては半数近くのタイヤは空気圧が不適正、というものだった。ガソリン(軽油)は入れるけれど、空気圧は意識のなかにないよね。だって、ガソリン(や軽油)と違って残量計ないんだもの。
◆新型車の燃費競争と空気圧
ところで、少し落ち着いてきたとはいえ、相変わらず新型車の燃費競争は続いている。少しでも数字をよくするべく、開発者は血反吐を吐くほど(この表現、まんざら嘘じゃない気がする……)がんばっている、らしい。
そして、軽自動車をはじめとする小さいクルマで「やりがち」なのは、ギアをいじることだ。シフトアップのタイミングとか、あれこれやると同じようにアクセルを踏み込んでも燃費がよくなる。
が、しかし、その代償としてあるのは、エンジンから発生する振動からくるぼぼぼ……という“こもり音”である。レスポンスの私の試乗記を読んだ方の中には、私が何度か「こもり音がする!気分悪い!」とふてくされた原稿を書いていたのをご存知かと思うが、そう、そのくらい、こもり音が出る傾向にあった(最近は、少し収まってきたけれど)。
街乗りドライバーが一番走る速度である50km/h前後で、こんな不愉快な思いをさせてまで燃費をよくするってありなのか?と思うけれど、どうも開発者は血反吐を吐くくらい(くどい)がんばっていて、ドライバーが聞くこもり音は目を、いや、耳をとじてくれと願いながら作りこんでいるようだ。
私は許さないけれどね。
と、こんな状況になりながらも開発者はユーザーの期待に応えるべく、燃費を上げようとしているというのに、ユーザーがタイヤの空気圧が減っている状態で走ったら、開発者、泣いちゃうと思うのよ。空気圧が減ったら燃費は確実に悪くなる。そして、乗り心地もぐだぐだになるんだもの。
◆ガソリンスタンドに行く機会が減っているなら
ただ、ユーザーは、燃費がよくなったのでガソリンスタンドに寄る回数が減っている。さらに、セルフスタンドが増えて、お兄ちゃんに会うことが減っている。つまり、危機的状況に反して、タイヤの空気圧を確認する機会が激減しているのだ。
ここで、国交省には、安全基準の見直しを求めたい。それは、タイヤ空気圧監視装置の義務化だ。空気圧が減ったら、インパネに警告灯を出すアレである。っていうかさ、自動車メーカーも燃費燃費って、血反吐吐きながら(くどい)こもり音を出すようなクルマを作るくらいなら、「ユーザーのみなさん、空気圧をきちんと適正にして使ってくださーい」ってもっと呼び掛けて、軽自動車含め、自発的に警告灯つければいいのに。
これから燃費だけでなく、被害軽減ブレーキだのなんだのかんだのって、自動運転技術をとりつけたって、タイヤがちゃんと機能してくれなかったら性能なんてちゃんと発揮されない。
そして、読者の方々も、空気圧はもちろんだけど、タイヤの溝が減っていると雨の日、濡れた路面での制動距離は伸びます。追突の危険高まります。被害軽減ブレーキでも止まりきれなくなりがちです。残り溝のチェックと、十分な車間距離でお気をつけて。
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。
《岩貞るみこ》
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