車検における前照灯(ヘッドライト)検査が、今年の8月から原則的にロービーム計測に切り替わる。 この変更により、これまで光量不足や黄ばみ、汚れがあり、ロービーム検査がNGでもハイビーム検査で車検をパスしていたクルマが車検を通らなくなることが予想される。
そこで今回は、車検におけるヘッドライト検査が変更される背景やその注意点、ヘッドライトの黄ばみなどのメンテナンスについてまとめた。
愛車のヘッドライトメンテナンスの重要性
車検では車の安全性を確保するためにさまざまな項目が検査され、一定の基準を満たしているか否かが判断される。その項目の中には、ヘッドライトの検査もあり、ヘッドライトの光量と光軸が検査される。簡単に言えば、適正な明るさで適正な向きにライトが照らされているかが確認されるのだ。
ライトが切れていると車検に通らないのはもちろん、ライトの向きがずれていても車検には通らない。つまり“ライトさえ点灯すれば良い”わけではないことをまずは理解しておこう。またライトが適正な明るさであっても、ヘッドライトの黄ばみや汚れ、曇りがひどい場合、光量不足で車検に通らない可能性もある。その意味で日頃からの愛車のヘッドライトメンテナンスはとても重要と言える。
ちなみに道路運送車両の保安基準第32条では、ハイビームについて「夜間に自動車の前方にある交通上の障害物を確認できるものとして、灯光の色、明るさ等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない」とされ、ロービームについても同様に、色や明るさの基準を満たすことが規定されている。具体的な性能の基準は下記の通り。
今年8月から厳格化されるヘッドライトの検査方法
現在の前照灯(ヘッドライト)の車検基準(光軸、光量、色)が変更されたのは2015年である。しかし、その変更後に検査に時間がかかったり、誤判定する例が続出したことから、国土交通省は急遽、ロービームでの測定が困難だったり、測定値に異常が出るなどした場合に限り、当面はハイビームでも合否判定するよう車検場に通知し、2016年6月から“過渡期の取り扱い”を認めてきた経緯がある。
その後、2018年6月からは、ロービーム検査がうまくいかない車両をすべてハイビーム検査には回さずに、一定の条件に該当する場合のみを「計測困難」と判断してハイビーム検査を認めるように取り扱いを修正。そしてこのほど、2018年のロービーム測定での周知開始から5年が経過したことと、指定整備工場を含めて検査機器の改修や更新が進み、ロービームを円滑に検査できる体制が整ったとして、2024年8月1日以降、この“過渡期の取り扱い”が廃止となるのだ。
既に北海道など一部地域では、この“過渡期の取り扱い”の見直しが順次行われているが、2024年8月1日以降の車検では、対象となるクルマの前照灯(ヘッドライト)の検査について、全車ロービーム計測のみで基準に適合しているか否かが検査され、ロービーム計測で基準不適合の場合、ハイビーム計測は行われなくなる。
なお、対象の自動車は1998年(平成10年)9月1日以降に製作された自動車(二輪車、側車付二輪車、大型特殊自動車 及びトレーラを除く)で、1998年(平成10年)8月31日以前の製作車はこれまで通りハイビームで検査が継続される。
気になるヘッドライトの「黄ばみ」…その原因と対策は?
最近のヘッドライトの素材は、ガラスではなく「ポリカーボネート」と呼ばれる樹脂素材が多く使われている。この樹脂素材が使用されるようになった背景には、ガラスよりも頑丈で、万が一割れた場合でも破片が飛び散りにくく、製造コストが抑えられるということがあるのだが、その半面、樹脂素材の特徴として、紫外線に弱く、キズが付きやすいという点がある。
そこで、そのデメリットをカバーするために、表面にコーティングが行われていることが多いのだが、長い間、紫外線にさらされるなど経年劣化によって表面のコーティングがはがれてくると、走行中の小キズやコーティング剤の焼き付き、劣化などでいつしか黄ばみが生じてしまう。 最近では、カー用品店などで黄ばみを落とすクリーナーや溶剤などが販売されているので、応急処置的に使用するのも一つの選択肢と言えるが、黄ばみの原因に完全に対処する方法とは言えないため、ひどい場合は、プロユースの製品や整備工場などプロの施工に任せるのが安心と言えるだろう。
車検を通すことに限らず、昨今のクルマの保有の長期化を背景に、ヘッドライト磨きや黄ばみ取りのニーズは高まっており、整備工場や、ディテイリングショップなどでは本格的な施工サービスが提供されているので、一度調べてみてはいかがだろうか。