自賠責保険運用益の「繰入金」返済、来年度も財務省に要求...国交省
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国交省が返済を求めるのは元金に相当する繰入額4848億円と、利子相当額の1266億円の合計6114億円だ。ただ、返済額を明示せず、「繰戻し」という項目だけで財務省に要求する。国交省が財務省に要求する貸付金は、国土交通省が管理していた「自動車安全特別会計」から財務省の「一般会計」に移すため、これを「繰入金」と、その返済を「繰戻し」いう。
この繰入金は税金ではなく、自動車ユーザーの自賠責保険(自動車賠償責任保険)保険料運用益だ。本来はこの運用益をいわゆる基金として、交通事故の後遺障害医療やひき逃げ・無保険車の被害者救済などの自動車事故セーフティネットとして機能させるためにあるが、その基金が貸し付けられているため運用も、ままならない状態だ。そのため自動車関連団体の日本自動車会議所、自動車ユーザー団体のJAF(日本自動車連盟)、交通事故の被害者団体などが、機会あるごとに返済を迫っている。
しかし、期限が迫るたびに、両省大臣間の覚書で最終返済期限が書き換えられて、2000年以降17年間にわたって1円も返済されていない。現在の覚書は、民主党政権時代に馬淵澄夫国交相と野田佳彦財務相で取り交わされたもので、最終期限は2018年度まで。
いわば財務省が抱える“隠れ借金”は、あまりにも大き過ぎて、返済しようにもできない状況まで来ている。来年度の概算要求でみると、例えば国交省の重点要求の1つ海上保安庁関係予算は巡視船、ヘリコプターなどの整備を含めても約2005億円。全国の国道整備などで費消される直轄事業費1兆8236億円と比較しても、その3分の1にあたる。
「そうは言っても、どういう方法でも引き続き繰り戻しを要求していかなければならない」(保障制度参事官室)という。
《中島みなみ》
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