【岩貞るみこの人道車医】安全にクルマを走らせるために“最新技術“が今、出来ることは何か
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ときに加害車両は二人をはねたあと、ゴミ収集車にぶつかり止まったというけれど、ゴミ収集車が横転しつつも加害車両を止めてくれなかったら、どこまで暴走したのかと思うと怖くなる。
そして思う。今回の事故は、技術では防げないのだろうか。どういう技術があれば、防げたのだろうか。
死亡した原因のひとつは、速度である。報道によると、90km/hまで上がっていたという。
歩行者事故の場合、ぶつかる速度を25km/hまで下げることができれば、傷害値はぐっと低くなる。クルマを止める、もしくは、速度を下げることができれば、同じように加害者が行動しても、死亡事故には至りにくくなるはずだ。
◆車両を止める、速度を出させない
【1】車両を止める
加害者は暴走を始める前に、いちど、ガードレールにぶつけていたという。ならば、ある程度の衝撃を感知したクルマは、止めてしまえばいい。高速道路上などでは、「止める」こと自体が二次被害を引き起こしかねないというのなら、わきに移動できるだけの、低速しか出ないようにするとか。
もしも、その後、自走して移動が必要な場合は、解除ボタンを設けておき、ドライバーが意思を示した場合のみ、動けるようにしたらどうなんだろう。
【2】速度を出させない
一般道では、ある一定の速度以上、出せないようにする。これはもう技術的にも対応ができる。だって、カーナビに連動させればいいだけから。実際、メルセデスベンツの自動車線変更機能は、カーナビ連動で、高速道路上でしか使えない。
レクサス『LS』も、コーナーの前でシフトダウンしてエンジンブレーキがかかる機能がある。これもやはり、カーナビで前方の道を把握しているからである。ならばこれらを逆に利用して、一般道では90km/hなんて速度を出せないようにしちゃえばいいのに。
スバルの『レヴォーグ』は、リバースに入れると速度を制御する機能が入っていたっけ。後ろ向きに、超高速でがんがん走ることは、通常あり得ないからだ。
こう書きつつ、欧州車には、自分で速度が選択できるスピードリミッターが搭載されている車両があることを思い出した。アクセルを踏んでも、その速度までしか出せない機能だ。30km/hくらいの低速でも設定することができる。いちど、間違って設定してしまい「こんな低い速度に誰が設定するんだ!」と、憤慨した大馬鹿ものは私だけれど、今となればこの機能、大いに活用できる。一般道しか走らない人、アクセルを間違って踏み込んじゃう不安がある人は、常時オンにしておけば安心である。
◆ユーザーのニーズは「安全」にある
そんななか、速度を下げることが安全につながるという考えを表面化させたボルボでは、2021年以降販売される全車に、“ケア・キー(Care Key)”の採用を決めている。キーごとに、任意の速度制限を設定できるというものだ。運転に不安な高齢者や、免許取り立ての人が運転するとき、家族が設定することも可能だし、シェアカーなどでも有効とのこと。たしかに。
「もう高速道路は走らない。」高齢ドライバーから、そんな声も聞こえてくるようになったけれど、なおさら、こうしたケア・キーは有効になってくる。
以前は、クルマに速度制御をつけてしまうと、「いざというときに加速ができず危険なのでは」という議論があった。今も人によっては、速度はドライバーの意思で決めるべきだと言う人もいるだろう。でも、昨今の状況を見ていると、運転する人によってはある程度の速度で区切ってあげたほうが、安全が確保しやすいと思う。
技術はなにができるのか。いまある技術の組み合わせだけでも、もっと多くの人が安全にクルマを走らせられる。いま、ユーザーのニーズはそこにあると思う。
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。
「暴走事故」を止めるのは、人か、技術か【岩貞るみこの人道車医】
《岩貞るみこ》
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