自動車部の学生たちが作った「日本一のGR86」と、大阪オートメッセ出展の理由 | CAR CARE PLUS

自動車部の学生たちが作った「日本一のGR86」と、大阪オートメッセ出展の理由

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近畿大学体育会自動車部「KINDAI BIG BLUE RACING」の木暮陵弥さんとGR86
近畿大学体育会自動車部「KINDAI BIG BLUE RACING」の木暮陵弥さんとGR86 全 31 枚 拡大写真

学生たちによる手作りのカスタムカーは、個性的なインパクトを放ちショーの目玉となりつつある。その多くは自動車メーカーのエンジニアや整備士を目指す、いわゆる自動車大学校による出展が殆どだが、10日に開幕した「大阪オートメッセ2023」では、一般大学の自動車部の学生による『GR86』のカスタムカーが展示されていた。競技で使う車両ということだが、なぜ自動車部がオートメッセに出展したのか。そこには一人の学生の、自動車部への熱い思いと「日本一への夢」があった。

◆GR86に込められた3つの「日本一」

カスタムされたGR86を出展したのは、東大阪にキャンパスがある近畿大学の体育会自動車部「KINDAI BIG BLUE RACING」。“仕掛け人”となったのは、同自動車部でドライバーを務める3回生の木暮陵弥さん。出展のきっかけは協賛企業からの「何か面白いことをやろうよ」という一声だったという。木暮さんは「自動車大学校さんもクルマを出しているし、同じように出してみようと。(出展に)いくらかかるかも知らずにいましたが。でもこうして『大阪オートメッセに出ます!日本一のクルマを作ります!』と言えることで、いろんな企業さんに声を掛けやすくなりまして、おかげでこれだけ多くのスポンサーをいただけました」と話す。

車体を仕上げるのに開催前日ギリギリまで掛かったというGR86。多くの自動車部が中古のスイフトスポーツや古いインテグラ、シビックなどを競技車両としている中、新型のGR86を選んだのは「日本一になるため」。ただ新車価格は学生たちにとっては高く、「学校からもらった予算だけじゃどうしようもできないので、じゃあ協賛をもらおうってなって。いろんな企業さんに声を掛けに行ったんです。それまでウチは全く協賛が付いていなかったんですが、すべて一から関係づくりをしていきました」。GR86を選び、「これで日本一になる」という執念から、クルマを完成させ、オートメッセでの出展まで漕ぎ着けた。

「戦闘力も上がると思いますが、何より部員のモチベーション向上になるんです。僕たちの自動車部は今41人が居て、日本一の部員数なんです。今後4回生の人たちが抜けて部員も減るけど、これだけ魅力的なクルマがあれば部員も集まりやすくなると思います。後々下の代に引き継いで行くためにも、これを入れてよかったかなと思ってます」(木暮さん)

クルマづくりのポイントは、「誰が乗ってもタイムが出せるクルマ」だという。学生ジムカーナでは3人のドライバーが交代してトータルのタイムを競うため、特定のドライバーのために仕上げたクルマでは意味がないという。最たるものがシートで、「ドライバーは僕のほかに女子が2人いるので、彼女たちがタイムを出せるシートにしなければいけない。だからシートは固定せずに、あえてシートレールは市販用のものにして調整できるように。ブレーキやほかの部品も、そういう考えでチョイスしています。だから正直、一発のタイムは出るかわからないですけど、全員が(良い)タイムを出したら勝てる。団体戦ですからね。そういうクルマづくりを心がけています」。

昨年は最終戦で、競技車両として使っていたシビックのトランスミッションがブローしてしまい、悔いが残る結果となった。だからこそGR86の走りには期待している。「部員数は日本一、スポンサーの数もおそらく日本一でしょう。あとは競技で日本一になるだけです」と小暮さんは来年度に向けて意気込む。

「僕が部活に入った時は15名の小さなチームでした。以前の世代には3人だけという時もあったようです。だけど僕が積極的に声をかけて今では倍以上に。実は今年の主将も僕が誘ったんです。協賛企業も含めて、新しく一から関係を作っていきました。まだちゃんと機能はできていないかもしれないけど、下の世代にもちゃんと繋いでいきたい。こうしてオートメッセに出展することで、自動車部に興味を持ってくれる人をどんどん増やしていきたいですし、ぜひ他の大学さんも真似してもらって、一丸となって活動を広げていけたら」(小暮さん)

クルマを愛する若者の輪が大きく、そして長く続くことを願う。

《宮崎壮人》

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