【プロに訊く】音楽ジャンル別・システム構築術&サウンドチューニング術、徹底検証! Part.5「ロック編」
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今週は、福岡県の気鋭ショップ、“スタイリッシュ・サウンズ”の山本さんにお話をお訊きした。サウンドにもルックスにもパンチを効かせることを得意とする山本さんに、“ロック”ならではのユニットの選び方、調整方法を、じっくりと教えていただいた。
■ミッドウーファーには硬くカッチリと鳴るタイプを、トゥイーターにはマイルドなタイプを。
最初に、“ロック”に向いたスピーカーのタイプからお訊きした。
「個人的な趣味で言うと、まずミッドウーファーの振動板素材は、金属系が向いていると思います。または金属系ではないにしても、硬い音色で、カッチリ、パンパン鳴るタイプが良いのではないでしょうか。
対してトゥイーターには、シルクドームを押したいですね。レスポンスの良さを求めたいんです。ミッドウーファーをカッチリと鳴らす分、高域はマイルドな方向でまとめたい。きつくなるのは避けたいんですよ」
なお、こんなスペシャルな方法も教えていただいた。
「少々特殊な形にはなりますが、5インチ(13cm)のミッドウーファーのダブル付けも面白いと思います。音圧を稼ぎたいと思うなら、8インチ(20cm)一発、という選択肢もあるのですが、そこを敢えて小口径にして反応の良さを取り、しかし2発にして量感も確保する、という作戦です。“ロック”では、パワー感とスピード感がキモになります。5インチのダブル付けは、それらを効率的に得るための、理想的な手段の1つです」
さらには、サブウーファーについてもお訊きした。
「基本的にサブウーファーは、ジャンルに関係なく、“ハイ・グレードモデル”をおすすめしたいところです。ローエンドまで伸びるモデルを使いたい。その観点で製品選びをすると、“ハイ・グレードモデル”に行き着きます。もちろんご予算ありきですが、せっかくサブウーファーを導入するのですから、しっかりとローエンドまで再生したいと思うんです。
それにプラスして、“ロック”に必要な要素と言うと…。ここでも、パワー感とレスポンスが重要になりますね。口径的には、“12インチ(30cm)×2発”を押したいです。そして、ボックスは“シールドボックス”で。タイトにキビキビと鳴らそうと思ったら、“シールドボックス”が有利です」
■“バイアンプ”対応の“パッシブ”を使って、アナログ的な風味を加えるのも、アリ。
続いては、チューニング術についてお訊きした。まずは、イコライザーについて。
「自分としてのセオリーでは、イコライザーはなるべく触らないようにしています。耳障りなピークを抑えたり、取り付けで追い込めない部分の補正としては使いますが…。こと“ロック”となると余計に、“素”のままを出すほうが良いと思うんです。ソリッドに、ストレートに音源を再現したいですね」
サブウーファーの調整についてはどうだろう。
「クロスポイントはセオリーどおりに、80Hzから60Hzの間でいいと思います。ポイントとなるのは、フロントスピーカーとの繋がりですね。繋がりを良くするためには、ミニバンのような2BOXタイプのクルマではクロスポイントは高めに、セダンのような3BOXタイプでサブウーファーをトランクに置いている場合にはクロスポイントは低めのほうが、フロントとの繋がりが良いと思います。サブウーファーの音が“前方定位”するかどうかにもっとも注力して、クロスポイントを決めていきます。
レベル(音量)は上げ気味にしたいですね。“ロック”においても、低域にパンチを効かせたいところです。バスドラムをレスポンス良く、そしてドスっと響かせたいですよね」
トゥイーターとミッドウーファーのクロスオーバーに関してはどうだろうか。
「これは使用するユニット、搭載する車種等々で、ケースバイケースです。ただし、音量を上げ気味にして聴くことが多くなるでしょうから、トゥイーターを壊さないように、クロスポイントは下げ過ぎないほうが安心ですね。
敢えて、パッシブクロスオーバーネットワークを使うのも面白いと思っています。“バイアンプ”対応のパッシブならばなお良いですね。パッシブクロスオーバーを使うことで、アナログっぽさを加えられますから、“ロック”を聴くときにさらに味が出てきます。オススメです」
興味深い話がたくさん聞けた。“ロック”好きは、山本さんの話しを大いに参考にして、爽快な“ロック”サウンドを満喫しよう。
さて、5回にわたってお贈りしてきた当特集はいかがだっただろうか。どのようなジャンルの音楽もオールマイティに聴けることが1つの理想ではあるのだが、聴くジャンルがある程度決まっているのなら、それを心地良く聴くための工夫を凝らしてみるのも悪くない。良さを引き出すシステムを構築し、利点が活きてくるチューニングを施して、好きな音楽を思いっきり楽しもう。ぜひ。
《太田祥三》
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