せっかくドライブに出かけたのに愛車のトラブルで台無し……。そんな経験はしたくないものだ。中でもトラブルの可能性が高いのがバッテリー。そこで夏のドライブ前にメンテナンスを実施しよう。
現代のクルマは乗りっぱなしでもトラブルを起こすことは少なくなっている。定期的なオイル交換や消耗品を点検・交換しておくだけでも致命的なトラブルは避けられるケースも多い。しかし例外はある。ひとつが“バッテリー”のトラブルだ。
それを裏付けているのがJAFによる救援出動回数の多さ。2022年度の全出動回数の実に4割を超える理由が“バッテリー上がり”だった(ちなみに2位はタイヤのパンク・バースト・エアー圧不足、3位は落輪・落込)。この年だけではな、バッテリー上がりによる出動は常に上位を占めていることから、ドライバーの大敵であるのがわかる。しかし、逆から見ればバッテリーをしっかりメンテナンスしておけば4割のトラブルは未然に防げると言うこと。これは要注目のメンテナンスポイントと考えられるのだ。
バッテリーのトラブルがやっかいなのは、ほとんどの場合に前兆がないことだ。家から出発する際には元気にエンジン始動できたのに、レジャー先から帰る段階になってバッテリーが上がってセルモーターが回らないなんてこともある。その原因のひとつになっているのは近年のバッテリー性能の向上だ。“性能が向上したのになぜトラブルが?”と疑問に感じる読者も多いだろう。
そのメカニズムを簡単に解説してみよう。かつてのバッテリーは使うほどに徐々に性能が劣化していき、最後に寿命を迎えるというライフサイクルのモデルが多かった。しかし近年のバッテリー(カルシウムバッテリーなどがその例)は寿命を延ばす技術が進化し、長く性能をキープできる設計になっている。つまり寿命ギリギリまでフルスペックに近い性能を発揮して、最後は急激に寿命を迎えるのだ。かつてのバッテリーに比べて元気に使える期間が伸びたのだが、その結果、交換時期がわかり難くなったのは事実だ。これがバッテリーの突然死などと呼ばれる要因になっている。
そこで、バッテリーの劣化をあらかじめ知って早めの交換を実施するのが安全だ。テスターを持っているならばバッテリーの電圧を測る方法がもっとも基本的なチェック法だ。車載バッテリーは12.5~13V程度の電圧をキープしているのが一般的。しかし劣化すると12.5Vを下回ってしまうこともある。こうなるとバッテリーの充電不足またはバッテリー自体の劣化が疑われる。しかし、ここで注意したいのは先にも紹介した通り近年のバッテリーの多くは寿命のギリギリまで電圧低下しないことが多い。そのためテスターで測定しても明らかな劣化が見られるケースは多くないと考えると良いだろう。
ではバッテリーのチェックはどうすれば良いのだろう? わかりやすく劣化を知りたいならば、カー用品店などのピットサービスに用意されているバッテリーチェッカーを利用することだ。バッテリーチェッカーを使えばCCA(コールド・クランキング・アンペア)値と呼ばれるデータを計測できるので、バッテリーの劣化が早めに知ることができるのだ。CCA値が標準値よりも低下している場合には、バッテリーの交換を検討するのが良いだろう。一方、CCA値は正常だが電圧低下が見られる場合には、補充電で対応する選択肢も残されているだろう。そんなバッテリーの状態の切り分けをするのにもバッテリーチェッカーを使ったテストは役に立つのだ。
夏場は気温の高さはエンジンをはじめクルマの各所に負担を掛ける。バッテリーも熱に弱い面を持っている(温度が高いとバッテリーの化学反応が活発になり自己放電や劣化が進みやすくなる傾向にあると言われている)。また夏場のドライブはエアコンや各種電装品をフルで使うなどバッテリーを酷使するケースも多いのだ。せっかくのサマードライブを台無しにしないためにも、お出かけ前にバッテリーをチェックして、万全の状態にメンテナンスまたは新品交換しした上で快適&安心のドライブに出かけよう。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。