中東情勢の悪化に伴うナフサ関連製品の供給不安が続いている。2026年4月に経済産業省から供給量回復への要請が出されたものの、5月下旬現在も解消には至っていない。原油タンカーの国内到着などの報道もあるが、以前のような供給状態にすぐ戻るかは不透明だ。
ナフサ関連の供給不安と自動車修理業への影響
鈑金塗装など自動車修理を行う事業者にとって、シンナーは塗料の希釈や洗浄、油落としなどに欠かせない副資材である。環境配慮型の水性塗料を導入している自動車修理工場では「今のところ大きな影響は出ていない」という情報もあるが、ここ最近、自動車修理事業者が報道番組で実情や不安を訴える声が目立っている。ナフサ関連製品の供給不安がさらに長期化すれば、幅広い自動車修理事業者への悪影響は避けられないだろう。
全国の鈑金塗装・自動車整備事業者など594社を対象に、シンナー・塗料(原色)・パーツクリーナー・エンジンオイルの4資材に関する実態調査(株式会社プロトリオス調べ)によれば、シンナーを取り扱う事業所の88.7%で「入手困難または納期遅延」が発生していることが判明している。

再塗装前提の「デントリペア」による作業効率化
資材不足に加え、特定地域では突然の雹(ひょう)でボンネットやルーフに無数のヘコミが発生する「雹害」が深刻化している。広範囲かつ複数のヘコミは部品交換となるケースが主だが、交換用部品は高額で納期遅れの課題もあるほか、ルーフを部品交換した場合は修復歴がつき、車両の査定額に影響を及ぼす。

こうした状況下で注目されているのが、特殊工具を用いてヘコミを平滑にする「デントリペア」だ。パテ付けやスタッド溶接機による引き出し工程を省ける点が特徴となっている。
塗装を行う必要がない品質で仕上げる「ペイントレス・デントリペア」の習得には長年の研鑽が必要とされるが、現在、自動車修理事業者から注目を集めているのは、再塗装を前提としてヘコミを平滑にする「デントリペア基礎技術」の習得だ。外板パネルの軽微なヘコミをデントリペアで処理できれば、作業スピードの向上やコスト削減につながるためだ。
デントリペア基礎研修が人気
自動車アフターマーケット事業者向けに情報提供を行うARCネットワークサービス(株式会社ジェイシーレゾナンス)では「デントリペア基礎」研修を企画・開催しており、自動車修理事業者を中心に受講者が増えている。

同研修は、デントリペアを複合的に取り入れた修復技術を持つ職人が講師を務め、ヘコミの原理から基礎までを実践的に学べる内容となっている。鈑金塗装の工程にデントリペアを組み込むという実践的な研修内容が、幅広い自動車アフターマーケット事業者のニーズと合致し、参加枠が短期間で埋まる状況となっている。
なお、当編集部は2025年4月に静岡県御殿場市の自動車整備・鈑金塗装事業者で行われた、再塗装を前提としたデントリペア技術の基礎研修を取材した際、これまでの鈑金塗装作業で必要となる様々なコストが削減され、作業スピードが上がり、環境負荷低減にもつながるのではないかと感じた。
省力化・低コスト化への取り組みが加速
シンナーや塗料の安定供給の見通しが立たない中、事業縮小や休業を検討する自動車アフターマーケット事業者が増えることも予想される。そんな中で、省力化・低コスト化の実現に繋がる可能性があるデントリペア技術の習得は、自動車アフターマーケット事業者にとって、今後の事業継続に向けた選択肢の一つではないだろうか。また、資材不足への有効な対策となるだけでなく、供給回復後も作業効率を高める新たな強みとして期待される。


