エンジン冷却水の熱交換器であるラジエーター。純正のままではチューニングしたりサーキット走行をすると水温が高くなってしまい大容量品に交換することが必須だった。
そのときに言われていたのがアルミ製と銅製のどちらが良いかという問題。定説としてはアルミ製の方がサーキットなどでは冷えるが、銅のほうが自己放熱性が高いので街乗りでは銅製の方が冷えやすいという話。
◆比較的安い“銅製”か? それとも高くてもアルミ製なのか?
価格的には銅製の方が安く、せっかくなら高い方のアルミ製を購入しようと思うところだが、街乗りメインであれば銅製の方が渋滞にハマったときも水温が下がりやすく使い勝手が良いと言われていた。しかし、これもちょっと前の常識。現在はアフターパーツでの銅製ラジエーター自体が少なくなってしまった。その代わりにさまざまなアルミ製ラジエーターがラインアップされるようになった。
ラジエーターと一言で言ってもその設計思想で性能は大きく異なる。ハイスピードで使うなら厚みがあるものでOK。純正ラジエーターは20~30mmほどのコアの厚みだが、その2倍以上の厚みのものがあるのだ。厚ければその分、表面積も増えるので放熱カロリーは高まる。なので、厚いものにして冷えるようにしたいのはわかる。しかし、どんな条件でも冷えるわけではない。
厚みがある分だけ走行風は抜けにくくなるので、街乗りとかアイドリングではむしろ不利。ハイスピードなサーキット走行がメインなら厚みがあるラジエーターがマッチするのだ。
◆街乗りとサーキットで選ぶ製品は変わってくる
街乗りやミニサーキットがメインなら逆に薄めのラジエーターの方が冷えやすい。表面積からの放熱カロリー自体は厚いラジエーターに劣るが、走行風が抜けやすい。風が抜けなければ熱気が抜けず、そこを通る冷却水の温度も下がらないので、低速ならばむしろ厚みの薄いラジエーターの方が冷えやすい。
それと同じようにファンのピッチも種類がある。冷却水の通るチューブの間に配置されるフィンはそのギザギザの間隔やフィン自体の形状によって冷え方が異なる。簡単に言えば、フィンのピッチが細かいものほど高い速度向きで、低い速度で使うなら粗いピッチのフィンで積極的に風を抜いたほうが冷えやすい。
そうなるとエンジンルームのレイアウト的に走行風が抜けやすいかとか、ボンネットにダクトを空けて走行風を抜く場合、どちらのピッチや厚みのラジエーターの方が冷えやすいのかという話になる。「◯×メーカーのラジエーターは冷えない」ということを言う人もいるが、それは正しくはその人の使うステージでは冷えなかったというだけで、使っているステージと設計されているステージが異なっているだけと思われる。
そもそも近年のクルマは純正の冷却系のキャパシティがアップしていて、街乗りではもちろんサーキット走行でも水温が上昇しないことも多い。水温自体が90年代から00年代のクルマは水温80~90度が基本で、100度になったら危険と言われていたが、今は概ねすべてが10度ほど高い。90~100度くらいが適正水温で110度くらいになったらクーリング走行をしたり、対策が必要になると考えたい。なので、高速道路を真夏に走っていて水温が100度だった、なども適正なのでラジエーター交換は不要。
エンジンオイル油温も同様に20年前のクルマに比べて10度以上適正温度が上がっていて、ここ数年のクルマであれば適正が100~110度。120度を超えたら冷やすか対策を考えたい。
スポーツ走行などをすると水温が上がるクルマは少ないが、油温が高くなるクルマはいまだに多い。その場合オイルクーラーを装着したいところだが、上記のように120度くらいまでなら不要。
よかれと思ってオイルクーラーを装着する方もいるが、オイルクーラーの装着にはオイルの接続箇所が増え、オイル漏れの起きる可能性のある場所が飛躍的に増える。そこからもしオイルが漏れると重大なトラブルになるので、できれば装着しないほうがリスクコントロールの面から言えば望ましい。
そのため本当にオイルクーラーが必要かはプロショップとよく相談してから決めてもらいたい。油温110度を90度に抑えるオイルクーラーに意味はないのだ。
このように2010年くらいをさかいに冷却系の設計が代わり、それに合わせた対策やチューニングも変わってきている。最近のクルマであればそれに合わせた冷却対策で愛車を労ってもらいたい。