【プロショップ直伝!】フロントスピーカー攻略法! Part.4「“パッシブ”か“マルチ”か」
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なお今回は、広島県の実力ショップ、“M.E.I.”の山本さんに講師役をお願いし、それぞれのメリット・デメリット、そして運用時においてのコツまでを、じっくりと教えていただいた。
■“パッシブ”と“マルチ”の、意味を知るベシ。
まずは、基本事項を整理しておきたい。“パッシブ”と“マルチ”とは、それぞれ何なのか…。
この2つはともに、システムの名称としても使われている。そしてこの2つのシステムは、音楽信号の帯域分割をどこで行うか、この点が大きな差異ポイントとなっている。
ところでフロントスピーカーがセパレート2ウェイだったとき、トゥイーターには高域の信号だけを送り、ミッドウーファーには中・低音の信号だけを送りたいのだが、それをするにあたっては、どこかで音楽信号を帯域分割しなければならない。
それを、パワーアンプの後段で“パッシブクロスオーバーネットワーク”で行うシステムのことが“パッシブ”と呼ばれ、パワーアンプの前段で“デジタル・シグナル・プロセッサー(DSP)”で行うシステムのことが、“マルチ(マルチアンプシステム)”と呼ばれているのである。
なお、“マルチアンプシステム”では、帯域分割をした後にそれぞれの信号を個別に増幅しなくてはならず、そのためにはパワーアンプのchが、トゥイーター用、ミッドウーファー用と、それぞれ専用に必要になる。
ひとまず基本事項は以上だ。それでは本題に入っていこう。最初に、“パッシブ”の利点からお聞きした。
山本「“パッシブ”の利点は、パワーアンプのch数が少なくてすむことですね。結果、コストも抑えられますし、インストールにおいても省スペース化が図れます。あと、中級以上のスピーカーともなれば、付属の“パッシブクロスオーバーネットワーク”にも高品位なパーツが使われていますから、“パッシブ”を通した音色もそのスピーカーの個性となって現れます。“パッシブ”を使って鳴らすと、そういった部分も楽しめるんですよ。
■“パッシブ”においては特に、物理的なチューニングを追い込みたい。
続いては、“パッシブ”を使って鳴らすときのコツをお聞きした。
山本「トゥイーターとミッドウーファーに対して、個別に“タイムアライメント”をかけることができませんので、取り付ける段階でできるだけ、トゥイーターとミッドウーファーの距離差がないようにしたいところです。それが実現できれば、簡易的な“タイムアライメント”機能であっても(トゥイーターとミッドウーファーを個別にコントロールできない場合でも)、ステレオイメージを上手に再現することが可能になります。
また、トゥイーターの角度決めもよりシビアに行いたいですね。“クロスオーバー”調整や、トゥイーターとミッドウーファーの個別の“レベル調整”が行えませんから、音を出してミッドウーファーとのバランスを確認しながら、厳密に角度を割り出したいです。
なお、ダッシュが深い車種の場合は、トゥイーターをできるだけ奥まった位置に付けたほうが、ステージの奥行き感を出しやすいと思います。ミッドウーファーとの距離差が開かない範囲の中で、できるだけ奥に付けたいですね。
とにもかくにも、サウンドチューニング機能で細かく追い込めないわけですから、取り付け上で行える物理的なチューニングを、可能な限り丁寧に煮詰めたいですね」
■詳細なコントロールが可能になること、余裕を持って鳴らせること、以上が“マルチ”の利点。
続いては、“マルチ”の利点をお聞きした。
山本「“マルチ”では、サウンドチューニング機能を詳細に適用できることが第一のメリットです。カーオーディオでは、車種によって、さらには取り付ける条件によって、都度、状況が変化します。ですのでできることならば、“クロスオーバー”も調整したいですし、トゥイーター、ミッドウーファーそれぞれのレベル調整もしたいところなんですね。“マルチ”であれば、それらを自在にコントロールすることが可能となります。
そして、1つのスピーカーにパワーアンプの1chをあてがうわけですので、それぞれのスピーカーを、より余裕を持って駆動することができるんです。振動板を動かすこと、止めること、それぞれをより確実に行えます。このことは、音に相当に効いてきます。
ところで、“パッシブ”で鳴らす場合にも、その“パッシブ”がバイアンプ対応になっていたなら、それを活用することによって、トゥイーターとミッドウーファーを“マルチ”的に運用することも可能になります。“パッシブ”がバイアンプ対応だったなら、ぜひ、バイアンプでも鳴らしてみていただきたいですね。同じスピーカーとは思えないほど、ガラッと音が良くなりますから」
■自分にあった“DSP”を選ぶことが、もっとも肝心。
最後に、“マルチ”で鳴らす場合のコツをお聞きした。
山本「“マルチ”で鳴らすには、それを可能とする“DSP”が必要となります。選択肢は3つ。1つは、優秀な“DSP”を内蔵したメインユニットを導入すること、2つ目はパワーアンプ内蔵の“DSP”を導入すること、3つ目は、単体の“DSP”を導入すること、以上です。
この中で、最近、支持率が高まっているのが、パワーアンプ内蔵の“DSP”を導入する作戦ですね。これならば、リーズナブルに“DSP”と外部パワーアンプの両方をシステムに加えられますし、インストールスペースも最小ですみます。シート下に装着可能なモデルも多いですよね。それでいてコントロール能力は、ハイエンド仕様の“単体DSP”と比べて遜色ないモデルが多く、外部パワーアンプの性能もあなどれません。
なお、ダイヤトーンの『サウンドナビ』も面白い存在です。当機は唯一、“パッシブ”システムに対しても、トゥイーターとミッドウーファーを個別にコントロール可能なんですよ。“サウンドナビ”は内蔵パワーアンプの性能も高いですから、ナビだけでシステムを完結させたい方には、特にこれをお薦めしたいですね。本格システムにも対応可能ですし。
また、本格的にシステムを発展させたいと思うのでしたら、“単体DSP”が良いですね。パワーアンプも自由に組み合わせられますから、後々のステップアップも自由自在に楽しめます」
山本さんからお訊きした話は以上だ。“パッシブ”と“マルチ”には、それぞれに楽しみどころがある。一気に“マルチ”システムを組むのも良いのだが、段階を経てそれぞれを楽しむと、何度も感動を味わえる。ご参考にしていただけたら幸いだ。
さて、次回もさらにディープにフロントスピーカーの攻略法を解説していく予定だ。次回以降の当特集も、お読み逃しなきように。
《太田祥三》
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