【連載♯3】カーラッピングの過去・現在・未来…先駆者YMG1の“次のステージ”への想い | CAR CARE PLUS

【連載♯3】カーラッピングの過去・現在・未来…先駆者YMG1の“次のステージ”への想い

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【連載♯3】カーラッピングの過去・現在・未来…先駆者YMG1の“次のステージ”への想い
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車を長く大切に乗るユーザーが確実に増えている現在、愛車を綺麗に保つ様々なサービスの価値も上がっている。その1つが自動車の表面にフィルム加工を施し、既存の塗装とはまったく異なる色やデザインで車体を彩ることが可能なほか、飛び石や軽い接触などから塗装面を保護することができ、愛車の資産価値を落とさず、自由かつ気軽に自己表現ができる「カーラッピング」だ。

そこで、カーラッピングの日本における先駆者である株式会社ワイエムジーワン(以下、YMG1/東京都墨田区横川1-1-10すみだパークプレイスII)の山家一繁社長協力の下、編集部ではカーラッピングについての新連載コラムを4月から始動させた。



第3回目のテーマは「顧客価値から考えるカーラッピング専用フィルムとは」。山家社長に顧客への価値提供という視点でカーラッピング専用フィルムについて、様々な角度からお話頂いた。

カーラッピングにおける「顧客価値」

皆さんこんにちは。YMG1の山家です。前回までの連載で、カーラッピングの歴史からビジネスとしての視点、そしてこれからについてなど少し大きなテーマでお話をしましたので、今回はより具体的にカーラッピング専用フィルムについてお話ししたいと思います。

まずその前に大前提として「顧客価値」の話をさせて下さい。フィルムメーカーは全業種にフィルムを売りたいと思っています。基本の考えは同じですが、例えば“Aという業界にはこの特性が必要”という風に、その市場をフィルムメーカーがどうマーケティングするかによって、技術開発も含めて、様々なソースが入ってくることになります。世界にはいくつものフィルムメーカーがありますが、そのあたりをしっかり意識してビジネスにしているのは3Mです。

クルマにフィルムを貼る場合、屋外なので紫外線の影響を受けます。汚れも付くでしょう。そこに対して3Mは、なるべく色を保持できるフィルムや汚れが付きにくいフィルム、または付いた汚れが水で流せるフィルムなどを必要と感じ、ラインナップとして展開しています。他のフィルムメーカーにその前提が無いとは言いませんが、そもそもの視点が欠けているように思います。

またクルマのラッピングフィルムは、塗装の代わりではないので、貼った後に「剥がす」という作業が当然必要になります。その時に綺麗に剥がれた方が良いに決まっていますよね?それがあるからバスを広告媒体にできるのです。一方で都内を走る銀座線の車体の黄色は全てフィルムですが、銀座線の場合、塗装の代わりにフィルムを貼っているので、綺麗に剥がれるという機能はいらないのです。銀座線は一例ですが、カーラッピングだけの市場を考えた時に、どんな価値が必要かということを想像することがまずは大事なのです。

顧客価値から考えるフィルム   

例えば同じ色が付いているフィルムを比べた時に、まず施工する視点で言うと、施工者は施工しやすいフィルムかどうかを見るのではないでしょうか。では“施工しやすい”とはどういうことでしょう?フィルムを貼る際の技術の優劣は、エアが残っていたり、しわが入っていたりというもので判断できます。そうするとエアが残らない、しわが入らない特性を持ったフィルムが求められます。またクルマは曲面なので曲面に追従しやすいフィルムの方が良いですよね?このあたりはクルマにフィルムを施工したことがある人なら常識でしょう。

その他にもクルマにフィルムを貼りたいという顧客の価値を考えた場合、綺麗に剥がした時に糊が残らない方が良いし、塗装が取れないほうが良いし、保管状況にもよりますが、耐候性(色の保持)があった方が良いし…と挙げればキリがありません。

ただし、考えてみて下さい。重要なのは、例えば耐候性というキーワード1つを取ったときに、誰もどのメーカーかを比べていないのです。3Mと他社の耐候性を比べて、3Mは何年持つ、他社は何年…などと誰も決めていない。自社ではもちろん言っていますが、自社だけしか言っていないことにお気付きでしょうか。顧客にすれば「どれが本当?」となりませんか。

これには理由があります。自動車メーカーがフィルムを選択する時には、自動車メーカーの基準でメーカーにオーダーをします。ユーザーにクルマが渡った後、何か問題があった時に責任を取るのは自動車メーカーでフィルムメーカーではありません。なぜなら自動車メーカーのスペックに合わせて、メーカーはフィルムを供給するからです。

ところが、カーラッピングは、施工者側が施工するので、顧客は色しか分かりません。日本は信頼性が高い国なので“それなりのメーカーがそれなりのものを作っているはず”という考えから、製品としてのレベルは基本的には同じ物だと思われています。でも、誰も基準の判断をしていないのです。そのため、カーフィルムの顧客価値を考えた場合に重要なのは施工者が基本的な知識をちゃんと持つということなのです。

我々は3Mの特約店であり、何十年もフィルムを触っていますので、何が重要かは分かっています。ところがSNSなどの発展により、例えば、ポルシェやフェラーリにフィルムを貼ったという情報がアップされれば、フェラーリを持っている人などは「フィルムで色を変えられるんだ!」と驚き、貼った張本人は「カッコいいでしょ?」と自慢気に拡散するはずです。若い施工者はそれらを見て、施工の講習を受けに来ます。

そうなると彼らの1番のテーマは「貼り方」になるのですが、私から見れば「フェラーリにこんな安いフィルムを貼って大丈夫?」とまず思います。要するに、クルマにフィルムを貼ったことがないので分からないのです。貼った後に何か起こってからでは遅いのですが、その怖さの感覚がない。それが怖いのです。

つまり、YMG1や3Mが考える顧客価値は「フィルムを貼っても、安心して剥がせて元に戻るようなフィルムでないと、そもそもダメでしょ」ということです。その意味で、顧客の安心・安全を勝ち取るために誰をパートナーにした方が良いか、どこのメーカーに寄り添えば、安心・安全を担保し、ユーザーから信頼され、動きが出るか。私の結論は3Mだということです。

貼りやすさや耐候性についても、それぞれのフィルムメーカーがそれぞれの基準で作っています。その基準自体の善し悪しをここで言うつもりはありませんが、そういうことを知っておく必要はあると思います。

先ほども話しましたが、新しくフィルムをやろうとしている人は、各メーカーの「貼り方」を学ぼうとしています。つまりフィルムを貼れれば仕事になると思っている節があります。しかしフィルムの特性は貼りやすいか貼りにくいかだけでは決してありません。例えばクルマだと太陽の当たる位置で劣化のスピードが違います。3Mは垂直で何年という尺度を持っていますが、他社はどうでしょうか。

カーラッピングの対象顧客は高級車を持っている人です。高級車は一回車検が通るか否かではないでしょうか。つまり、フィルムを剥がす前に車ごと出してしまう。剥がすことが無い。故に貼っている人も剥がすことが無い…。商流として、貼ったところが剥がして下取りに出すわけでは無いのです。カーラッピングの対象顧客層ならではと言えます。ただ、先ほども述べた通り、YMG1はバスラッピングをやっています。バスラッピングは貼った人間が責任を持って剥がすことが前提です。そのため様々なフィルムの特性を分かった上で、使用するフィルムを決めます。剥がすことを前提にしていない施工者はそういうフィルムの選び方や考えが無いのです。

メーカーによって、フィルムの性能が昔に比べて進化していることは確かです。ただ綺麗に剥がせるか否かは気象条件とお客様の保管状況により全く違います。種類という側面で言うと、フィルムは色々な用途がありますが、カーラッピング専用のフィルムというのは、綺麗に貼れることは1つの条件ですが、貼った後にどれくらい耐候性があるかをお客様に理解してもらう必要もあります。

悲しいことに、日本ではクルマからフィルムを剥がすと言うことが習慣化されていないので、ラッピングを施した中古車の価値が下がってしまっています。カーラッピングの目的の中には、色を変えて楽しむことはもちろん、傷を防いだり塗装を保護することもあるので、普通はリセールバリューは上がるはずですが、 ちゃんとした知識を施工者が持っていないがために、中古車の査定が下がっているという現状があります。それは買う人が安心感を持っていないため「何か隠されているのでは?」とマイナスなイメージを持ってしまっているのです。本来なら施工証明やトレーサビリティみたいなものがあれば良いのですが、そういったものがありません。業界で市販されているフィルムについても、各フィルムメーカーがその点をしっかり啓蒙してほしいというのが正直な思いです。

余談が長くなりましたが、カーラッピングの1番のメリットはフィルムで色が変えられること。その裏返しでメリットとなり得るものがデメリットになっているとも言えます。先ほどの中古車の価値の話がまさにそうですね。その意味で、例えば、施工の国家資格のようなものがあれば分かりやすいのですが…。ちなみに3Mも施工者の熟練の度合いで4starと呼ばれる基準は持っていますが、この基準も他社とは違うもので統一されたものではありません。一般顧客からするとここが分かりにくい面であると思います。

顧客価値を施工者が考え、価値を感じてもらうために何をしなければいけないか。店構えなのか情報発信力なのか正確な情報提供なのか。顧客に安心と信頼を与えないと動かないし、ビジネスにはなりません。いかにやらせたくさせるか。顧客の価値を考えるということは業界の価値をも考えるということで、サービスとして提供しているなら、提供側がそこは考えていかないといけないものです。そう考えれば、フィルムのメンテナンスも考えるし、剥がすことも頭に入れるはずです。そういう仕組み作りをしなくてはと考えています。

個人的には、3Mにはブランドを使って価値を上げることをもっともっとしてほしいと思います。我々は本来は売り子の立場です。最初の話に戻りますが、マーケティングはメーカーの仕事です。どこが良いとか悪いとかではなく、業界全体でフィルムの知識を付けないとダメなのです。

次回はカーオーナーの立場で、実際にカーラッピングを行った業界の著名人として、パンツェッタ・ジローラモさんをゲストにお迎えし、一緒に色々なお話をしたいと思います。ぜひお楽しみに!

<プロフィール>

山家一繁(やまがかずしげ)

株式会社ワイエムジーワン代表取締役。日本で初めてバスラッピングを手掛け、これまでに約4,000台のバスラッピング製作施工実績を持つ日本におけるカーラッピングのパイオニア。高級車の新しい楽しみ方「LAPPS(=Luxury Automobile Progressive plus Style)」 として車両専用ラッピングフィルムで車の外装をすべて包み込み、カラーリングを変えるラッピングサービスを普及させるYMG1のサービスブランドの立ち上げほか、その施工や集客ノウハウを元にカラーリングチェンジラッピングビジネス講習も実施するなど、カーラッピングの普及に積極的に取り組んでいる。

《カーケアプラス編集部》

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