捨てる神あれば拾う神ありーー。大手総合商社の伊藤忠商事が、保険金不正請求問題などで存亡の危機にさらされた中古車販売大手のビッグモーターを買収し、その事業を引き継ぐ新会社「WECARS(ウィーカーズ)」を5月1日付けで発足させた。
新会社の社長兼最高経営責任者(CEO)には、伊藤忠元執行役員でタイヤ関連事業の経験が長い田中慎二郎氏が就任したほか、グループから50人超の幹部級の人材を派遣。コンプライアンスや人事評価、報酬制度などで各委員会を立ち上げ、組織風土を改革して経営再建に取り組むという。
また、ビッグモーターの全国約250の店舗は、今後、看板などを刷新して営業を継続し、従業員約4000人の雇用も維持するが、諸悪の根源とみられる兼重宏行前社長ら創業家一族は経営に関与させないことも明らかにしたそうだ。
きょうの各紙にも「新社名『ウィーカーズ』伊藤忠 ビッグモーター事業継承」(毎日)や「ビッグモーター、新会社名で再建へ。創業家関与せず、旧会社は不祥事処理に対応」(朝日)、そして「伊藤忠、再生へ精鋭50人、組織風土変え顧客重視に」(日経)などのタイトルで経済面のトップ記事として大きく報じている。
それによると、日経なども取り上げているが、伊藤忠は傘下に高級輸入車販売大手のヤナセや英タイヤ小売り大手のクイック・フィットなどを抱えるほか、過去には米ビッグスリーのゼネラルモーターズ(GM)といすゞ自動車との資本提携の橋渡し役をつめるなど、グローバルで自動車関連事業との関係も深い。さらに、不正請求に手を染めた自動車保険の代理販売の再開にあたっては子会社の保険代理店の「ほけんの窓口」を運営しており相乗効果も期待できるという。
伊藤忠に限らず、三菱商事などの総合商社では、近年コンビニをはじめ、スーパーなど流通・小売り業界の再編に触手を伸ばすケースが多くみられる。今回、伊藤忠が機能不全とまで揶揄された不祥事企業にあえて経営資源を振り向けたのは、これまで系列の自動車メーカー主導の国内の自動車販売網に楔を打ち込んで、次の一手を講じる狙いがあるとも見受けられる。総合商社恐るべし…。
2024年5月2日付
●改革へ伊藤忠から50人、ビッグモーター新会社、車関連会社と相乗効果 (読売・9面)
●新幹線の札幌延伸「30年度末は困難」建設主体の独法、国交省に伝達へ (朝日・7面)
●テスラが急速充電器部門閉鎖 (毎日・6面)
●「赤字でも売る」過酷価格競争、中国EV市場「値引き尋常ではない」4年ぶり北京モーターショー (東京・3面)
●山手線プラレール号出発! 発売65周年記念15日まで (東京・15面)
●築地再開発にトヨタマネー、総事業費9000億円、三井不したたか、リスク分散 (日経・13面)
●4月国内新車販売、4カ月連続減(日経・13面)
●認証不正の報告一部企業に遅れ、国交省の内部調査要請 (日経・31面)