【IAAE17&ATTT17】若者が希望と誇りを持ち活躍する業界を目指して…ITとタクシーの融合を“タクシー王子”が語る
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◆「タクシーのIT化」アプリに続く第二の柱は「運賃の改革」
近年、目まぐるしく進むタクシーのIT化。それを業界の先頭で牽引する川鍋氏は、この1年の取り組みについて問われ「とにかく必死だった」とその胸の内を明かした。そして「(東京)五輪という大義名分や、ウーバーなどのライドシェアという外圧をうまく活用し、タクシー業界を変えていくのが私がやることだと思っています」とさらなる進化へ向けた意気込みを語った。
アプリで手軽にタクシーを呼ぶことができる「全国タクシー」は、現在ダウンロード数280万以上(2017年2月現在)を誇る人気サービスだ。この導入が第一の柱だったと語る川鍋氏は、第二の柱として「運賃改革」を挙げた。今年1月30日から東京で採用されている初乗り料金の引き下げ(約1キロ410円、以前は2キロ730円)に尽力。初乗り料金が高いという特徴があった日本のタクシーの料金体系を、ニューヨークやロンドンといった都市のスタンダードに合わせ、海外からの旅行者が増える今後を見据えた改革を断行した。
◆後部座席には目的地到着前に支払いを完了できるタブレットを搭載
そして今目指しているのが、今年3月1日にリリースした「全国タクシー」の新機能「JapanTaxi Wallet(ジャパン・タクシー・ウォレット)」の普及だ。これは後部座席にタブレットを搭載し、アプリと連動して到着前に料金の支払い手続きができるシステム。クレジットカードや電子決済で支払うため、降車時に現金を数えて…といった煩わしさが解消する。また小銭を使用しなくてよいため、海外からの旅行者に対しても有効なサービスといえる。コスト面の問題も、デジタルサイネージとして広告収入を得て、運用コストをまかなうことでクリア。基本的に無料で搭載することができるため、会社やドライバーへの負担がほぼ無いのも導入を促進する好材料となる。
そしてここから、運賃の価格設定に関して3人のトークは白熱。神尾氏は、料金を電子決済やクレジットカードで支払う場合、現金払いよりも安い価格設定にすることを提案。電子決済はオペレーションコストが下がり、さらに1円単位での支払いが簡単になるなどのメリットがある。JRの運賃はSuicaなど電子マネー使用時には、現金で支払う場合よりも安くなるという例を引き合いに出し、持論を展開した。また夏野氏も「現金の場合は初乗り料金を500円にして、その後100円刻みで加算というのをぜひやって欲しい。10円刻みは電子マネーだけにするとか」と具体案を提示。川鍋氏も現金支払いのためにコストがかかっている現状があることなどから「すごいヒントをいただいた。さっそくどういう方法があるか考えたい」と同調した。
◆トヨタ自動車が開発した次世代タクシー
車内のテクノロジー改革の話に続き、後半は車両がテーマとなった。話題の中心は、トヨタ自動車が開発した次世代型タクシー(JPN TAXI)についてだ。見た目はハイトワゴンのような出で立ちで、これまでのタクシーのイメージを一新。機能はタクシー業界の声が大きく反映され、広い車内には車イスが乗せられ、エアコンは運転手だけでなく乗客も管理できるなどの工夫がされている。また自動ブレーキが搭載されることや、LPガスのハイブリッド車になっているなど、年間で10万キロとも言われる長距離を走るタクシーにとって、有効な仕様になっている。
たまたま、現在自らが代表取締役社長を務める会社「Japan Taxi」と同じ名前が付けられた車両について川鍋氏は、「今年10月からロンドンタクシーのような車両が走り出します。人数は4人乗りで変わらないですけど、車内が広く、窓も多い。荷物もたくさん乗せることができ、体感で倍以上の広さが感じられる」とその快適性を説明。「価格は高いが東京都にかけあい多額の予算も頂いた。2020年までには3台に1台(1万台程度)が必ずこの車両になります」と熱っぽい口調で語る自慢の“新型車”だ。
また「タクシーメーターをハード面じゃなくてソフト面にして欲しいと規制改革推進会議にお願いしているところ。すべてアプリにする。GPSの情報だと多少(料金が)ずれるので車載からの情報で構成する。もしくは準天頂衛星システムを何とか使わせていただけないかと考えている」と最新の動向も明かした。
◆若者が誇りを持って活躍できる業界にするため奮闘
この他にもタクシーの定額制に関する構想や、規制面といった業界が抱える課題なども語られた。すべての話を受け夏野氏は「今はタクシー業界が変わるために、とてもいい時期。五輪に合わせて、できるだけのことをやろうという機運が、政・官・民すべてにある。ぜひ川鍋さんに頑張っていただきたい」と、引き続きキーマンとして活躍が期待される人物にエールを送った。
そして、最後に神尾氏から「若いドライバーが希望と誇りを持って入れる業界にして欲しい」という要望を受けた川鍋氏は、「今年の4月に当社は104人、東京でいうと300人位の新卒ドライバーが入ってきます。嬉しいのは当社は(新卒採用を)始めて5年になるんですが、ほかの会社もやり始めてくれた」と人材採用の仕組みがこれまでとは変わりつつあると説明。そして「離職率も10%代と低く、平均年収は東京で460万円。1日1回は外国人、高齢者を乗せ、社会貢献をしているというのを実感できる。直接お客様に『ありがとう』と言われる尊い職業なので、頑張ります」とその魅力を語った。
IT化や次世代車両の登場は、業界のイメージ向上や若者をはじめとした人材の確保などに必ず繋がっていくことだろう。国内外問わず、みんなが使いやすいタクシーを目指し、王子の奮闘はこれからも続く。
《編集部》
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