クルマ関連のさまざまな新技術、新素材が展示されたオートサービスショー2023(東京ビッグサイト/6月15~17日開催)。中でも時代のニーズに合わせた水性塗料の進化は著しい。そこでオール水性を実現した関西ペイントのブースを取材してきた。
近年、環境問題から急速に開発が進んでいる水性塗料。数多くの水性塗料が世に出てきている近年、DIYでクルマの塗装を行うユーザーにも溶剤系の塗料に比べてイメージ的にハードルが低い水性塗料を用いた塗装がもてはやされている。水性であることによる扱いやすさも一般ユーザーにはありがたいポイントになっているのだろう。
そもそも水性塗料が登場したのには従来の溶剤塗料(油性塗料)に含まれる対象物質に対する法規制が要因になっている。近年は塗料業界あげて水性塗料へのシフトが急ピッチで進められているのだ。クルマに用いられる塗料も当然同じ方向性であり、今回取材した関西ペイントでも水性塗料をアピールするブース展示が展開された。
ブースで全面的にアピールを実施したのは同社の水性塗料である「レタンWBエコ EV システム3.0」。同モデルはベースコートからプラサフ、プライマー、さらにはクリヤーまでを水性で用意。下地から上塗りまでをすべて水性塗料にする“オール水性”のラインアップを揃えたのも魅力のひとつ。塗装の最初から最後までを水性塗料でこなすことができるのは大きなメリットとなる。さらにクリヤーには従来のつやありに加えて、つや消し仕様も新登場。これまでは水性塗料ではあまり見かけなかったつや消しクリアー処理もこれで自由に施工できるようになったのも大きな魅力だろう。
しかし、少し前の水性塗料は従来の溶剤塗料に及ばない部分も多かった。それらをひとつひとつ改善して溶剤塗料と同等、またはそれ以上の性能を備えはじめているのが現在の水性塗料だ。例えば関西ペイントの水性塗料は、これまでは難しいとされていたメタリック系の塗装も美しくこなすことができるようになったのもひとつだ。また塗装のムラが出にくくしたのも同社の水性塗料の進化のポイントになっている。使いやすさや塗料のクオリティなどを急速に進化させている水性塗料は年々レベルアップを続けているのだ。
さらに、作業性を考える中で重要視されているのが乾燥時間。溶剤塗料はスピーディな乾燥が可能なのも特徴だった。対して水性塗料はこの点では少し弱点があったのは事実だろう。そこでも関西ペイントの最新モデルでは乾燥時間を従来の1時間程度から20分程度にまで短縮することに成功している。作業性を考える上でもかなり画期的な進化となった乾燥時間の短縮、水性塗料の使いやすさがまた一歩レベルアップしたと言えるだろう。
ところで、乾燥時間の短縮はなぜ可能になったのだろう? いくつかの要因があるのだが、そのひとつが樹脂の開発だった。塗料には顔料、樹脂、添加剤、水などが含まれているのだが、その中でも塗料の性質を決める樹脂は重要な役割を担っている。これを関西ペイントでは自社で開発する専門の部署を持っているのが強みとなった。乾燥時間を短縮するために樹脂を新たに開発し、最新の製品に反映させることで大幅な乾燥時間の性能向上を果たしたのだ。
DIYで部分的または全体の塗装をするユーザーも増えている昨今、そんな場合に用いられることが多くなった水性塗料。プロの世界でも環境問題で水性塗料へのシフトが起こっている昨今、安全で使いやすい塗料として水性塗料の開発が進んでいることが良くわかるブース展示となった。これからは水性塗料の使い勝手や性能を追求していく時代に突入することが感じられる取材となった。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。