愛車の洗車を皆さんはどのように行っているだろうか? DIY洗車も手入れとしては主流だが、もっとも手軽なのはガソリンスタンドなどに設置されている「洗車機」の利用だろう。今回はそんな洗車機に対する疑問を解き明かしてみることとした。
今回取り上げる洗車機とはクルマを覆うような構造でクルマのまわりを前後方向に移動して自動的に車体全体を洗車してくれる、いわゆる「門型洗車機」のこと。ガソリンスタンドや洗車場などに設置されているのでドライバーならずとも一度は目にしたことがあるだろう。クルマを乗り入れて所定の場所に停車すると洗車機が動き出し、水流の噴射やシャンプー、さらにはブラシによる洗浄や風を送るブローシステムで車体の乾燥までをこなす全自動マシンだ。
しかし門型洗車機に対するユーザーの先入観はちょっと厳しい。利用したことの無いユーザーからは「ボディにキズが付くんじゃないだろうか?」「隅々まできれいになるの?」といった懸念の声も聞こえてくる。
そこで、最新型の門型洗車機事情を聞きに、門型洗車機を40年間造り続ける老舗メーカーであるエムケー精工に取材に出かけた。門型洗車機を日本国内の自社工場で部品生産から組み立てまで行う同社、クオリティの高さや時代のニーズに合わせて門型洗車機の進化を実施してきた信頼のメーカーでもある。同社で最新型の門型洗車機の性能、さらには疑問点である“キズは付くのか?”“隅々まできれいになるのか?”といった疑問を解消すべく取材を行った。
長野県にある同社の開発、製造の拠点におじゃますると、広大な敷地内には数多くの門型洗車機が設置され、その姿は壮観。さらに室内の試験スペースには最新の門型洗車機が設置され、実際にクルマの洗浄を間近で見ることができる環境も整えられていた。
そんなエムケー精工で単刀直入に「門型洗車機で洗車するとボディにキズが付くと思っているユーザーがいますが、本当のところどうなんでしょうか?」という質問を投げかけてみた。すると立て板に水のような答えが返ってくることになる。
「結論から言うと現在当社で用いているブラシでボディにキズは付くことはありません。いくつかのブラシの種類がありますが、洗浄力や耐久性などの違いでラインアップを持たせています」
同社ではブラシには大きく分けて「ファイバータイプ」「織布タイプ」「スポンジタイプ」「ハイブリッドタイプ」の4つの種類がある。そのいずれを使ってもボディをキズ付けることは無く、安心して洗車できるというのだ。いきなりの結論なのだが、もう少し筆者の経験なども重ねて突っ込んでみることにした。
「円弧を描くような薄いキズがボディに入っている例もあって、“洗車キズ”なんて呼ばれることもあると思うのですが、あれは門型洗車機が原因では無いんでしょうか?」
しかし、この疑問も見当違いだったようだ。
「そもそも門型洗車機ではブラシの回る方向から考えて円弧状のキズは付かないのです、丸く見える洗車キズは手洗いした際に着いたキズである場合が多いと思われます」
とのこと。確かに門型洗車機のブラシ形状を見るとボディに対して垂直方向にドラムが回転する構造で、ボディには垂直にブラシが当たっている、つまり円弧状のキズは付きようがないのだ。これで門型洗車機=ボディにキズが付くというのはいわば都市伝説だったことがわかった。
しかし、ここでもうひとつの疑問として「前のクルマの泥汚れなどがブラシに付いたままで、次に洗車する自分のクルマにキズ付けたりしないのでしょうか?」が沸いてきた。するとこれもすでに対策済みなのだという。洗車が終わるごとにブラシは毎回自動的にクリーニングされて、汚れは残さないのだ。これなら安心だろう。こうして門型洗車機でボディはキズ付かないことがわかった。
しかし、さらに意地悪な思いが浮かんでくる。先に紹介した門型洗車機で用いられている4種類のブラシはなぜ存在するのだろう? 一般ユーザーは「織布タイプやスポンジのブラシだと柔らかくてキズが付きにくいのでは?」と考えて選ぶシーンも多いと想像されるが? しかし4つのブラシは、それぞれに機能が分かれているだけでボディへのダメージという意味で種類分けがされているのでは無いとのこと。
ベーシックなファイバータイプは細い繊維状のブラシで洗浄力の高さが特徴で、ディーラーなどのプロの手による洗車で用いられることが多いという。一方、先に紹介した織布タイプ特徴は布がボディの広い面に当たるためこする力が強くクレンジング力が強い傾向にある。さらにスポンジは柔らかいイメージがあるが織り布同様に面で洗う力が強いのが特徴。そしてハイブリッドタイプはスポンジとファイバーをミックスしたブラシ。こちらは洗浄力と面でのクレンジング力を兼ね備えたブラシと言えるだろう。実際に社内には各ブラシを手で触って体感できるコーナーがあったのだが、4種類の各ブラシを触ると想像以上にしなやかで、ボディをキズ付けることが無いのは容易に想像できた。
次にもうひとつの「隅々まできれいになるの?」という疑問についてもうかがってみた。すると、近年の門型洗車機が大きく進化している点のひとつがここなのだと説明してもらった。門型洗車機で洗車するクルマの形状はさまざま、それぞれのボディ形状やミラーなどの凹凸が異なる、そのままだと洗い残しができてしまうのだが、エムケー精工の最新門型洗車機はボディ形状をセンサーを使ってスキャニング(同社では光電センサーによる3DスキャニングNEOなどを採用)。その結果ボディの隅々まで余すところなく洗浄できるというのだ。サイドアンダーミラーなどのイレギュラーな突起物もスキャンして、その周辺もしっかりと洗い上げてくれるのがそのためだ。
安心して常用することができることがあらためてわかった門型洗車機。愛車を手軽に洗車するなら、機械のボタン操作だけで完成するので時間の無いときなどはとにかく便利。積極利用して時間を有効に使って、カーライフをもっと充実させるのも良いだろう。
最後に門型洗車機のプラスアルファの活用法を紹介しておこう。門型洗車機から出てきたクルマはボディに少し残った水滴を拭き上げれば完了なのだが、その際に濡れたままのボディに使えるスプレータイプのコーティング剤を吹きかけるひと手間を加えればさらに完成度がアップするので要注目。
スプレーしたコーティング剤をマイクロファイバーで拭き上げれば水滴の除去と同時にコーティング処理までが完了するので非常に手軽。簡単に門型洗車機で愛車を洗車した上に好みのコーティングで仕上げることができる、手軽で満足度が高い門型洗車機の活用法のひとつだろう。門型洗車機のコーティングメニューを選ぶのとは異なる、自分好みのコーティングを実施できるのもこの方法のメリットになりそうだ。
さらに門型洗車機を利用する際のもうひとつのコツも伝授しておこう。タイヤ&ホイールまわりをもっときれいにしたいならば、門型洗車機に掛ける前にタイヤ&ホイールクリーナーをスプレーして、そのまま洗車機に入れてみるのも手だ。ホイール洗浄のメニューがある洗車機であれば、頑固な汚れが付いているタイヤ&ホイールまわりの洗浄力をさらにアップしてくれるので仕上がりもぐんとアップするだろう。
とにかくスピーディ&簡単に高い精度で洗車を済ませられる門型洗車機を基本として、プラスアルファでお手軽コーティング剤やタイヤ&ホイールのクリーナーを組み合わせて使うことで、空いた時間にさっと済ませられつつ完成度の高い仕上がりが期待できる、超お手軽な洗車&コーティングを実施してみよう。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。