【カーオーディオ・マニア】フロントスピーカーをどう鳴らす?… 第7回 “2ウェイ” か “3ウェイ”か | CAR CARE PLUS

【カーオーディオ・マニア】フロントスピーカーをどう鳴らす?… 第7回 “2ウェイ” か “3ウェイ”か

特集記事 コラム
フロント3ウェイスピーカーの取り付け例(写真は、ツィーターとミッドレンジ)。製作ショップ:M.E.I.
フロント3ウェイスピーカーの取り付け例(写真は、ツィーターとミッドレンジ)。製作ショップ:M.E.I. 全 1 枚 拡大写真
フロントスピーカーに何を選び、それを“どう鳴らすか”を研究している当短期集中連載。その第7回目となる当回は、「“2ウェイ”か“3ウェイ”か」をテーマにお贈りする。それぞれにはどんな利点があるのか、楽しみ方のポイントはどこなのか等々をじっくりと解説していく。


■一般的なのは“2ウェイ”。“3ウェイ”は少数派だが、サウンドコンペティターの間では主流。

ところで前回の解説の中で、“マルチウェイスピーカー”とは何なのかについて簡単に説明した。本来であれば、高音から低音までを1つのスピーカーユニットだけでスムーズに鳴らし切れればベストなのだが、それが困難であるがゆえに、高音と中低音の再生をそれぞれスペシャリストに任せるというような、“マルチウェイスピーカー”が使われることが主流となっている、と解説した。

さて、カーオーディオのフロントスピーカーにおいての“マルチウェイスピーカー”といえば、希に“4ウェイ”が組まれることはありつつも、“2ウェイ”、もしくは“3ウェイ”、このどちらかの選択となるのが一般的だ。そしてこの2つを比べると、“2ウェイ”が選ばれることのほうが多くなっている。

ただし、サウンドコンテストに出場する車両を見ると、“3ウェイ”が組まれるケースのほうが多い。2/3、いやそれ以上の比率で“3ウェイ”が採用されているのではないだろうか。

なおカーオーディオでは、サブウーファーが用いられることも多い。その場合はそれも含めて“マルチウェイスピーカーシステム”となるのだが、サブウーファーは別カウント的に捉えられることが多くなっている。

なぜかというと、サブウーファーはフロントスピーカーとセットで売られるものではなく、フロントスピーカーに付け足して使うものという位置付けとなっているからだ。独立した存在であるわけだ。実際のところは単なる補助的なユニットではなく、なくてはならないものというほどの存在感を放つのだが、フロントスピーカーとは区別して考えられている。であるので今回の記事においても、サブウーファーは除外しての“2ウェイ”、もしくは“3ウェイ”について考えていく。


■“2ウェイ”ではミッドウーファーに多くの負担がかかる…。

さて、“2ウェイ”と“3ウェイ”では、どちらが音的に優位なのだろか。いろいろな側面があるので一概には言えないが、サウンドコンペティターの多くに採用されていることからわかるとおり、“3ウェイ”の方に分があると考えられることのほうが多くなっている。

その理由は主に2つある。1つは「“2ウェイ”ではミッドウーファーに負担が多くかかるから」である。“2ウェイ”の場合、中低音を担当するミッドウーファーは案外幅広い帯域を担当せざるを得なくなる。結果、負担が大きく、担当範囲のすべてをスムーズに再生しきれない、ということが起こり得るのだ。

特に問題となるのは“分割共振”という弊害だ。低音を再生する際には、振動板(コーン)の内側と外側が平行に正確に動くのだが、ある程度高い音を再生しようとするときには、振動板の内側と外側の動きの足並みが揃わなくなり、いわば“波打った”ような動きをすることとなる。これが“分割共振”だ。そしてこの現象は、音を濁らせる原因になってしまうのだ。

しかしながら“3ウェイ”にすればミッドウーファーの負担が相当に小さくなる。結果、“分割共振”の弊害を受けなくてすむ、というわけだ。

そして“3ウェイ”の方に音的な分があるとされる2つ目の理由は、「“3ウェイ”では中域を高い位置で鳴らせるから」だ。

“2ウェイ”ではほとんどの場合、ミッドウーファーをドアの低い位置に取り付けざるを得なくなる。しかし“3ウェイ”にした場合には、中域を再生するスピーカーユニット(ミッドレンジ)を比較的に高い位置に装着することが可能となる。さらには、ミッドレンジをリスナーに正対させることもできる。中域は音楽の中でもメインとなる帯域であるので、その美味しいところが高い位置から聴こえてくると、さらには正対したスピーカーユニットで聴けるようになると、状況は大きく好転するのだ。


■“3ウェイ”にもデメリットがある。難易度が上がり、コストもかかる…。

このように“3ウェイ”には音的なメリットがあるのだが、しかし、必ずしもそれらが活かされるとは限らない。というのも“3ウェイ”には、「コントロールが難しい」という難点もあるからだ。音の出所が増えることで、それらをまとめるのが難しくなるのだ。音楽信号を“帯域分割”するポイントも増えるので、音の繋がりを整えるという作業か所も増える。大げさな言い方をすれば、失敗する可能性も増えてしまう、というわけなのだ。

さらには、「コストが多くかかる」こともデメリットだ。単純にユニット数が増えるのでその分、確実に費用負担が増える。さらにもしも“アクティブ”システムで鳴らすこととなると、パアーアンプのch数も多く必要になる。そうすればケーブルの必要本数も増える。

また、取り付けの難易度も上がる。中音の再生を担当するミッドレンジスピーカーは、ツィーターと比べて大型化する。Aピラーに取り付けるにしてもドアミラー裏に取り付けるにしても、ツィーターを取り付ける以上に大がかりな加工が必要となるケースも多い。よって、インストール費用もそれなりにかさんでいく。

その点、“2ウェイ”はもろもろがシンプルだ。サウンドコントロールを失敗するリスクは“3ウェイ”と比べて低く、ユニット代、ケーブル代、取り付け代、すべてにおいて出費が少なくてすむ。

さて、今回も最後に結論をまとめておこう。

音的な優位性を考えれば、“3ウェイ”が有利だ。しかし、制御面、そしてコスト面で難易度が高くなることも事実。覚悟を決めて高いハードルに挑みながら高音質を追求するか、または“2ウェイ”を選択し、音的な不利は承知の上で合理的に“3ウェイ”に勝るとも劣らないサウンドを目指すか。

どちらにもやり甲斐がある。“2ウェイ”と“3ウェイ”、それぞれのメリットを活かすための創意工夫を発揮させて、どちらにするにせよ、楽しみながら高音質を追求していこう。

今回はここまでとさせていただく。次回もさらにフロントスピーカーの鳴らし方についての深掘りを継続する。お楽しみに。

フロントスピーカー、アナタならどう鳴らす? 第7回「“2ウェイ”か“3ウェイ”か」

《太田祥三》

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