車内におけるサウンドシステムの作り方のいろいろを解説している当特集。前回からは、フロントスピーカーのレイアウトについて考えている。今回は、「フロント2ウェイ」と「フロント3ウェイ」、それぞれの利点と不利点を説明する。さて、音が良いのはどちらなのか…。
◆「フロント2ウェイ」にはいかんともし難いデメリットがある!?
前回の記事では、「コアキシャルスピーカー」と「セパレート2ウェイスピーカー」のそれぞれの利点と不利点とを説明したが、実は選択肢はもう1つある。それは「フロント3ウェイ」だ。今回はこれと「フロント2ウェイ」とを比較する。
さて、「フロント2ウェイ」と「フロント3ウェイ」とを比べたとき、音的に有利なのはどちらなのかと言うと…。
それぞれにメリットがあるので一概には言えないが、「フロント2ウェイ」にはいかんともし難いデメリットがあり、「フロント3ウェイ」ではそのデメリットを払拭できる可能性が高い。ゆえに上級者の多くは「フロント3ウェイ」を選択している。
「フロント2ウェイ」が有するいかんともし難いデメリットとは、主には2つある。1つは「ミッドウーファーに負担がかかり過ぎること」で、もう1つは「音楽の主要パートである中音が足元から聴こえてくること」だ。
◆「2ウェイ」のミッドウーファーは、「分割共振」という問題点を抱えている…。
それぞれがどういうことなのかを説明していこう。「フロント2ウェイ」は、人間の可聴帯域である20Hzから20kHzまでの音を、左右それぞれで2つずつのスピーカーユニットにて再生する。ちなみに20Hzから20kHzまでとは音程でいうと約10オクターブ分に相当するので、それを1つの「フルレンジスピーカー」で再生するのは現実的ではない。受け持つ範囲が広すぎて、全帯域をスムーズに再生しきれない。
しかし「フロント2ウェイ」では、それを2つのスピーカーユニットで鳴らすこととなるので、より効率的な再生が可能となる。
とはいえ、それでもミッドウーファーには負担がかかる。広範囲な帯域を担当せざるを得ないからだ。一般的なミッドウーファーは大体7オクターブ以上を担当することが多く、場合によっては8オクタープほどを担当することもある。結果、物理的な問題が発生しがちだ。それは「分割共振」だ。
スピーカーの振動板は「コーン型」である場合が多いが、音楽を再生するときそのコーンの中心部と外周部は常に一糸乱れずに同じ動きをする必要がある。なおそのような動き方のことは「ピストンモーション」と呼ばれている。しかし実際は、ある程度高い音程の音を再生しようとするとき、中心部と外周部とが同じように動けずに波打ったような動きをしてしまう。一部これが起きにくいことを強みとしている製品もあるが、普通「分割共振」は「2ウェイ」のミッドウーファーにとって“宿命”だ。これが起こることを避け難い。
◆「フロント3ウェイ」は難易度が高いが、上手くいけば得られる結果もより良くなる!
しかし「フロント3ウェイ」を選択すれば、ミッドウーファーの「分割共振」の発生率は相当に抑えられる。これが「フロント3ウェイ」の最大のメリットだ。
また、音楽の主要パートである中音が、高い位置に取り付けたスピーカーから聴こえてくるようになることもメリットだ。結果、サウンドステージが目前で展開されやすくなる。そして主要パートである中音を正対したスピーカーから聴けるので、得られる情報量も上がる。
ただし、「フロント3ウェイ」にもデメリットがある。それは主には2つある。1つは「コストがかかること」で、もう1つは「コントロールが難しくなること」だ。
スピーカーユニットの数が増えるのでスピーカー代が上がり、取り付け費用もかさむ。サウンドチューニングの際にはケアすべき項目が増える。結果、失敗する可能性も上がってしまう。
でももろもろが上手くいけば、得られるサウンドクオリティが上がる可能性は高まる。というわけで音を突き詰めていきたいと考えたときには、「フロント3ウェイ」という選択肢があることを思い出そう。難易度は高まるが、チャレンジする価値も高い。
今回は以上だ。次回はよりマニアックなスピーカーレイアウトについて解説する。お楽しみに。