窓を開けて爽やかな風を車内に取り込んだり、換気をしたりと、冬場はあまり動く機会のなかったパワーウィンドウが活躍し始める。
手動で動かす時代を知るユーザーからしてみると、とっても便利なパワーウィンドウ。今では当り前の装備となり、付いていないクルマを探すことの方が大変だったりする。
だが便利な反面、実は使い方を誤ると、命に関わる事故が起こる可能性があるのだ。最も“身近な”便利装備のどこにそんな危険がはらんでいるのだろうか?
◆パワーウィンドウが閉まる力は「大根」を切り落とすほど
パワーウィンドウを使用する際に、最も気をつける必要があるのは窓が「閉まる」瞬間で、小さな子どもが体の一部分を誤って挟み込んでしまう危険性があるという点だ。
実際にそうした事故は多発していて、2歳の男児が首を挟まれ心肺停止に陥るという痛ましい事態も発生した。ちなみに、JAFが行った実験ではパワーウィンドウの圧力で簡単に大根を切り落としている。それほど力が強いので、ドライバーをはじめとした大人が気をつけないと凶器にもなりうるわけだ。
◆パワーウィンドウの機能と閉まる力
先のJAFの実験では、パワーウィンドウの使用時の注意を促すために、加わる力の大きさや「挟み込み防止機能※1」の作動状況について、軽自動車、セダン、ミニバンの3台で検証を行っている。結果は下表の通りで、挟み込み防止機能の作動も関係するが、窓が閉まる力は車種によって、7~34.6kgfと差が大きいことが判った。
※1 窓が上昇中に異物の挟み込みを感知すると、窓の上昇が止まり下降する安全装置のこと
◆閉まりかけた窓を「手」で止めることはできるのか?
続いて、「閉まりかけた窓を手(片手及び両手)で押さえ止められるかどうか」をミニバンの後席右側の窓で検証。結果は下表の通りで、8歳児は両手でも窓を止められず、30代女性は両手であれば止めることはできたが、片手では止めることができなかった。50代男性は両手、また片手であっても止めることができたが「止めるので精一杯」で下げることはできなかった。
挟み込み防止機能は車種によってはすべての窓には装備されておらず、また挟み込み防止機能もスイッチを引き続けると働かないこともあり、子どもを乗せる際には十分注意が必要になる。ドライバーが助手席や後席の窓を閉める際には、十分安全を確認して、「窓を閉めるよ」など一声かけることがとても大切だ。
子どもの事故に詳しい、緑園こどもクリニックの山中龍宏医師によると「クルマの中で子どもを自由に遊ばせているケースを見かけますが、車内にはパワーウィンドウのスイッチをはじめ、シフトレバーなど事故につながるものがあります。ただし、小さな子どもならチャイルドシートに座らせておけば、手が窓やシフトレバーに届くこともありません。基本的な安全装備を使って子どもを事故から守ることが保護者の務めです」と注意を促している。
JAFでは、子どもをチャイルドシートに「正しく」乗せること、子ども自身が座席で窓の開閉ができないように、運転席にあるパワーウィンドウのロックスイッチをONの状態にするといった安全対策の必要性を啓発している。
気候が良くなり、愛車で出掛ける機会が増えたときは、こうした“ちょっと”したことにも気を配って楽しいドライブにしたいものだ。