プロが語り合う、ADAS搭載車へのカーディテイリング施工…アスナル主催 第13回カーディテイリングセミナー&ガレージセール | CAR CARE PLUS

プロが語り合う、ADAS搭載車へのカーディテイリング施工…アスナル主催 第13回カーディテイリングセミナー&ガレージセール

イベント イベントレポート
プロが語り合う、ADAS搭載車へのカーディテイリング施工…アスナル主催 第13回カーディテイリングセミナー&ガレージセール
プロが語り合う、ADAS搭載車へのカーディテイリング施工…アスナル主催 第13回カーディテイリングセミナー&ガレージセール 全 6 枚 拡大写真

幅広いカーディテイリング関連商材を取り扱う有限会社アスナル(神奈川県川崎市・宮﨑慎也代表取締役社長)が主催する『第13回カーディテイリングセミナー&ガレージセール』が11月25日(土)に相模原市立産業会館大ホールで開催された。

出展15社による即売会のほか、“ カーディテイリングの明日 ” をテーマに企画された2本の特別セミナーや出展各社の実演、プレゼンテーションはライブ配信も行われ、会場には総勢70名が来場。最後には出展各社が持ち寄った協賛品をもらえる恒例の商材争奪じゃんけん大会で盛り上がった。

シートやタイヤ汚れに使える「ドライアイスクリーナー」

出展各社がステージ上でプレゼンを行う中、特に目を引いたのは、株式会社グリーンテックジャパン(三重県津市・田村欣也代表取締役)のドライアイスクリーナー『GT-22』の実演。今年10月に発売された同製品は、超微粒子ドライアイスパウダーを噴射して洗浄できる点が特徴。水ではなくドライアイス噴射のため気化して不要物が残らず、噴射面は濡れない。金属やプラスチック、ゴム、ガラスなどを傷つけずにやさしく洗浄できるという。実演では、アルカンターラのシートヘッドレストや模型タイヤをチョークで汚したあと、『GT-22』で瞬時に洗浄できる様子を披露していた。

ADAS搭載車への「カーフィルム施工」はどうなる? 

特別企画「カーフィルムの明日」と題されたパネルディスカッションでは、日本自動車用フィルム施工協会(JCAA)の濱田浩光会長(貼りアップ株式会社・代表者取締役)と、JCAA渉外委員長の井上和也氏(株式会社ビーパックス・代表取締役)が登壇した。

司会を務めたアスナルの宮﨑社長は、先進運転支援システム(ADSA)搭載車へのカーフィルム施工について触れ、トヨタ60系プリウスのリアゲートフィルム施工時に、リアゲートを上げた状態で作業すると施工液がセンサー設置場所に溜まってエラーが発生する事例を挙げた。

続いて、自動車メーカー各社の車両整備マニュアル情報や故障整備事例などを有料で閲覧できる日本自動車整備振興会の整備情報提供システム『FAINES』で公開中のトヨタ60系プリウス・フロントカメラシステムの注意事項には “ ウインドシールドガラスに傷、ひびなどが生じた場合、ウインドシールドガラスを交換する ” とあり、ウインドウリペア不可であることや、“ フロントウインドウガラスにフィルムを貼らない ”と記載があることも紹介。そのうえで宮崎社長は、濱田会長と井上渉外委員長に「今後フィルム施工は大丈夫なのでしょうか?」と質問を投げかけた。

濱田会長は「JCAAの親団体の日本ウインドウ・フィルム工業会(JWM)はフィルムメーカーが会員として所属しており、フロントガラス専用フィルムを販売している会員企業も含まれます。ADAS搭載車へのフロントガラス施工について、JWMで情報を整理している段階です」とコメント。

井上渉外委員長は「スバルのアイサイトXはカメラがフロントガラスに密着しているので、カメラの前にフィルムを貼る必要がなく、トヨタのADASセーフティセンスもカメラがフロントガラスに直付け。外側から貼るプロテクションフィルムの場合は別ですが、カメラとフロントガラスが一体になっているADAS搭載車の場合は除くなど、文言について、JWMから日本自動車工業会に申し入れを行うために準備しています」と話した。

また濱田会長は「JWMはフィルム施工に関する現場の知識が低くなっているので、現場を知っているJCAAがJWMとコミュニケーションを深める必要性があると思っています。施工事業者も、施工技術の高さだけをウリにするのではなく、正しい施工が安全運転につながることを、きちんとお客様に説明することが大切。施工が上手いだけではビジネスを継続できない時代になってきている」と、法令遵守の重要性を強く訴えた。

進化するクルマと今後のカーディテイリング

イベント最大のテーマである「カーディテイリングの明日」について語られる特別セミナーでは、大阪府堺市でカーディテイリングショップを展開する有限会社カーメイクアートプロの丸山義昭社長と、アスナルの宮﨑社長との対談が行われた。

カーメイクアートプロの歴史を振り返りながら、丸山社長のこれまでの取り組みを紹介。1992年、22歳だった丸山社長はクリスタルグループで基礎技術講習を受けた翌年に独立開業。2014年には総工費3億円をかけて2階建て昇降エレベーターを設置したカーディテイリング専用社屋を建設する。

現在は各種ボディコーティングをはじめ、内装リペア・レザー張替えや塗装タイプのプロテクションフィルム施工も行い、ディーラー下請け率は低く一般ユーザーからの依頼が多いという。車やバイクだけでなく、クルーザーやプライベートジェット機のほか、ホテル日航関西空港の喫煙部屋全室のヤニ取り消臭・除菌クリーニングの実績もある。また以前から、国内外の展示会に数多く足を運んで情報収集に注力するほか、展示会に出展し、販売代理店やサプライヤーとしても事業を展開。

最近の取り組みとしては、数年前から塗装タイプのプロテクションフィルム施工でバンパー脱着を行っていることもあり、今年11月10日に特定整備認証を取得。また11月23日には創業30周年を祝してお客様感謝祭を開催。このほか、マレーシアにコーティング剤生産工場を新設し、今後はコーティングメーカーとして事業を開始することも伝えられた。

対談終盤、宮崎社長は「これからのカーディテイリング業界の向かうべきポイントは何でしょうか? 今日、来場頂いた皆さんも先々に不安を感じられています」と発言。宮崎社長の考えとしては「異業種・資本のある企業の本格参入、カーディーラーの囲い込み強化、クルマの高度化、SNSの発信力の4点が重要だと思っています」と述べた。

これに対し、丸山社長は「異業種から施工講習の問い合わせがあり、コーティング関係は今後も増加すると思う。鈑金塗装事業者さんもカーディテイリングに力を入れる動きがあるので、カーディテイリング事業者は自社のブランディングを見直して独自の価値をもっと伝えてほしいですね。ディーラーの囲い込みという点では、これまで自社が20年以上つきあいがあった輸入車ディーラーが今年から内製化になり依頼がほぼなくなりました」とコメントした。

続いて宮崎社長は「カメラやセンサーだらけのクルマは、触っただけでエラーコードが残ってしまう。これからOBD車検が始まると、磨きやコーティング施工した車両で特定DTCが出ると、施工事業者が “ 何をした? ” と追求を受ける。“ 洗って磨いてコーティングしただけ。何もわからない ” ではすまされない状況になってくる」との言い、丸山社長も「確かにそうですね」と同意していた。

またSNS発信について、宮崎社長は「自社でコーティングを提案しても、YouTuberが薦めるコーティングしか選ばない顧客が出てきたり、カーディーラーの高額コーティングに顧客が流れていく心配がある」と述べた。丸山社長は「確かにYou TubeなどSNS発信にもっと力を入れるべき」と話したほか、最後に丸山社長はカーディテイリングについて「自分たちのいままで培った技術で、車の細部まで心のこもったハンドメイドサービスを限界まで発揮してお客様のカーライフを快適にするサポート業と定義しています。これからはエーミング作業も出てくるので、お客様の安心・安全とコンプライアンスが大切」と述べた。

今回の特別セミナーでは、ADAS搭載車への施工にフォーカスした話題が多くあり、これからのカーディテイリングは施工品質だけでなく、ユーザーの安心・安全のために説明責任を果たして正しい施工を行う必要があることが語られた。カーディテイリング事業者の現場目線で、特定整備や法令遵守についてきちんと学ぶことができ、ADAS搭載車など増え続ける新型車へのカーディテイリング施工の注意事項を共有できる場の必要性を感じた。

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

この記事の写真

/

特集