【インタビュー】クルマを愛する人に「ショックアブソーバ交換」のススメ…KYB
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◆ハンドリングを改善したい、長く乗りたいに応えるKYB
KYBエンジニアリングアンドサービス 自動車機器事業部 事業企画部 課長 照井生真氏は、
「最近のクルマは、ハイブリッドや電子制御など、安全、高性能だが自分が思ったとおりの動きをしてくれないというユーザーからの声も聞かれます。運転して楽しいクルマとは、思い通りに動いてくれるクルマではないでしょうか。
KYBでは、アクセル操作やステアリング操作に対してもっと素早く、リニアに反応してほしい。あるいは、このクルマは気に入っているので長く乗りたい。そんなユーザーに向け、チューニングとメンテナンスを合わせた提案として、ショックアブソーバ製品をPRしています」
と語る。
操作に対してクイックであるとかダル(緩慢)であるとかは、エンジン特性だけで決まるものではない。シャシーやボディ剛性からサスペンション、タイヤなどたくさんの要素が関連する。高い走行性能を追求するため、これらのコンポーネントやパーツをチューニングしていくわけだが、じつはショックアブソーバは、走る、曲がる、止まるといった基本性能のすべてかかわるチューニングパーツだ。もちろん乗り心地や安定感といったフィーリング面でも影響が大きい。
◆ショックアブソーバは走行性能の要
とくにレスポンスを高めたい、走行性能を高めたいと思ったら、エンジンやマフラーやタイヤはそのままでもショックアブソーバは交換するだけで、動きの違いが簡単に体験できるパーツでもある。簡単に説明すれば、衝撃や振動を吸収するのがショックアブソーバの役目なので、アクセル、ブレーキ、ステアリングのちょっとした操作の反応速度はすべてこの部品にかかっている。
アクセル操作によるトルク変化やGの変化を、余計な振動や動きを抑えてダイレクトにタイヤに伝える。ブレーキング時にノーズダイブより減速Gを強く発生させる、コーナリングやレーンチェンジのモーメント(慣性)をグリップとトラクションにロスなく変化させる、といった特性は、ショックアブソーバの動きで制御可能だ。
ただ、反応を良くするとゴツゴツした感じや突き上げ感から乗り心地が悪化する。しかし、乗り心地と走行性能をバランスさせるのもショックアブソーバの役割のひとつだ。
KYBでは『NEW SR Reborn』として展示していた製品が、まさにこの走行性能と乗り心地をバランスさせたショックアブソーバだという。とくに乗り心地については助手席や後席のことも考えて車種ごとのチューニングを施しているそうだ。セダン、スポーツタイプ、コンパクト、ミニバンなど車種やモデルごとに減衰力特性をセッティングできるのも、世界中のメーカーにOEM供給しているKYBならではだろう。
走行性能の向上、ハンドリング改善のためにタイヤを交換するのは一般的だが、同じようにショックアブソーバも交換・チューニングの対象と考えたい。もちろん、本格的にチューニングを考えているユーザーならショック交換は常識の範囲だが、照井氏のいう「思ったとおりに動いてくれるクルマ」は、ショックアブソーバのチューニングが不可欠ということだ。
◆競技・OEMで鍛えた絶大の品質
競技用パーツで目を引くのは、TEAM JAOSの『ハイラックス』用ショックアブソーバと全日本ラリー『DS3-R3-MAX』(R車両)用のショックアブソーバだろう。
前者は、オイルが入っている別タンクが一般乗用車用のショックアブソーバくらいのサイズがあり、太いステンメッシュチューブでつながれている。クロスカントリーラリー用でストロークの長いオフロード4WDなので、ダンパ本体も別タンク以上に巨大だ。
このショックに匹敵する大きさなのがDS3-R3-MAX用のトリプルチューブショックアブソーバだ。競技用の足回りだとしても、よく乗用車に収まっていたものだと感じるほど大きい。3層のシェルで構成されており強靭な剛性及び耐久性をもっており、全日本ラリーにて、2年間通してトラブルフリーだったという。その間に車両のクラッシュが発生しているが、このショックアブソーバは無傷でその後も使ったそうだ。
筆者もダートトライアルでKYBのショックアブソーバを愛用していたが、なぜKYBのショックはこれほど頑丈なのか。事業企画部 技術グループ 柴田究悟氏によれば、
「やはりオイルシールですね。ショックでよくあるトラブルはオイル漏れです。KYBでは自動車はもちろんの事、2輪車やトラック・油圧ショベルなどの重機や過酷な競技用パーツまで、あらゆる条件での開発、OEM供給の実績があり、オイル漏れは絶対に出してはならないものとして製品開発をしています。
車は時によっては危険な乗り物です、余りに身近に有るため忘れがちですが仮にショックアブソーバが壊れたら、操作不能となり自分や家族、はたまた通行人などが危険にさらされます。KYBの市販品はカーメーカーに収める製品と同じ基準で“品質評価”“耐久試験”を行っており、基準から外れるものは決してリリースされることはありません。安心安全なKYB製品を選んでいただきたい」とのことだ。
通常のショックアブソーバの交換目安について、柴田氏は「オイル漏れやにじみがでたら交換です。走行距離5万キロもしくはタイヤ交換2回目あたりで、一度ショックも見てもらったほうがいいでしょう」と説明してくれた。
じつはKYB製品は、車高調整式の製品も多いが、純正形状のショックアブソーバにもこだわりがある。これはOEMが多いからというのではなく、フレームやシャシー、サスペンション方式まで改造しないなら、純正形状のほうがトータルの性能が高くなるからだ。減衰力だけ調整しても、純正設計のサスペンションジオメトリ―や取り付け位置、コイルスプリングの動きを変えてしまっては性能を落とすことになる。
◆海外でのKYBブランド
チューニング用のショックアブソーバとしては、ビルシュタインやザックスのようなブランドも有名だが、グローバルで見た場合、KYBもこれらに匹敵する。英語で「Shock Absorber」関連の検索をしてみると、ランキングや検索上位にKYB製品がヒットするのは珍しくない。
海外ではピックアップトラックやSUVの人気が高いが、ラリー、クロスカントリー以外のカテゴリーでもKYBを目にすることは多い。最後にKYBの海外市場についても話を聞いた。
「海外でもチューニングパーツとしての評価は高いと自負していますが、グローバルでは補修部品の市場が大きいですね。KYBの補修用ショックアブソーバは年間で約2000万本販売されています。グローバルでは6秒に1台がKYB製ショックアブソーバに交換している計算です。日本だとあまり感じませんが、海外の道路状況は日本より悪く、より消耗品としての位置付けが高いようです」。
こう語るのは KYB オートモーティブコンポ―ネンツ事業本部 市販統轄部 市販営業部 林太郎氏。国によっては中古車の市場が大きく、古い年式の車両も多い。世界中のメーカーにOEM供給しているKYBのショックアブソーバは、各国のニーズにも合わせられる。
なお、KYBには世界中のアフターマーケットから新しい車種用ショックアブソーバの開発要求が年間1000件といった単位で寄せられるという。車種やモデルを整理しておよそ500種を製品化しているそうだ。
KYBのホームページはこちら
クルマを愛する人に、ショックアブソーバ交換の提案…東京オートサロンで KYB に聞いた
《中尾真二》
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