幼き日、クルマ好きの入り口は「トミカ」だった … 50年の歴史を振り返る
ガレージライフ
ホビー
◆高品質で豊富なラインアップ
記念すべき第1弾は、ブルーバードSSSクーペ、コロナ・マークIIハードトップ、クラウン・スーパーデラックス、クラウン・パトロールカー、トヨタ2000GT、そしてフェアレディZ432の6車種だ。縮尺スケールは60分の1程度で、クルマによってスケールに違いがある。ちなみにパッケージの横幅は最初から変わっていない。誕生から50年後の2020年でも78mmだ。これは子どもの手のひらに乗せやすいように、との配慮からである。ちなみにデビュー時は定価180円だった。が、オイルショック直後の74年に220円に値上げしている。
トミカの特徴のひとつは、高品質なことだ。重量感や金属の雰囲気を感じてもらえるようにダイキャスト製とし、ボディの塗装も実車と同じように静電塗装を施した。走行できるのも売りのひとつだ。手で転がすだけで軽やかに走る。板バネのサスペンションを採用しているのは、しなやかに動くようにするためだ。車種によってはドアやボンネットが開閉できる。
豊富なラインアップもトミカの魅力のひとつだ。常に定番モデルとして140種を用意し、現在は毎月第3土曜日に2車種ずつ発売しながら車種の入れ替えを行っている。最初は乗用車やスポーツモデルでシリーズを構成していたが、田中角栄首相の「日本列島改造論」によって建設ブームとなり、建機や建設車両が人気となった。そこで72年ごろから建設車両や救急車、トラックなどのシリーズも登場する。さらにはオートバイや船なども加わった。
◆外国車シリーズの「青箱」が火をつけた
70年台半ばには、外国車好きの人たちの意を汲んで「外国車シリーズ」を立ち上げている。このころにはトミカの輸出も始まっていたから、外国車の品揃えが望まれたのだ。国産車シリーズは「黒箱」と呼ばれたが、外国車シリーズは青いパッケージだったところから「青箱」のニックネームで呼ばれた。意外にも最初の作品は、76年に発売したアメリカのウィネバゴ・モーターホームである。当時の輸出先はアメリカが多かったためか、これ以降もしばらくはキャデラック・フリードウッドやリンカーン・コンチネンタルなど、アメ車が続いた。
が、77年以降はメルセデス・ベンツやフォルクスワーゲン・ビートル、シトロエンSMなど、ヨーロッパ車が一気に増えている。外国車シリーズを一挙に人気商品に押し上げたのがフェラーリやランボルギーニ、マセラティなどのスーパーカーだ。それまでのトミカとは違うオーラを放ち、一気に盛り上がっている。
また、この時期には何台かをセットにしたギフトセットも発売した。セットにするときは、定番商品と違うボディカラーにしたり、標識や信号機などのおまけを一緒につけることも多い。カーキャリアに何種類かのトミカを積んだギフトセットもある。これ以降はパーキングやガソリンスタンド、販売ディーラーなどのジオラマキットも登場し、トミカタウンを作る楽しみに期待を膨らませるようになった。
クルマがモデルチェンジすると、それに合わせてトミカも新型に切り替わっている。が、絶版になっても人気の高いスポーツモデルはリバイバル商品として復活することも珍しくない。そのときはボディカラーを変えたり、デカールを追加したりして新鮮な感覚で楽しめるようにアレンジした。
これを発展させ、ターゲットを大人に絞ったのが「トミカリミテッドヴィンテージ」だ。トミカが誕生した70年代やそれ以前の国産車を積極的に製品化している。企画と開発を行っているのはトミーグループのトミーテックだ。マニアも唸るほど精巧な仕上がりで、評判はすこぶるいい。
◆子どもからマニアまで、広がるトミカの世界
最近は定番商品に加え、人気のキャラクターやコンテンツとコラボした「ドリームトミカ」シリーズや精密設計の「トミカプレミアム」シリーズなど、さまざまなシリーズ展開を行うようになった。また、販促イベントの「トミカ博」を全国の数か所で行い、このときにイベントの特別記念車の販売もおこなっている。モーターショーやオートサロンなどのイベントで発売する特別仕様車も増えてきた。
これらのほか、全国に4か所あるトミカ専門店の「トミカショップ」でも特別仕様車を買うことができるなど、より多くの人にトミカと接することができるように努めている。今では子どもだけでなく大人のミニカーマニアも数多い。
発売から50年の間に「TOMICA」は1000台を軽く超える魅力的な車種を送り出し、累計の生産台数は6億7000万台に達している。これから先も小さな王者、トミカはクルマ好きに夢と希望を与えてくれるだろう。トミカワールドの次の展開をワクワクして待ちたい。
取材協力:ミニカーショップ ケンボックス
子どもからマニアまで、広がるトミカの世界…トミカ50年の歴史を振り返る
《片岡英明》
この記事の写真
/