外国人整備士たちが日本の整備業界を救う…カーコンが語る実情【川崎大輔の流通大陸】 | CAR CARE PLUS

外国人整備士たちが日本の整備業界を救う…カーコンが語る実情【川崎大輔の流通大陸】

特集記事 コラム
技能研修
技能研修 全 5 枚 拡大写真
2019年2月にタイの北部にある街チェンライを訪問。日本オートビジネス協同組合が定期的に開催しているタイ人技能実習生の面接が開催されたためだ。

◆タイ北部チェンライで開催、外国人技能実習面接会

2016年4月1日より外国人の技能実習生制度において「自動車整備」が職種に追加された。これにより技能実習生が自動車整備の研修生として日本企業で働くことができるようになった。技能実習制度は、雇用関係のある企業において産業・職業上の技能等の習得・習熟をすることを目的として公的制度だ。技能等の習得期間は、最長5年となる。

2018年2月時点で、外国人自動車整備技能評価試験初級の合格者数は約350名。技能実習生は、日本で1年ほど働いた後、この試験を受けることになる。確かに、日本で働ける年数が限定されており、整備技術や日本語能力が身についたタイミングで帰国をしてしまうことを理由に躊躇(ちゅうちょ)する事業者も多くいる。しかし、日本でも徐々に、技能実習生の採用を検討する整備事業者が増えつつあるのは事実だ。

日本で自動車整備、鈑金・塗装店舗を展開するカーコンビニ倶楽部(林社長、東京都港区)では、本部が全国のFC企業へ技能実習生の受け入れ支援を行っている。全国62社で技能実習生の受け入れ実績がある。2月に日本オートビジネス協同組合が開催した技能実習生面接会にもカーコンビニ倶楽部のFCオーナーたちが参加していた。

◆技能実習生のリピート率は93%

「整備士不足で、求人をしてもなかなかきてくれません。自分自身も外国人について抵抗がありましたが、まずは技能実習生の面接に来てみました」(チェンライでの面接会初参加の経営者)。更に「今回、来てみてまだ漠然としか考えていないのですが今後は外国人を増やしていこうかと考えてます。まずは、今回面接したタイ人の技能実習生と一緒に働いてみてからですが」と外国人の増員に前向きに考えていた。

また別の経営者は、「1名をトライアル採用しようと思ってきました。知り合いの会社で既に技能実習生を雇用している会社も見てきましたが、技術力が高そうでした。少し年齢が高い弊社の工場長はすぐに外国人活用にOKを出しました。理由として『いまの若い人たちはハングリー精神がない』と言っています。しかし、他(ほか)の従業員はまだ外国人の活用には抵抗を持っているようですので、どうやって受け入れてもらうかはこれからです」と指摘する。

18年前からカーコンに加入しているFCオーナーは「本当に整備士がいません。昨年1人辞めてしまって、早く1人入れないといけない状況です。コストとしては安くはありませんが、紹介センターを使って求人をしても120万近くかかります。人材がいないと言うことに大きなリスクがありますので、外国人の活用を考えました」。

FCオーナーの方々から技能実習生面接の参加の理由を聞いた。初参加のオーナーも多くいたが、2回目以上のオーナーもいる。カーコンビニ倶楽部によると技能実習生のリピート率は93%。今回の技能実習生面接会には、合計11社が参加。リピーター企業3社と初参加企業8社が参加した。今回は全部で16名の技能実習生の採用が決まった。

◆なぜ、いま外国人整備人材の活用なのか?

人の育成には時間が必要だ。カーコンは、タイの北部チェンライに技能実習生の研修施設として基本的なカーコン技術を学べる研修所をつくった。

カーコンビニ倶楽部の実習生事業部の責任者である花形氏は、「活用の魅力は、タイの自動車整備学校を中心に人材募集をかけて、現地で自動車修理の基礎研修を教える体制をとっています」と指摘する。更に「FC企業の皆様は人材の不足に困っています。塗装工として技能実習生として来ますが、チェンライでカーコン新工法を研修しているため、日本での助走期間を短縮させることができます。皆様のロイヤリティをあげるためのサポートとして本部で皆様の支援をさせていただきます」と語る。

受け入れ後のサポートはカーコンビニ倶楽部のFCサポート部が行っている。「FCサポート部の日本人スタッフは皆、タイ経験者です。彼らは加盟店の中でタイ人を教える人を教えています。そして言葉の壁に関しては、鈑金塗装は作業を見ることである程度理解できます。また、イラストなどを活用した筆談も有効です。加盟店ごとにこのような工夫は変わりますが、直営店が経験した成功体験を伝えています」(花形氏)。

更に、タイ人はプライドが高い。人前で怒られることを嫌う。FCサポート部のスタッフは「彼らを寛容に受け入れる必要がありますし、何か起こっても我々が責任を持つ必要があります。そもそも国が違えば商習慣が違うのは当たり前だし、日本の価値観を押し付けても絶対に話を聞いてくれません。タイ人を理解し、どのようにすれば伝わるかを考えるのは我々の責任。彼らを理解し大事にすることが大切です。言葉はなくても思いは通じます」ということを伝えている。

カーコンビニ倶楽部はFC店舗以外にも人材のサポートを行っている。カーコン技法を学んだ技能実習生が入社することで、新規FCを広げる可能性にもつなげている。花形氏は「カーコンの代理店だけでなく、他(ほか)の鈑金、整備会社でも、地盤を固めておかないと新しいことはできない」と指摘する。

自動車整備業会における人出不足の問題は急速に加速している。整備士がとれないと言う課題を解決し、生き残り、そして成長を実現するためには外国人の活用にもっと真剣に目を向ける時期にきている。人材が不足する日本の整備業界にとって、外国人整備人材の存在がこの業界を救うと考えている。


<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

【川崎大輔の流通大陸】カーコンが語る、なぜ外国人整備人材なのか?

《川崎 大輔》

この記事の写真

/

特集