長く経済記者を続けていると、晩節を汚しそうな多くのカリスマ経営者に出会ったが、「院政」と陰口を叩かれても「喜んでしたい」と、威風堂々と持論を述べる実力者もめずらしい。
トヨタ自動車が、愛知県豊田市の本社で定時株主総会を開き、豊田章男会長ら取締役10人の選任案が承認された。総会の冒頭で議長役の佐藤恒治社長は、「認証問題でご迷惑をおかけし、心よりおわび申し上げる」と陳謝。「豊田章男会長が現場に根ざした改革に取り組んでおり、私も再発防止に取り組む」と述べたという。
また、出席した株主との質疑では「トヨタは大丈夫か。モータースポーツに時間を使いすぎ、会長の道楽になっていないか」と追及。豊田会長は、「責任を取るのは自分。決めて実行するのは執行メンバーで、私はいつでも相談に乗ると言っている。それが院政というのであれば、喜んで院政をしたい」と答えていたそうだ。
国の「型式指定」をめぐる認証不正が発覚した直後の総会開催でもあって、不正の責任問題とともに、再発防止策に注目が集まったが、前年より882人多い4656人が出席し、株主12人から質疑があり、1時間51分で終了したという。
きょうの各紙にも、その注目度の高さから経済面などに大きく取り上げている。例えば、読売は「株主総会相次ぐ陳謝、トヨタ、認証不正『再発防ぐ』」との見出しで「株主からは、内部管理体制の状況や経営陣に責任を問う意見も出た。業績は好調でも、株主が企業を見る目は厳しくなっている」と指摘。
朝日は「豊田会長ら10人再任、不正に懸念の声も」。毎日も「トヨタ社長が陳謝、認証不正『風土改革やる』」とのタイトル。産経は「トヨタ問われる『章男流院政』」として、「ガバナンス(企業統治)不全に陥ったのではないか」などの声が上がったなどと報じた。
さらに、日経も「トヨタ会長、現場で改善主導、『院政と呼ばれても』」という、皮肉たっぷりの見出しで、「豊田会長は再発防止の取り組みを主導するが、不正の責任を問う声も上がっており、企業統治には厳しい視線が注がれる」とも伝えている。
豊田氏再任の昨年の賛成率は84%だったという。今回の総会での議案の賛成率はきょう19日に公表されるが、米議決権行使助言会社2社は事前に、豊田氏の再任に反対を推奨。機関投資家では、米最大の公的年金基金として知られる米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)が豊田氏ら取締役7人の選任に反対票を投じたことを明らかにしており、豊田氏の言葉どおりにこれからも「喜んで院政を敷く」ことができるかどうか。
2024年6月19日付
●株主総会相次ぐ陳謝、トヨタ、認証不正「再発防ぐ 」(読売・9面)
●セイノー、物流会社買収、24年問題に対応、三菱電機の子会社 (読売・9面)
●ホンダジェット旅客機に、機体購入不要、距離応じ料金 (読売・9面)
●「レベル4」自動運転全国へ、補助や申請簡素化(朝日・9面)
●もっと社会人野球、Honda長丁場の迷路、所属変更南関東の“常連”敗退(毎日・15面)
●トヨタ問われる「章男流院政」執行は佐藤社長強調も、株主総会認証不正で不安の声(産経・10面)
●永守氏「岸田社長は本物」ニデック、AI関連1兆円めざす (日経・13面)
●三菱自、追加還元を視野、配当や自社株買い、今期、販売が回復(日経・16面)