愛犬と一緒に避難! 電源とフラットな車室があれば【青山尚暉のわんダフルカーライフ
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これまでの地震災害時でも、環境省が「愛犬同伴避難」を推奨しているにもかかわらず、行政の準備が追いていないため、ほとんどの場合、避難所に愛犬を同伴できず、自宅の駐車場や避難所の敷地内で、愛犬と車中で過ごさざるをえない愛犬家が多いのが実情です。大規模災害時、愛犬同伴避難を受け入れてくれる動物病院やペット同伴専門ホテルの厚意はうれしい限りですが、現実的にはごく一部でしかありません。
しかし、新潟、熊本地震での教訓が示すように、車中での窮屈な避難生活(就寝)では、エコノミークラス症候群(血栓症)を引き起こす危険が潜んでいます。最悪の場合、飼い主が命を落とす…愛犬はその後、どうしたらよいのでしょうか?
◆電源とフラットな車室があれば、愛犬と共に体を休められる
実は、家族の一員である愛犬と暮らしている愛犬家にとって災害時の避難スペースとして有効なのが、クルマの車内なのです。愛車が無事であれば、たとえ自宅が損壊していても、堅牢なクルマの中に一時避難することができます。雨、風をしのげ、エアコンが効き、USBコンセントからスマホを充電でき(シガーソケットでもアダプターあり)、ラジオ、テレビ(装着車)が受信でき、プライバシーがある程度保たれ、ハイブリッドカーやPHV(PHEV)であれば、標準装備またはオプション装備のAC100V/1500コンセントによって車内外で1500Wまでの、湯沸かしポットなどの家電品を使えたりします。PHV(PHEV)であれば、自宅に給電することも可能です。
個人的には、AC100V/1500コンセントのあるクルマを、普段は「どこでもドッグカフェ」カーと呼んでいます。景色のいい場所にクルマを止め、熱々のコーヒーを飲んだり、夜間はLED照明を点灯させたりできるからです。そして災害時には、移動可能な愛犬同伴可の走る“マイ避難所”になりうるというわけです。今ならリチウムイオンバッテリーの車載蓄電器も手に入ります。
ただし、災害時には、疲れ切った体を休ませるための就寝、仮眠スペースであることが望まれます。先に触れた、車内生活でのエコノミークラス症候群(血栓症)の発症は、主に運転席など座席での窮屈な姿勢の就寝、仮眠によるものとされています。それが、まるでベッドのように真っすぐ横になれるとしたら、どうでしょう? カプセルホテル的な快適度が得られるかもしれません。
そんな車内のフラットスペースと、エアコン、USB、AC100V/1500コンセント、ラジオ&テレビが完備された車内なら、体を休め、広く情報を得ることができるはずです(スマホの電波が飛んでいなくても、車載のラジオやテレビで情報を得られる可能性があります)。USBコンセントがなくても、シガーライター、12VソケットにUSBアダプターを付けることもできます。
◆理想的な、愛犬同伴可の走る“マイ避難所”とは?
では、どんなクルマが愛犬家にとって、理想的な愛犬同伴可の走る“マイ避難所”になるのでしょうか。理想のひとつが、家に給電も可能で、車内外で1500Wまでの家電品が使え、ガソリンと蓄えた電気を併用できる、電欠のないPHV、PHEVでしょう。ただし、国産車では三菱『アウトランダーPHEV』『プリウスPHV』などに限られ、“マイ避難所”として適しているのは、後席格納によって就寝、仮眠スペースの確保が可能で、悪路に強いアウトランダーPHEV一択になってしまいます。ちなみに2019年9月の台風で被害甚大だった千葉に、三菱自動車が15台のアウトランダーPHEVを電源車として派遣したそうです。
次に推奨できるのが、AC100V/1500Wコンセントを備えた、2モーター方式のストロングハイブリッドミニバンです。シートアレンジによって1-2列、2-3列フラットアレンジが可能で、エアコン、ラジオ、テレビ(装着車)、ソファ&ベッド完備の、まるでリビングのような広々としたスペースが出現するのです。
大人2人と愛犬数頭でも、M/Lクラスミニバンなら、かなり快適に過ごせると思います。『アルファード/ヴェルファイア』クラスなら文句なしでしょう。東日本大震災の際、東北にトヨタが『エスティマ』を始めとするハイブリッドミニバンを全国から集結させ、暗闇に明かりを灯した話は今でも語り継がれる、災害時に役立つハイブリッドカーの逸話です。
◆マイカーをアレンジして、愛犬同伴災害対策車仕様に
ですが、わが家のように、現時点でPHVやPHEV、AC100V/1500Wコンセントを備えたミニバンを持たない愛犬家はどうしたらよいのでしょうか。さすがにセダンではなかなか難しいのですが、わが家では、ドッグフレンドリーカーと言えるコンパクトステーションワゴンを、愛犬同伴災害対策車にアレンジしています。
後席を倒すことでフロア長1670mm、フロア幅990mm、天井高810mmのベッドスペースが出現。ボクの身長は172cmなので、真っすぐ足を伸ばして寝ることはできない…わけではありません。ボクが発見した「ヘッドレスト逆付けの技」を使うことで、ベッド長は1800mm近くになるのです。具体的には、ヘッドレストを引き出し、逆向きに付けなおすことでヘッドレストが枕代わりになり、同時にヘッドレストの長さぶん、ベッド長が伸びるというわけです(どんなクルマでもできるわけではありませんが)。
もちろん、そのまま横になると、背中が痛くなるので、1.5cm厚程度の、後席格納スペースにちょうどいいサイズの断熱マットを探してきて、敷きつめています(後席使用時は後席背もたれ背面に沿ってL字に立てかけてある)。さらに、愛犬といっしょに寝ることを想定し、ラゲッジ全面を覆うカバーをセット。車内用の2人ぶんの寝袋(合体可)は、普段は畳んでクッションとして活用しています。
床下とラゲッジ左右のポケットには、飼い主&愛犬用の避難グッズも常備しています。水や電池、LEDランタンなどは当然ですが、意外なるアイテムとして紹介したいのが、初夏~秋限定とはいえ、車内でガソリンやバッテリーの電気を節約するためにウインドーを開け、風を通して過ごすときの蚊対策として、火や電気を使わない、ペット用のドギーマン「薬用蚊取り安泉香」、および、水がこぼれにくいペット用水飲み皿、ペットシートなども常備。これなら狭い車内に置いても煙が出ず、愛犬が水を飲んでも車内が水浸しにならず、快適・安心です。
ただ、自宅の駐車場スペースの関係で、コンパクトカーや軽自動車サイズしか所有できない愛犬家もいるはずです。しかし、ご安心を。コンパクトミニバンや軽自動車でも、容量系、スーパーハイト系と呼ばれる大容量空間を持ち、純正アクセサリーに車中泊用のアクセサリーをズラリとそろえたクルマであれば、なんと愛犬同伴可の走る“マイ避難所”にアレンジ可能なのです(愛犬が小中型犬に限りますが)。
最後に、普段からの準備、心構えとして、ぜひとも実行していただきたいのは、クルマの燃料、電動車ならバッテリーを常に満タンにしておくことと、災害時、万が一、愛犬とはぐれた時のために、飼い主の携帯番号を記した迷子札を付ける、愛犬にマイクロチップを装着し、捜索時に役に立つ、特徴や名前などを記した愛犬の写真(伴侶の写真も!)を用意しておくことです。愛犬同伴避難可能な近隣の施設、知人宅の確認も、もちろんでしょう。愛犬家として、災害時には愛犬同伴避難が基本であること、そのために準備を怠らないことも、忘れないでくださいね。
【青山尚暉のわんダフルカーライフ】災害時、車内空間は愛犬同伴避難の強い味方になる!
《青山尚暉》
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