新型コロナで逼迫する救急病院…交通事故で「コード・ブルー」するとどうなる?【岩貞るみこの人道車医】
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新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大により、ついに東京都などに緊急事態宣言が出された。欧州や武漢のように、都市を封鎖するわけでも罰則があるわけでもないので、効果はないという声も聞こえるけれど、そんなことを言っている場合ではない。出されるほどの状況だということを、一人ひとりがしっかりと受け止め対応しなければならない。
そもそも、頭を下げて外出自粛要請を出して、密閉密集密接なところには行かないでほしいと言ったのに、じゃかすか行っちゃう人がいるから(しかも医療従事者まで!)緊急事態宣言を出さざるを得ない状況になっているわけで、政府や厚労省、病院関係者にしてみれば「おまえらがちゃんと言うこときいていれば、こんなことにはならないんだよ!」と、叫びたいところだろう(たぶん)。
私たちがやるべきことは、
1)感染しないこと(自殺行為をしない)
2)感染させないこと(殺人行為をしない)
この2点である。そのためになにをするべきかは、今更なので省略する。
さらに、クルマに携わる私たちとしては、
3)交通事故を起こさない
これが求められる。そう、いつも以上に。なんたって病院はいま、危機的状況なのだ。事故って怪我したりさせたりしている場合ではないのである。
◆救急医は疲弊してぎりぎり、受け入れ「不可」も
たしかに新型コロナの場合は、感染症関係の医師が中心になる。でも、肺炎の有無を突き止めるためにCT検査をする。一方、交通事故の患者は多発外傷と呼ばれ、体の中のどこがどう傷ついているかわからないので、やはりCT検査をするのだ。
病院の規模や専門にもよるけれど、高額なCT検査機をいくつも持っている病院は少ない。つまり、新型コロナの患者の検査をしたあとは、CT検査室を閉鎖して消毒、除菌をしなければならず、交通事故の患者の内臓出血や脳損傷、体のあちこちの骨折を把握するのに、時間がかかりかねないのである。
そんな時間的猶予がある交通外傷患者ならいいけれど、そうでないときは、どうなるのだ?
また、新型コロナの患者であっても、重症化すれば急性期に対応できる救急の医師たちが対応することになる。医師には、認定医制度があって、救急、内科、外科、小児科など、専門がある。正直なところ、同じ病院に勤務していても眼科の医師などは目の前の患者がいきなり心疾患などで倒れたら対応できない。できるかもしれないけれど慣れていない。
そのときは、院内放送で「コード・ブルー」をかけて(すいませんね、山ピーやガッキーの話だと期待して読み進んだ方。彼らは出てきません!)、救急医などの超急性期に対応できる医師が駆けつけるのである。
ただでさえ、患者のたらいまわしと言われる救急病院である。でもそれは受け入れ拒否ではなく、受け入れ不可なのだ。手がたりない。すでに重症の患者がひとり処置中であれば、二人目、三人目は、ほかの病院で受け入れてもらわなければ救えない可能性が高まるのだ。
そこへ新型コロナ対応である。救急医はすでに疲弊してぎりぎりなのだ。そんな状態なのに、交通事故の患者をさらに増やしてどうする?
あちこちの病院では院内感染が起こり、救急車の受け入れを停止している病院もあると聞く。となると、受け入れている病院への負荷は、さらに高まるばかりだ。
◆今は、それぞれが、できることを
死者数がすごい勢いで増えているイタリアでは、グッチやプラダ、アルマーニがマスクを作り、ランボルギーニもマスクやフェイスシールドを作り、フェラーリも、人工呼吸器のパーツを作り始めた。ドイツでも、フォルクスワーゲンがフェイスシールドを作るというニュースが入ってきている。日本でも、シャープがマスクの生産を開始している。この原稿を執筆中に、トヨタもフェイスシールドを作るという情報が入ってきた。
だったら、日本のほかの会社も、フェイスシールドやマスク、人工呼吸器を作れとなるかもしれないけれど、私は言わない。特に高度な医療器具は、安全性の基準が厳しくおいそれと参入できるものではないからだ(ランボやフェラーリは、大学と組んだり医療メーカーのアシストをする形をとっている)。
今は、それぞれが、できることをやればいい。そして、私たちドライバーができることは、間違いなく、交通事故を起こさないことだ。小学校が休校中で、平日の昼間でも、子どもたちが走りまわっている。みなさん、くれぐれも安全運転を。
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。
《岩貞るみこ》
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