タイヤの価格が高くなっている昨今。とくにカスタマイズされた大径の太い幅のタイヤはとても高価なもの。できるだけ美味しい状態で長く使いたいと思うのは当然。ならば、どうすればタイヤを美味しく使えるのか。
◆「慣らし」とはよく聞くものの
タイヤに慣らしは必要なのか。これは諸説あるが、イエスでもありノーでもある。タイヤに書いてある注意書きやタイヤ交換専門店などでは100kmくらいは急の付く操作をせず、急加速、急制動、急ハンドルをしないで使うように指示されていたりする。
それは当然のこと。タイヤを長く美味しく使うには、慣らし期間だけでなくずっと急の付く操作はしないほうが良い。
タイヤを新品にした時はどうしたらいいのだろうか。まずはタイヤを新品にしたらゆっくりと走り出そう。タイヤの表面にワックス分が付いているものがあったり、タイヤを製造するときのヒゲがたくさんついているものもある。そういったものが50~100kmほど走っていれば徐々に取れてくるのでそれからが本来の性能となる。
その状態での乗り心地や静かさが本来の性能だ。よくタイヤを変えたら静かになったというが、銘柄を変えなくても新品にするだけで驚くほどフィーリングは良くなるものなのだ。
◆タイヤはどんどん劣化する
そこから走ることで溝が減っていくが、熱による変化によって性能が変わっていく。タイヤは夏場に高速道路を長時間走れば手で触れないほど温度が高まる。そこまで熱が入ると内部の油が徐々に表面に出てきたりして、冷えるとタイヤは固くなっていく。
熱が入って冷えることを繰り返すことで徐々にタイヤのゴム自体が硬く変化していき、乗り心地はハードに、走行音も徐々に大きくなっていってしまうのだ。
サーキット走行ではそれ以上にタイヤが発熱していく。そうなるとやはり内部から油分が出てきたりしてどんどんタイヤは硬くなっていく。
それを防ぐことがタイヤが劣化することを防ぐことになるので、タイヤを長持ちさせたければできるだけ熱は入れないほうがいい。とはいえ、高速道路を走ってタイヤが温まるのは仕方ない。かといって走らないわけにはいかない。ならば異常な発熱を防ぐことが重要。まずは適正な空気圧で使うことが大前提だ。
◆こまめな空気圧チェックが第一歩
空気圧が高すぎるとタイヤのセンター部分だけが接地して、そこだけが熱を持ってしまう。逆に空気圧が低すぎればサイドウォールに負担が掛かり、これもまたタイヤに悪影響を及ぼす。
空気圧が低すぎるとタイヤが波打ってしまい、異常に熱を持ってバーストしてしまうのが「スタンディングウェーブ現象」と呼ばれるもの。
行楽シーズンの高速道路などで多く見られるバーストの理由で、久しく空気圧チェックをしていなくて、空気圧が足りずにスタンディングウェーブを起こしてしまうことが多いのだ。
◆アライメント調整にも大きな効果が
アライメントもタイヤをきちんと使うのには超重要。アライメントとはタイヤの取り付けられている向きのこと。正面から見たときの「ハの字」はネガティブキャンバー角と呼ばれる。真上から見たときにスキーのボーゲンのように「ハの字」になっているのがトーイン。その逆にガニ股になっているのがトーアウトと呼ばれる。
このネガティブキャンバー角が大きくついているとタイヤの内側だけが接地して発熱してしまう。トーインはタイヤの外側が減りやすく、トーアウトは内側が減りやすい。
なのでサーキットでの性能を優先してネガティブキャンバー角多めのトーアウトにセットすると、タイヤのイン側がダメージを受けやすい。それでも目的はタイヤを長持ちさせることではなく、サーキットでのハンドリングを重視するならアリなのである。
◆日常使いではどうすればよいか
街乗りや高速道路メインでタイヤを長持ちさせるならネガティブキャンバー角は控えめで、トーはゼロ付近にしておくことが基本となるが、このあたりは車種ごとに基本設定があるためまずはそれに従うこと。
片減りするような場合はその標準設定から掛け離れていることが多く、アライメントがバラバラになってしまっていることが多い。
車検ごとくらいにはアライメント調整をして適正にすることでタイヤも長持ちするし、ハンドリングも正しいものにできる。ぜひ行ってもらいたいメンテナンスだ。
費用としては2万円くらいが標準的な価格。それでもクルマが真っ直ぐ走り、タイヤも長持ちさせられるならむしろ安いはず。駐車時にクルマ止めにガンガンぶつけていたり、大きな段差を勢いよく超えているとアライメントはズレやすい。そのあたりも普段から気をつけておきたい。