首都高、環2、流通セ、国立…建設ラッシュ東京に見えるそれぞれの“事情”
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羽田空港方面の東京モノレールに乗り、天王洲アイル駅を過ぎたころ、右手に首都高速1号羽田線が寄り添ってくる。羽田線は東品川桟橋・鮫洲埋立部1.7kmで大規模更新工事がすすむ。事業費は912億円で、2026年まで工事が続く予定。
流通センター駅を過ぎるあたりで、左手に大規模な建設工事現場が見えてくる。これは東京団地冷蔵再整備事業のひとつで、“東京の冷蔵庫”といわれた建物の老朽化などにより建替工事がすすんでいる。「2018年に竣工予定。投資額は360億円程度」(東京団地冷蔵)。環七通りの歩道橋からは、トラックなどが行き来する新たなスロープが出現していた。
「冷凍冷蔵倉庫は、冷蔵、冷凍などのフロアのほか、店舗フロアなどもあり断熱の面で工夫がいる」と話すのは、コンストラクションマネジメント(CM)でエージェック代表の作本義就氏。「地上階に売店があって、その上に製造工場があって、上部階に冷凍冷蔵倉庫という複合施設の建造物のCMを担当している。冷蔵倉庫は、工場設備や電気、空調、衛生と、それぞれのフロアで機能や条件がまったく違う。各階で防熱を施すが、実は屋根からの熱がいちばん伝わりやすい」という。
また、今回の東京2020の関連施設にまつわる報道でよく耳にするようになった「設計」「施工」などについて、もともと大手ゼネコンで現場管理を担当していた作本代表はこう教えてくれた。
「まず発注者は建設のことについては素人に近い人たちばかり。たとえば設計事務所に依頼すると、彼らは絵や面積だけ出してきて、予想以上の予算を積んでくる。コストダウンを求めると、彼らは金額を下げるんじゃなくて、面積や建物を小さくしてくる。『うちの利益確保するのはこれくらい』という感覚で入札してくる」
「いっぽうで、ゼネコンはデザイン提案と設計書をいっしょにして出てくる。設計はふわふわ、施工はギュッとというイメージ。設計は絵を描くだけ。ファンドは金しか見てない。建設コストを見る人と発注者の意思を伝える人がいない。そこに、コンストラクションマネジメントが必要でエージェントが要る」
「ゼネコン各社の入札額にはかなりの開きがある。工法や工期が違えども」という作本代表。毎日のようにニュースで報じられている国立競技場問題についても、CMの立場からこうもらしていた。「最初から1社だけで決まっていたことが不思議」と。
《大野雅人》
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