【スピーカー交換にトライ】トヨタ プリウス に FOCAL の車種専用モデルを付けてみた
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音の出口であるスピーカーのクオリティを上げることで、聴こえてくる音の質を大きく改善することができるのだ。その効果を、実際に「スピーカー交換」を行って確認してきた。今回のテスト車両は「トヨタ・プリウス」。それに「FOCAL」の“車種専用モデル”を換装したリポートを、詳細にお伝えしていく。
■純正スピーカーのトゥイーターは何故か、高域再生を苦手とする“コーン型”…。
まずは、「トヨタ・プリウス」の純正スピーカーがどのような構成になっているかを確認した。「トヨタ・プリウス」では、中低音を再生する16.5cmクラスのスピーカー(ミッドウーファー)がドアに、高音を再生するスピーカー(トゥイーター)がダッシュボード内にそれぞれ装着されていた。
なおトゥイーターは、“コーン型”となっていた。ちなみに市販スピーカーのトゥイーターは、“ドーム型”や“リング型”の場合が多い。これらのほうが高域側を再生しやすくなるからだ。一部の高級機では、中音域まで出せるというメリットを得るために敢えて“コーン型”が採用されることもあるが、それはあくまでもハイエンドカーオーディオの世界での話だ。特にミドルグレード以下のスピーカーにおいては通常、高域側をよりスムーズに再生すべく、“コーン型”の採用は見送られる場合が多い。
「トヨタ・プリウス」ではなぜに“コーン型”が採用されているのか、その真意は定かではないが、このトゥイーターでは、高域の伸びは期待しにくい…。
■さすがは定番エコカー、各部の軽量化が徹底されていて、ミッドウーファーも滅法軽い…。
一方“ミッドウーファー”は、一見、特徴はなく、純正スピーカーとして一般的な仕様となっていた。と思いきや、手に持ってみて驚かされた。純正スピーカーは“軽い”のが常だが、「トヨタ・プリウス」のミッドウーファーはその中にあっても特に軽い。さすがは定番エコカーであるだけのことはある。省燃費を追求すべく、各部の軽量化が徹底されている。
しかし、“軽さ”は、高音質を求めようとするときには逆効果となる場合が多い。今回交換した「FOCAL」スピーカーと並べて写真を撮っているので、それをよく見ていただきたい。一見しての違いが大きいのはミッドウーファーの裏側だ。左右の写真を比べてほしい。中央の丸い銀色の部分が音を生み出す心臓部となる“磁気回路”だ。写真の左側に映っているのが純正スピーカーだが、右側の「FOCAL」スピーカーのそれと大きさを比べると、その直径が相当に短くなっている。“子ども”と“大人”くらいの違いがある。心臓部の作りにこの差があれば、出てくる音の違いも推して知るべし、だ。
そして、振動板素材においても、純正スピーカーでは軽量で安価な紙(ペーパーコーン)が使われているのに対して、「FOCAL」スピーカーではエントリーモデルでありながらも、素材としてより有能なクロスカーボンが採用されている。ここにも「FOCAL」の音質に対するこだわりを垣間見ることができる。
ここまでの“軽さ”を実現させるのも簡単ではなかっただろうが、音のことを考えるとなんとも心もとない…。というのが、純正スピーカーを手にしての正直な感想だ。
■換装したスピーカーは「FOCAL」の、“TOYOTA車種別専用キット”。
続いて、今回のテストに用いたスピーカーのプロフィールを紹介していこう。用意したのは、世界的なスピーカーのリーディングブランド「FOCAL」の、“TOYOTA車種別専用キット”シリーズ中の165mm2ウェイコンポーネントキット、『IS 165TOY』(税抜価格:4万円)だ。純正スピーカーからのスムーズな換装を実現させるべく、専用取り付けスペーサーとスピーカーが一体化しているモデルである。
高音を再生するトゥイーターは反転ドームタイプとなっていて、人間の可聴帯域の上限である20kHzまでをスムーズに再生できる。しかもイージーインストレーションを可能とする小口径仕様。専用取り付け金具等も付属している。
なお、今回取材にご協力いただいたのは、千葉県木更津市にある、「フォーカル プラグ&プレイ本店<木更津アウトレット前>」店。「FOCAL」の車種別専用カースピーカーキットをはじめとする“プラグ&プレイ”商品を気軽に試聴・装着できる、新コンセプトのカーオーディオ専門店「FOCAL PLUG&PLAY STORE」の世界第1号店舗だ。
ちなみ当店で『IS 165TOY』を装着する際の取り付け所要時間は約2時間。取り付け工賃は、1万6000円(税抜、セッティング費用込み)となっている。メールや電話で予約を入れておけば、近隣のアウトレットや遊園地等々で有意義に時間を過ごしている間に取り付け作業は完了する。
■心地良い「FOCAL」サウンドを堪能。ドライブの快適性が向上することを疑う余地なし。
換装作業はスピーディに終了し、早速その音を確認してみた。
試聴用楽曲のイントロが鳴り始めた瞬間に、明らかな音質向上を実感できた。とても耳当たりが心地良い。このあたりはさすが「FOCAL」だ。エントリーモデルである当機からも同ブランドならではの良さを十分に感じ取れる。音色がリッチで、そして繊細、かつ、美しい。音にコクがある、と言ったらわかりやすいだろうか。なんともサウンドが味わい深い。
バランスも良好だ。バスドラムの低音から、トライアングルから発せられる高音まで、全帯域が過不足なく自然なバランスで聴こえてくる。
さらには、ミッドウーファーの反応の速さにも唸らされた。磁気回路が強力であるからこそ、だろう。信号が入力されてからの動き出しが素速く、止まるべきところでしっかりと止まる。きびきびと振動板が動くので、リズムの刻みが実に軽快だ。
ところで、「プリウス」のダッシュボードは比較的に奥深い形状をしていて、トゥイーターの純正位置は奥まったところに設置されている。そのため、ドアに装着されるミッドウーファーとの距離が遠くなるので、トゥイーターとミッドウーファーのサウンドの一体感が出にくいのだが…。
『IS 165TOY』では問題なくサウンドが繋がっていた。スピーカーユニットに「クロスオーバー」と呼ばれる回路が装備されていて、音楽信号の“帯域分割”が的確に行えているからでもあるだろう。純正スピーカーではコストをカットするためかそれが備えられてはいない。
音が良くなると、車内の快適性は確実に向上する。心地良い『FOCAL・IS 165TOY』のサウンドを聴きながら、つくづくそう思えた。音を良くしたいと考えたことがある「プリウス」オーナーの方は、「スピーカー交換」を検討してみてはいかがだろうか。それをするだけで、状況を一変させることが可能となる。
《太田祥三》
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