京セラは、夜間、雨、霧など視界が悪い状況下での安全運転を支援する「車載ナイトビジョンシステム」を開発。2022年10月11日、報道向けに説明会を開催した。
今回開発された「車載ナイトビジョンシステムは」いくつかの新システムから成り立っており、そのひとつがKYOCERA SLD Laser, Inc.が独自開発した白色光と近赤外光の光軸を一致&一体化させたレーザーヘッドライト「White-IR照明」だ。
2種のライトが同軸になっていることで光の当たり方に差が出ないため、より精度の高いデータ・画像をセンサーに届けることができる。
ヘッドライト内の白色光をロービーム、近赤外光をハイビームにするなど状況に応じて配光を変化させることができ、眩しさを抑えながらセンシングを行うことも可能だ。
また、一体型にすることでヘッドライトの省スペース化やそれに伴う車のデザインの自由度にも繋がっている。
このヘッドライトで照射したものを、車両に搭載したRGB-IRセンサー(可視光と近赤外光センサー)で画像収集し、京セラが独自開発したフュージョン認識AI技術により可視光の画像と近赤外光画像を融合。両者のいいとこどりを行った結果を表示することで、高精度な物体検出を可能としている。
説明会では実際にシステムを体感することもできたが、下記画像の左側が可視光センサーで映したデータで、右側が今回のシステムで可視光と近赤外光をあわせて表示させたデータとなる。
昼間など明るいところでは可視光画像だけで十分状況認識ができるが、夜間のような暗いところではヘッドライトが当たっている部分しか認識していない。しかし、近赤外光のデータもあわせることで、ライトの当たっていない部分も表示・認識することができた。
従来の画像認識結果はAIによる自動学習データが何百万枚というレベルで必要となるため、時間とコストがかかっていたが、この分野でも京セラの新システムが利用されている。
京セラは、可視光の学習用画像から近赤外光の学習用画像を自動生成するAI技術を確立。本来可視光画像と近赤外光画像の認識結果を学習するにはそれぞれの画像を用意する必要があったが、実質半分近くの量で済むようになるというものだ。これにより学習コストの削減と、高精度な画像認識の両立が可能となっている。
京セラ自動走行システムラボ第1ADシステム研究課の大島健夫氏によると、この「車載ナイトビジョンシステム」は2027年以降に事業化することを目指して現在研究開発が進められている。
また、車載システムだけでなく路側機などと連携した交通インフラの見守りシステムや、夜間の警備、配送における小型低速モビリティに組み込むなど、交通社会全般への応用も視野に入れているそうだ。