【カーオーディオ・マニア】外部パワーアンプ導入で「マルチアンプシステム」の有効性とは? | CAR CARE PLUS

【カーオーディオ・マニア】外部パワーアンプ導入で「マルチアンプシステム」の有効性とは?

特集記事 コラム
パワーアンプの一例。カロッツェリアX・RS-A09X。
パワーアンプの一例。カロッツェリアX・RS-A09X。 全 1 枚 拡大写真
もしも「スピーカー交換」をしたのなら、次には「外部パワーアンプ」の導入を検討しよう。それを実行することで、システムのサウンドクオリティは、1グレードも2グレードも向上していく。当特集では、その具体的な楽しみ方を1つ1つ紹介している。

今回はその第5回目として、“マルチアンプシステム”をテーマにお贈りしていく。


■コストはかかるが、その分の音質向上が確実に見込める。

まずは、“マルチアンプシステム”とは何なのか、から解説していこう。ひと言で言うならば、「スピーカーユニット1つ1つに、パワーアンプの1chずつをあてがうシステム」ということになる。

シンプルなカーオーディオシステムでは、フロント2ウェイスピーカーを鳴らすのに、右スピーカー用に「パワーアンプ」の1chを、左スピーカーにも「パワーアンプ」の1chがあてがわれる。スピーカーユニットは左右のツイーター、左右のミッドウーファーと計4つあるが、パワーアンプは2chあればOKだ。

それに対して、“マルチアンプシステム”では、「パワーアンプ」が4ch必要になる。その分、システムは巨大化することとなるが、音質は確実に向上する。「パワーアンプ」の1chずつで個々のスピーカーユニットをダイレクトに駆動させられるので、スピーカーの振動板を動かすのも止めるのも、効率的に行えるようになるからだ。こうすることで、同じスピーカーとは思えないほど、音質は確実に向上する。コストがかかることはダテではないのだ。

なお、“マルチアンプシステム”を組むためには、1つの決まりごとが発生する。それは、「パワーアンプの前段で“クロスオーバー”をかける」というものだ。通常のシステムでは、「パワーアンプ」で増幅された音楽信号を「パッシブクロスオーバーネットワーク」で受け、その中で“クロスオーバー(信号の帯域分割)”が行われるのだが、“マルチアンプシステム”では、音楽信号を「パワーアンプ」に送り込む前に、“クロスオーバー”を完了しなくてはならないのである。


■“マルチアンプシステム”を組むことで、より詳細なスピーカー制御が可能となる…。

ちなみに、前々回に解説したように、「パワーアンプ」に内蔵されている“クロスオーバー”機能を活用すれば、“マルチアンプシステム”の構築が可能となる。そうすることで、個別のchで個々のスピーカーを鳴らすという利得を味わえる。

しかしながら現代カーオーディオでは、別のやり方が取られることのほうが多い。それは、「DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)を使う」というものだ。

「DSP」には“クロスオーバー”機能のみならず、他のコントロール機能も搭載されている。それを「パワーアンプ」の前段に入れ、そこで音楽信号の帯域分割をした上でさらに、その他の制御項目も適用させる、という手法が取られることが多くなっているのだ。

現代カーオーディオで“マルチアンプシステム”が多用されるのは、むしろこのためだ。1つのスピーカーユニットに個別の「パワーアンプ」のchをあてがうことで得られるメリット以上に、各スピーカーを個別に制御できることによって得られるメリットが重んじられているのである。

“クロスオーバー”以外のチューニング項目とは、“イコライザー”と“タイムアライメント”だ。特に、各スピーカーユニット1つ1つに“タイムアライメント”がかけられることで得られるメリットが大きい。クルマの中では、ツィーターとミッドウーファーの取り付け位置が離れることは避け難く、そしてそれによって弊害も生まれてしまう。ステレオイメージを感じ取りづらくなるのだ。しかし“タイムアライメント”を各スピーカーに個別に運用できるようになると、“すべてのスピーカーから等距離の場所にいるかのような状況”を作り出せる。近くにあるスピーカーの音を発するタイミングに遅延をかけられるからだ。


■「外部パワーアンプ」を使う“マルチアンプシステム”にも、さまざまなやり方が存在している。

なお、ハイエンドメインユニットを使えば、ハイエンドメインユニットの「内蔵パワーアンプ」を活用した“マルチアンプシステム”が構築できる。であるので、“マルチアンプシステム”を手軽に楽しむために、詳細な信号制御も可能なハイエンドメインユニットを導入してもいい。しかしながら、究極を極めようと思うなら、別の選択肢が浮上する。「ハイエンドメインユニット」+「外部パワーアンプ」というシステム構成を取るか、もしくは、「単体DSP」+「外部パワーアンプ」というシステムレイアウトを取るか、このいずれかとなる。

なお、これらを実践するにあたっても、いろいろなアプローチが考えられる。”フロント2ウェイ”の場合で、そのいろいろを紹介していこう。

もっともスタンダードなアプローチは、4chパワーアンプを1台用意する、という方法だ。この方法では、シンプルであるがゆえのメリットを享受できる。“インストールスペースが最小ですむこと”と、各chのコンディションが同一であるのでその分、“コントロールしやすくなる”ことがメリットとなる。

対して、2chパワーアンプを2台用意する、という手もある。そしてこの方法にも、2つのやり方が存在している。1つは、ツィーターに1台、ミッドウーファーに1台の「パワーアンプ」をあてがう、というやり方だ。

このとき、それぞれに異なった「パワーアンプ」を用意する、というのもアリだ。例えば、ミッドウーファーにはよりパワーがかけられるモデルを用意する、というのも面白い。

もう1つは、左右で別の「パワーアンプ」を使う、というやり方だ。この方法では、左右のchセパレーションが上がる、というメリットが得られる。

さらには、「モノラルパワーアンプを4台用意する」というやり方もある。こうすることでchセパレーションはさらに向上する。コストの面でもコントロールの面でも難易度は上がるが、上手く運用できればそれに見合った結果が得られる。究極を目指そうとするならば、トライする価値は大きい。

今回は以上で終了だ。次回もさらに、「外部パワーアンプ」の使い方に関する考察を続けていく。乞うご期待。

「外部パワーアンプ」の使いこなし術を徹底解説! 第5回 “マルチアンプシステム”攻略法

《太田祥三》

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