【プロに訊く】「サウンドチューニング心得」パート3 やればやるほど、新しい発見に出会える!
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その主な理由は以下の2点だ。「リスニングポジションが片側に寄っていること」、「反射と吸収の影響で音響特性が乱れること」。これらの悪条件を「サウンドチューニング」機能を使って補いたいわけだが、これがなかなか難しい…。
上手くこれを操るためにはどうするといいのか。その“心得”や“コツ”を、プロに取材してご紹介している。第3回目となる今回は、福井県の実力店「ラ・ルース」の米田さんにご協力いただき、プロがどのように「サウンドチューニング」を実行しているのかをお訊きした。
基本的に「サウンドチューニング」は、プロにお願いするのが一番だ。しかしそれとは別に、自分でもいろいろといじってみると、カーオーディオ・ライフをもっと深く楽しめる。プロのやり方を参考にして、ぜひともトライを。
■一連のチューニングメニューを、数回繰り返して精度を上げていく。
最初に、米田さんが普段、どのような手順で「サウンドチューニング」を実践しているのか、をお訊きした。なお今回は、フロント2ウェイスピーカーとサブウーファーを、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)を使って詳細にコントロールしようとする場合のやり方を訊いている。
米田「初めに暫定的な“ゲイン”と“クロスオーバー”を設定し、その後、“タイムアライメント”、“クロスオーバー”という順に、それぞれを詳細に調整していきます。そしてもう1度、“タイムアライメント”に戻りその後にまた“クロスオーバー”を。これを計3回繰り返します。そしてその後に詳細なゲイン調整を施して、ここまでで、基礎となる調整を完了させます。
その後に、“ジーク”というプロショップ向けの音響測定システムを用いて周波特性の乱れを測定し、“イコライザー”機能を使って乱れを解消させます。
しかしここで終わりではないんです。“タイムアライメント”→“クロスオーバー”→“ゲイン”→“イコライザー”までの調整を、もう2度行います。これでようやく完成です」
このように、一連の調整を繰り返すプロショップは多い。ある項目を調整することで、他の項目にも影響が出るからだ。
ちなみに、“ジーク”とはプロ用の機材なのだが、一般ユーザーの間ではそれに変わるアイテムとして、スマホの周波数測定アプリが使われることもある。言ってしまえば“簡易的”な測定機なのだが、こういったものは使用に耐え得るものなのだろうか。
米田「“簡易的”なものであっても、“イコライザー”調整の参考にはなると思います。使ってみても面白いのではないでしょうか。しかしながら、調整を進めていく上で大事なのは、“位相”です。“イコライザー”に進む前の段階で“位相”をしっかりと合わせておかないと、測定しても意味がなくなってしまうんですよ。“イコライザー”以外の調整機能をしっかりと煮詰めることを、まずは優先していただきたいですね」
■1度完成したものを“壊してみる”と、新たな発見に出会えることも…。
次には、どのような音源を使って調整しているのかをお訊きした。
米田「基礎的な部分を煮詰めていくときには、シンプルな楽器編成のボーカルものとか、フュージョンの音源を使うことが多いですね。調整用の楽曲は、200曲くらいを用意してあって、そのときどきに応じてその中から使いやすいものをチョイスします。調整1項目あたりに、10曲くらいを使っていきますね。
曲ごとで、使用するポイントを決めてあります。この曲のこの部分では低域の鳴り方が確認できるとか、左右の広がり感を確認するにはこの曲のここを、といった感じで。そのときどきで気になる部分が異なりますから、それを直すのに適した曲を選ぶんですよ」
さて、米田さんは多くの工程を踏んで音を仕上げていくタイプなのだが、1台を仕上げるのにどのくらいの時間を要するのだろうか。
米田「ケースバイケースではありますが、時間は結構かけていますね。特に、ベースを作る作業においては、納得がいくまでとことん煮詰めていきます。なんらか違和感を感じるようなときには、その原因がわかるまで探究を続けます。違和感が出てるときには、何かを勘違いしていたり、どこかに必ず理由がありますから」
最後に、どのくらいの経験を積むと、自由自在にコントロールできるようになるのかも訊いてみた。
米田「チューニング技術の習得には終わりがない、と思うんですよね。常に新しい発見がありますから。だからこそ面白いのではないでしょうか。
新たな気づきを得るためには、ときには思い切ったトライも必要です。上手く設定できたシステムをそこからさらに煮詰めようとするとき、多くの方は微修正でそれを行おうとすると思うのですが、そうではなくて、何かを大きく変えてみると面白いんですよ。完成したものを1度壊してみる、というイメージですね。こうすることで新しい何かがつかめたりします。トゥイーターを飛ばしてしまうほど極端なことはしないように気を付けつつ、思い切ったことも、たまにはしてみましょう」
さて、いかがだったろうか。ベテラン・インストーラーである米田さんをもってしても、“終わりがない”と言わしめるほど「サウンドチューニング」は奥深い世界だ。
上手になるためには、いろいろとやってみて、経験則を貯めていく以外に方法はない。これまでご紹介してきたプロの話を参考に、こつこつと、楽しみながら経験を積み上げていこう。
《太田祥三》
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