【岩貞るみこの人道車医】「大人用シートベルト着用では、安全につながらない」が語る本当の意味 | CAR CARE PLUS

【岩貞るみこの人道車医】「大人用シートベルト着用では、安全につながらない」が語る本当の意味

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「大人用シートベルト着用では、安全につながらない」が語る本当の意味とは。(写真:ボルボ)
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【人】「違うだろー、違うだろ!」

思わず叫んでしまった。9月14日に警察庁が発表した「平成29年上半期における交通死亡事故の特徴等について」の「対策」部分を読んでである。今回は、秋の交通安全運動を見据えた詳細分析として、

1)シートベルト着用状況
2)チャイルドシート使用状況
3)薄暮時間帯・夜間における死亡事故

この3つが行われた。2番目に書かれているチャイルドシート使用状況。これまで、装着率や、装着の有無による怪我や死亡のデータは出してきた。しかし今回は、さらに分析結果として、

「抱っこや大人用シートベルト着用では安全にはつながらない」

という結論を、初めて公に語ってくれたのである。そうだ、そのとおり! やっと行動に出てくれたか、警察庁! 抱っこはもちろんのこと、背の低い子どもたちに大人用のシートベルトをかけたって、柔らかい首や腹部にかかり、このまま衝突したらシートベルトが凶器と化して頸椎損傷&内臓破裂である。だからこそ、「6歳」という年齢にかかわらず、大人用のシートベルトが適用できない身長140cm以下(※)の子どもたちには、学童用のジュニアシートに座らせて腰の位置を上げ、

・腹のベルトが、腰骨にかかるように
・ナナメベルトが、首にかからず鎖骨の真ん中を通るように

使う必要があるのである。「抱っこや大人用シートベルト着用では安全にはつながらない」。この一言は、やっと言ってくれたかと感涙ものである。

※適応身長は車両によって異なるため、取り扱い説明書等で確認のこと。また、子どもによって同じ身長でも座高が異なるため、シートベルトが首にかかっていないか個々に対応が必要。

◆「大人用シートベルト着用では、安全につながらない」が語る本当の意味

そして、期待に胸を躍らせながら、それに続く「対策」部分の文章を見た。しかしそこには、

「国の安全基準への適合が確認されたチャイルドシートを適正に使用するよう指導」

……違う。いや、国の安全基準への適合が確認されたチャイルドシートを使おうという部分は違わない。現在、ドライバーの違反逃れにしか使えない安いチャイルドシートが通販で売られており、対策に追われているところだからだ。私が「違うだろー!」と叫んだのは、6歳以上の子どもたちにまったく触れられていないということだ。

警察庁はとっくのとうに気づいているはずだ。「大人用シートベルト着用では、安全につながらない」が語る本当の意味を。6歳になったって、大人用のシートベルトがそのまま適応する子どもなんてほとんどいないってことを。先に始めた「高速道路では、全員、シートベルト装着義務」の道交法が、6歳以上、身長140cm以下の子どもたちの安全なんて、まったく確保していないってことを。彼らは、道交法的にまったく守られておらず、ひいては、保護者にその危険性がしっかりと伝わっていないということを。

1日も早く「身長140cm以下」に

ドクターヘリの取材をきっかけに、全国の救命医とのつながりを持つことができ、車内の子どもの現状をいやというほど知らされた。データとして上がってはこないけれど、大人用のシートベルトで、ケガをした子どもたちのなんと多いことか。ある救命医は「ケガをすると知っていながらチャイルドシートを使わない保護者は、児童虐待で通報したい」とまで言っている。

こうした実情を、警察庁に伝えても「数字がない」を理由に、請け合ってもらえない日々が続いていたけれど、今回、やっと「大人用シートベルト着用では、安全につながらない」とまで公に発言してくれたことに、重い石が動いた気がする。あとは、対策である。今回は「違うだろ!」と期待はずれ程度の対策案しか示されなかったけれど、いまある「6歳未満に着用義務」という道交法を、1日も早く、「身長140cm以下」と改正してくれるよう、願っている。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。

《岩貞るみこ》

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