2026年1月28日に発表された「改造自動車届出制度」の見直し案は、自動車業界に大きな波紋を呼んだ。特にサスペンション等の改造届出が不要になるというニュースは、自動車ユーザーやカスタム事業者の間で話題となったが、一方でSNS等では「改造が何でもありになる」「車検がザルになる」といった誤解も散見される。
当編集部は、独立行政法人自動車技術総合機構(NALTEC)検査部へ独自取材を行い、2026年7月施行予定(同年3月改正予定)の新制度の真意と注意点について伺った。
「届出不要」になっても「審査」はなくならない
取材においてNALTEC担当者が最も強調したのは、今回の改正は審査の効率化・一本化であり、安全基準の緩和ではないという点だ。背景には、現状の制度が抱える課題がある。現在、コイルスプリングやショックアブソーバーなどの「指定部品」は改造届出が不要となっているが、サスペンションアームやロッド類、ドライブシャフトなどを交換する場合は、事前に書面による改造自動車届出が必要である。しかし、実態としてはメーカーが作成した強度検討書を添付するだけの「形式的な届出」となっている現状があったという。
そこで今回の改正では、届出が必要であった部品についても事前の書面審査を廃止し、コイルスプリング等と同様に車検時の現車確認(検査)に一本化することとなった。あくまで、設計・製造段階で安全性が担保された部品であれば、車検ラインでの確実な取り付け確認と外観検査で十分であるという、現場の実情に即した判断への移行である。担当者は、保安基準への適合性を見なくなるわけではないと断言する。

対象となる「アフターパーツ」の厳格な境界線
では、どのような部品が届出不要となるのか担当者に伺った。まず「一般市場において流通している自動車部品」の定義だが、特定のメーカー品である必要はなく、国内外において製品として製造・販売されているものを指す。いわゆるワンオフ(一点もの)の手作り部品や、既存部品を切った貼ったして加工したものは対象外となり、従来どおりの届出が必要だ。
さらに重要となるのが「変更加工することなく」という基準である。今回の緩和措置が適用されるのは、完全なポン付け(ボルトオン)の場合に限られる。担当者によれば、ボルト穴を数ミリ広げる、干渉を避けるためにブラケットを曲げるといった加工を行った時点で対象外となり、届出が必要になる。現場での判断基準を曖昧にしないため、全く変えていないことが絶対条件となるのだ。
「構造等変更検査」はこれまで通り必須である
ユーザーが最も混同しやすいのが、改造自動車届出(部品の性能・強度等の審査)と構造等変更検査(車両の寸法等の変更)の違いである。例えば、届出不要のアフターパーツを使ってリフトアップやローダウンを行った結果、車高が車検証の記載から大きく変わる場合(プラスマイナス4cmを超える場合)は、これまで通り構造等変更検査を受ける必要がある。届出が不要になるから構造変更もしなくていいというのは大きな間違いであり、注意が必要だ。

エンジンやブレーキが対象外である理由
今回の見直し対象は「動力伝達装置」「走行装置」「緩衝装置」「連結装置」の4装置に限定されている。エンジン(原動機)やブレーキ(制動装置)が含まれていない理由についてNALTECは、強度以外にも能力の確認が不可欠なためと説明している。
例えばエンジンの載せ替えによる排ガス性能の変化や、ブレーキの制動能力などは、外観検査だけでは判断できず、事前の書面審査(技術基準への適合性確認)が必要不可欠だからである。
ユーザーと事業者のメリットと責任
この改正により、同一車種の部品流用(ATからMTへの載せ替え等)など、安全性が明白な改造において長期間の書面審査待ち時間が解消されるメリットがある。また、車検当日に現車を持ち込んで検査を受けるだけで済むようになるため、手続きのスピードアップが期待できる。
NALTEC担当者は、要件を満たした部品であれば手続き上の手間が減るメリットがある一方で、安全性が担保されていない改造が許容されるわけではないと念を押す。カメラやセンサー(エーミングが必要な先進安全装備)への影響も含め、車検時にはその状態で保安基準に適合しているかが厳しくチェックされるからだ。ユーザーや事業者には、届出不要イコール安全確認が不要ではないことを肝に銘じ、信頼できるパーツ選びと確実な取り付けを行うことが、今後より一層求められる。
※本記事の内容は2026年2月時点の取材に基づくものであり、パブリックコメントの結果等により、最終的な施行内容は変更される可能性があります。

