ついにEV時代の幕開け? 高速道SAPAの充電設備「爆増計画」はあるのか【岩貞るみこの人道車医】 | CAR CARE PLUS

ついにEV時代の幕開け? 高速道SAPAの充電設備「爆増計画」はあるのか【岩貞るみこの人道車医】

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東名高速道路・海老名SAの下りに期間限定でオープンしているEV専用の「グリーンラウンジ」
東名高速道路・海老名SAの下りに期間限定でオープンしているEV専用の「グリーンラウンジ」 全 4 枚 拡大写真

2021年12月、トヨタ自動車から衝撃的ともいえる電気自動車(以下、EV)の世界戦略が発表された。日本ではさまざまなフェーズで電力供給の問題がクリアになっていないものの、トヨタがインフラ整備に対するプレッシャーをかけはじめたわけだ。

市中であれば、ディーラーや観光地、道の駅、旅館やホテルなどに充電設備を作ることができる。では、高速道路は? ただでさえ、EVは一回の充電での走行可能距離が短い。SAPAで充電ができなければ、長距離移動は不可能だ。しかも、一回の充電には時間がかかるため、数をこなすには充電設備の増設が必須なのだ。高速道路はどうするのだろう。

海老名SAにEV用ラウンジオープンのニュース

そんなおり、2022年2月、日産自動車とNEXCO中日本グループのSAPAを担当する中日本エクシスから、日本トップクラスの利用者数を誇る東名高速道路・海老名SAの下りに、EV用ラウンジを設置するというニュースが入ってきた。EVラウンジ=充電中にくつろげる専用の場所。きたきた。ついに、高速道路もEV時代の幕開けか!

色めきたったものの、よくよく話を聞いてみるとこれはあくまでも一か月間の期間限定(2022年2月17日~3月16日)。そして、充電中の待機スペースというわけではなく、あくまでも「EVに乗っていてよかったを実感していただくためのサービス」とのこと。なので日産車だけでなく、どこのEVユーザーでも利用可能とのことだった。

なんだ、そうなのか。一か月限定なのか。ただ、これをきっかけに今後、SAPAに本格的に充電時待機ラウンジが作られるのではないか? そして、EV増加に備え、すでに充電設備の爆増計画がたてられているのではないだろうか? 期待はふくらむ。

NEXCOは、東・中・西と三社ある。そのうち今回話題となった海老名SAを持ち、かつ、トヨタや日産の拠点をつなぐ東名高速道路と新東名高速道路を管理するNEXCO中日本が一番、動きが早いに違いない。なので、直接、聞いてみた。教えてくださーい!

EV充電器の稼働状況と増設への道のり

まず、2022年3月10日時点の急速充電器の設置状況は、105か所115基。EXPASA海老名(これが海老名SAの正式名称)上りと下りが一番多い3基ずつで、あとは利用者の多い足柄SA、岡崎SA、そして中央自動車道の談合坂SAに2基ずつ。そのほか選ばれたSA等に1基ずつ設置してあるという。

気になる稼働状況は、コロナで県境を越える移動の制限が発生しているためコロナ前の数字を教えてもらった。一番多いのはやはりEXPASA海老名で、月平均約480回。稼働状況は交通量に左右されるため、交通量の少ない地域では利用回数も少なくなる。しかし、充電設備はEVユーザーの生命線なので、設置は必要なのである。2021年度も、東名高速道路の美合PA(下)、中央自動車道の釈迦堂PA(上下)に新たに設置されている。

EVが増えれば、充電設備のさらなる増設が必要となってくる。特に東京に近いEXPASA海老名は、一気に利用者が増える可能性が高い。増設の判断は、利用状況、充電待ち発生状況、設置されているSAPAの間隔……などを総合的に見て判断することになるという。

EVと充電設備は鶏と卵の関係という考え方でいくと、どんどん設置してほしいという声もあるが、あらかじめ増やしまくっても使われないまま古くなり更新という事態になりかねないので慎重なデータ分析が必要になる。この判断はNEXCO中日本だけではなく、共同事業者である(株)e-Mobility Power、ジャパンチャージネットワーク(株)と決めるそうだ。NEXCO中日本の主な役割は、高速道路上に設置する際に必要な手続き、充電駐車マスや案内標識の設置などの協力ということになる。

つまり、NEXCO中日本は場所の確保をしなければならないのだが、人気のSAPAは土日や盆暮れ正月を中心に駐車マスの不足が発生しており、充電設備の増設は厳しい状況になってきているという。

EV充電時専用ラウンジや充電設備の爆増計画は…

では、EV充電中の専用ラウンジ開設はどうなのだろう。この点、SAPA担当の中日本エクシスに聞いてみると、

「現時点で予定はありません」

SAPAには、休憩施設があるので、そちらをぜひ利用してほしいとのこと。もっとも、夜中に施設が閉まれば待つところはないのだが、夜中はSAPA利用者全員が休憩する場所がないので、EV充電時も車両内などで過ごしてもらうことになるだろう。

結論。現時点で、高速道路のEV充電時専用ラウンジや充電設備の爆増計画はなかった。やはり、EVとEV充電設備は、左右の足を一歩ずつ前に出すように進むしかないようだ。しかし、EVですらこの状況。今後、燃料電池車を普及させようとしたらどうなるのだろう。水素ステーションは、さらに課題がいっぱいなのである。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。

《岩貞るみこ》

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