ランクセス、リチウム抽出や中国への電解質配合製品供給プロジェクトを進行…EV関連事業を強化 | CAR CARE PLUS

ランクセス、リチウム抽出や中国への電解質配合製品供給プロジェクトを進行…EV関連事業を強化

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効率的な事業戦略について語る、ランクセス日本法人のジャック・ぺレズ社長
効率的な事業戦略について語る、ランクセス日本法人のジャック・ぺレズ社長 全 7 枚 拡大写真

ドイツの特殊化学品メーカーであるランクセスの日本法人は11月29日、2022年度の事業活動に関するメディア向け説明会を開いた。非常に幅広い製品ポートフォリオを持つ同社だが、自動車に不可欠な半導体やリチウムイオンバッテリー関連の事業について聞いた。

2022年1月から9月までの同社のグローバルにおける売上は、前年同期比38%増の約61億ユーロにのぼった。エネルギーや原材料コストの上昇にもかかわらず、税引き前利益(EBITDA)も同17%増の7億5000万ユーロを越えた。同社では事業の売却や買収を通して製品ポートフォリオの最適化を行い、戦略的な経営効率化が進められている。自動車産業向けには、電動化を視野に入れたビジネスにも注目しているようだ。

◆車に幅広く採用される樹脂部品

ドイツのバイエル社から2004年に分離・独立したランクセスは、プラスチックや添加剤、工業用の中間体や特殊化学品などの開発・製造・販売を行う。自動車産業とも結びつきが深く、高性能プラスチック素材は車のエンジンやギヤボックス用オイルパン、ドアハンドルなどに幅広く採用されている。また、金属とプラスチックによるハイブリッド技術はルーフフレームやフロントエンド構造などに、ガラス繊維強化プラスチックはスペアタイヤ収納部などにも使用される。

世界的に進むモビリティの電動化に伴い、航続距離にも影響を与える車両の軽量化が一層求められている。2019年からは中国の新工場で自動車向け高性能プラスチックの生産を強化するなど、売上高のおよそ20%(2022年1-9月実績)を占めるアジア・パシフィック地域でも積極的に事業を展開している。

◆eモビリティに関わる “戦略的プロジェクト”

ランクセスは、eモビリティに不可欠なバッテリー製造に求められる技術も有する。日本法人のジャック・ぺレズ代表取締役社長からは、アメリカで進行中の“リチウム抽出プロジェクト”が紹介された。カリフォルニア州エルドラド郡にある同社の試験プラントが2020年12月から稼働しており、米国企業と共同で塩水からリチウムを取り出す試みが実施された。

すでにバッテリーに使用できる高純度のリチウム抽出に成功しており、現在、事業化に向けたフィージビリティスタディ(実現可能性調査)が行われているという。採算性などに関する調査・分析は2023年上半期には終了する見込みで、その後、最終的な投資判断が下される予定だ。

中国の大手リチウムイオン電池材料メーカーに、電解質配合製品(フォーミュレーション)を供給する話し合いも進められている。電解質はリチウムイオンの活性に重要な役割を果たしており、バッテリーの鍵となるコンポーネントの1つだ。交渉がまとまれば、ドイツの国内工場で製造した電解質フォーミュレーションが中国に輸出される。

◆イオン交換樹脂による持続可能性

ランクセスはイオン交換樹脂に関しても高い技術をもつ。高性能なイオン交換樹脂を活用すれば、工業排水などから金属イオンを回収することが可能だという。抽出したリチウムやニッケルなどは、バッテリーの材料として再利用できる。イオン交換樹脂は燃料電池車(FCV)にも使われており、eモビリティにおいて同社の果たす役割は大きそうだ。

ぺレズ社長は同社の取り組みについて、「モビリティの電動化は、グローバルな規模で指数関数的に増えると考えています。当社の成長戦略にとって、eモビリティは最も重要な分野の1つと捉えています」と述べている。アメリカにおけるリチウムの抽出や中国企業への電解質提供などの“戦略的プロジェクト”も、そうした施策の一環だと話す。

◆半導体製造にも不可欠な技術

半導体製造の最終工程では、不純物を完全に除去する洗浄が行われる。使用される“超純水”を作るために不可欠なのが、やはり、高性能なイオン交換樹脂だという。

液体高純化テクノロジービジネスユニットの村上直弘 日本統括マネージャーは、「超純水の場合、東京ドームに角砂糖1つ(分の不純物)が許容範囲だと例えられます」と説明する。半導体技術は日進月歩で進歩しており、それに合わせてこうした要求値も高まっているという。現在、半導体洗浄用の超純水をつくる能力があるのは、ランクセスを含め世界で3社のみだそうだ。

「すそ野が広い」と表現される自動車産業だが、電動化を含め次世代のモビリティには高度な専門技術を有するサプライヤーの果たす役割がますます高まることが考えられる。

《石川徹》

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