“空気のいらないタイヤ” 話題の「ノアイア」を公開…東洋ゴム
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東洋ゴム工業(兵庫県伊丹市)は9月8日、新開発・空気充填不要タイヤ「noair(ノアイア)」の概要説明会を、大阪市内で開催。実際に市販車に装着させての試乗会も実施した。
2006年からエアレスタイヤの研究に取り組んできた同社は、初期型(2006年)、パンタグラフ型(2006年)、Y型スポーク(2007年)、楕円形スポーク(2009年)といった5世代にわたる試作モデルを経て、今回第6世代となるノアイアの発表にこぎつけた。
説明会には技術統括部門 技術第一本部の守屋学本部長、同中央研究所の下村哲生所長、同タイヤ先行開発部の大石克敏部長、中央研究所第二研究部の井関清治氏、同タイヤ先行技術開発部の柏原直人氏らが登壇。近未来型エアレスコンセプトタイヤの概要について説明した。
◆外形と内径を特殊樹脂製X字スポークで結ぶ
ノアイアの最大の特徴は、ホイールとトレッド(路面接地表面)の間を、高剛性特殊樹脂スポークで結ぶ骨格構造にある。これまで空気圧で支えていた部分を、このスポークが担う格好で、荷重を支持する力を確保するとともに、外側の路面に接するトレッド部分にゴム部材を採用することで「走る、曲がる、止まる」というタイヤの基本性能を成立させたという。
スポークとトレッドゴムの間には樹脂で構成する外径リングの内部にカーボン繊維強化プラスチック(CFRP)を採用し、補強。スポークにかかる荷重を低減させた。
◆軽量化を図り転がり抵抗や騒音も大幅改善
第5世代までの試作モデルには、ホイールとの接点にあたる内径リングと、トレッドゴムと接する外形リングの間に「中間リング」が存在したが、この第6世代ノアイアでその中間リングを解消。スポークの数を増やすことで接地圧を分散させ、打撃音の軽減も図った。
これまでの楕円形スポークモデルが8.5kgだったのに対し、こちらのX字形スポークのノアイアは、7.8kg。さらに軽くなったが、これでもまだ市販の空気入りタイヤの5.5kgよりも重い。
転がり抵抗値は、楕円形より半分以下、空気入りタイヤよりも25%向上。車外騒音も楕円形から大幅改善し+1dBへと進化させた。
◆アルトとFOMMに装着し試乗
ノアイア説明会では、ノアイアを装着したスズキ『アルト』とFOMM『超小型電気自動車』(インホイールモーター)の試乗会も行われ、実用化へ向けた課題やイメージを伝えた。
実際に乗ってみると、同社が「車内音と乗り心地において課題が残る」と伝えているように、走り出した瞬間にアスファルトの路面凹凸を素直に拾うのがはっきりとわかる。逆に、空気入りタイヤのエアが、こうした小さな衝撃を吸収していたと再認識させられるほど。
「現状では最高80km/hまで試験走行を行った」というノアイア。ゴロゴロ感は感じながらも、直進性や制動性、旋回性といった走る・曲がる・止まるの基本性能は、空気入りタイヤに近づいている。「その硬さのせいか、ハンドリングはきったぶん曲がるという感じで、クイックな感じも体感的にある」とドライバーは話していた。
タイヤのパンクやバーストといった不安から解消されるいっぽうで、「まだまだ、実用化に向けて解決すべき課題はある」と付け加えるノアイア開発陣は、最後にこう伝えていた。
「EVやコンパクトカーなどが、今後のモビリティ市場で多くを占めるようになると、メンテナンスフリーという面のニーズも同時に高まってくる。安全性の面からも、パンクやバーストなどのトラブルから解消されたいという期待も高まっている。こうした近未来に、ノアイアのようなエアレスタイヤが存在価値の高いプロダクトになると思っている」(同社)
東洋ゴム、エアレスタイヤ最新モデル「ノアイア」を公開…試乗で体感したクルマの近未来
《大野雅人》
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