伝説のドライバー達を魅了する奥深い大人の自動車ホビー「スロットカー」とは?
イベント
イベントレポート
若い方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、スロットカーとは “スロット(溝)に沿って走る自動車模型” であり、専用のコースを使ってレースを楽しむ遊びです。
1960年代にブームになった“走るプラモデル”といえばピンとくる方もいるのではないでしょうか? 当時は、鈴鹿をはじめ、船橋、富士と相次いでサーキットが建設され、日本のレースシーンの盛り上がりと共にスロットカー人気も高まっていました。
◆ 18名のレジェンドドライバーが集結
なぜ突然、昔流行った自動車ホビーの話をするのかというと、2月9日(土)に新横浜駅から電車で一駅の場所にあるスロットカーショップで、日本のモータースポーツの礎を築いてきた重鎮達が集結するスロットカーレースのイベントが開催されたからです。
開催前に参加者のリストを見てまず驚いたのはその顔ぶれ。集まるといっても2~3人のゲストを呼ぶくらいだろうと高を括っていたのですが、なんと総勢18名のレジェンドドライバーが集まるというのです。
イベント当日は大寒波で雪がパラつく生憎の空模様でしたが、ワクワクしながら会場に向かいました。
◆ スロットカーが繋いだ、 憧れのドライバーとの縁
今回取材したのは『第12回 レジェンドドライバー・スロットカーレース大会』。主催者のMFC(モデルカーファンクラブ)田村吉幸氏がドライバーの鮒子田寛選手に声を掛けたことがきっかけで12年前に立ち上がった本会について田村氏に話を伺うと、「12年も続いているのは、この会で誰も儲けてないから。運営委員会だけでなく、ドライバーの方々にも全員ボランティアで参加頂いているんです」と予想外の回答を頂くことができました。
さらに驚いたのが、会場を走らせている1/32スケールのスロットカーは、当時のレーシングカーをリアルに再現したもので、それら全てが田村氏の手作りだったこと。普段は仕事をしながら空いた時間を使い、1台制作するのに最低でも1ヶ月は掛かるそうです。
一個人である田村氏の“スロットカーを広めたい想いと、往年のドライバーに対する敬意”が、レジェンドドライバーを始めとした周囲の人々の賛同を得たことで、12年も続くイベントに成長したのでしょう。
◆ 元レーサーの血が騒ぐ、熱い戦いが繰り広げられた
実際のレースはどうだったかというと……。レーシングスーツに身を包み昔の血が騒いだのか、和やかとはとても言えない雰囲気の熱いバトルが繰り広げられ、時折「コーナーが見えない!」などと言った怒号が飛び交っていました。
70年代のGCカーをメインとしたレース「Legend Cup」では、マッキャンベル・シェブロンB23を操った高橋晴邦選手が優勝。合計200周を走る団体戦「68年日本GPリターンズ」では、舘信秀選手、高橋晴邦選手、MFC伴野選手、MFC金子選手の4名がトヨタ7を走らせ優勝しました。
溝に沿って走らせるスロットカーはステアリング操作がなく一見簡単そうに見えますが、実際に操作をするとスピードに慣れたレーサーでもコースアウトが続出する難しさです。往年のレーサーも夢中になる“敷居は低いが奥深い”大人の自動車ホビー「スロットカー」。クルマを大切にする皆さんも一度試してみてはいかがでしょうか?
Legend Cup Entry List:ドライバー(車名)
大久保力(エバ・カンナム・ローラ)
片桐昌夫(エバ・カンナム)
桑島正美(スリーボンド・マーチ)
鈴木恵一(スカイライン・マーチ)
関谷正徳(レイトンハウス・マーチ)
多賀弘明(クラウン・ローラT290)
高橋晴邦(マッキャンベル・シェブロンB23)
武智勇三(ダイハツ・P5・マーチ)
舘信秀(トムス・マーチ)
津々見友彦(シックスーパー2・ローラ)
寺田陽次郎(シェブロン・マツダ)
戸谷千代三(レノマ・マーチ)
長坂尚樹(スピードスター・シェブロン)
長谷見昌弘(ミノルタ・マーチ)
鮒子田寛(オンワード・シェブロン)
見崎清志(ローラ・T290)
柳田春人(フェアレディ・Z240)
和田孝夫(アドバン・MCS)
※50音順 敬称略
《カーケアプラス編集部@市川直哉》
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