初代 アウディ TT いかにもハイテック、されど、情緒も【懐かしのカーカタログ】
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◆ショーモデルそのままに登場した初代TT
最初に『TT』が姿を現したのは1995年9月のIAA(フランクフルト・モーターショー)だった。実はまだこの時点ではショーモデル、だが市販車さながらの体裁のカタログが用意され、写真の1、2枚目はその中の2見開き分の外観を紹介したページのもの。
外観上、リヤクォーターウインドの有無が市販型との大きな違いだったが、あとはドアミラーのハウジング形状などディテールに僅かな差がある程度で、ルーフのシルエットはもちろん、全体のフォルムなど、ほとんど市販型同然だったことがわかる。
ショーモデルのカタログにはボディサイズの記載もあったが、これも当時の『A3』がベースが前提だったため、市販型との差異はごく僅か。始めから周到に練られたスタイリングで、その狙いがほとんど誤差なく市販車で再現されていたことがわかる。
アルミパーツを多様したインテリアも『TT』ならではの世界観が繰り広げられいたが、ここのショーモデルと市販型の違いはごく僅か。パーツレベルで、空調ダイヤルが回転式(ショーモデル)かクリック式(市販型)か、とか、ドアトリムの形状に違いが見られる……そんな程度だ。
筆者はショーモデルの室内に乗り込んだ経験はないが、市販型の、ドライバーズシートに着座すると頭上の丸いルーフが不思議と圧迫感のない、しかし『TT』ならではの包まれ感のある室内空間は、外観デザイン同様にショーモデル=市販型だったはずだ。ステアリングホイールは、カタログ写真を見る限り、ショーモデルは“偏心”タイプで、市販型はセンターパッドのデザインに共通性を持たせながらオーソドックスなタイプが与えられた。
◆「ロードスター」のお披露目は東京モーターショーだった
ところで1995年には、初代『TT』ではクーペのショーモデルだけでなくロードスターも登場した。何と、クーペが登場した翌月の東京モーターショーがお披露目の場だったのである。
クーペがシルバーでクールなイメージだったのに対し、このロードスターはグレーのボディ色を纏い、“モカシン”と呼ぶ、野球のグローブをモチーフにした革のステッチがあしらわれたシートを採用。2座席の後方にはパイプ状のロールケージを装着したスタイリング。クーペのストイックなムードとはまたひと味違う、スポーツカーでありながら情緒も持ち合わせたクルマだった。クーペとロードスターが同時に掲載されたカタログは2000年5月のもの。
ちなみに本稿のタイトル写真に写っているパンチングの表紙は、初代が日本デビューを果たした際に配布されたプレスキット。いかにもハイテックな『TT』らしいあしらいだった。
そして『TT』といえば外せないのが“バウハウス”。“形態は機能に従う”の哲学で知られるバウハウスと『TT』は、直接の関係はないそうだが、同じドイツの機能に根ざしたシンプルなデザインということでいえば、決して遠い存在ではないはずだ。そこでタイトル写真には、バウハウス由来のデザイナーが手がけたプロダクトとして、私物のLAMYのペン(2000)と、ブラウンの時計と計算機を写り込ませてみた。
【懐かしのカーカタログ】ショーモデルそのままに登場した初代 アウディ TT
《島崎七生人》
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