腕一本! 長野の鈑金塗装職人たちが競い合うプロの技に密着
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イベントレポート
愛車を大切にするカーオーナーの皆さんも、こんな悲しい経験を一度はお持ちではないだろうか? しかし、そんな時に頼りになるのが、ボディに付いた傷やヘコミ、剥がれ落ちた塗装を元の状態に綺麗に直してくれる「鈑金塗装工場」の存在だ。
今回は、そんな鈑金塗装工場で働くいわば“クルマの外科医”とも言える職人たちの、確かな知識と正確な技術力を競い合う競技会に密着。その模様をお伝えしたい。
◆2年に1度 長野県No.1の職人が決まる
2019年10月20日(日)、競技会の会場となった長野県松本市の泉カーサービス(株)には、県内から9人の職人が集まった。日本列島を襲い、甚大な被害をもたらした台風19号が上陸した翌週だったが、幸いにも松本市内の被害は少なく、予定通りの開催となった。
技術力の向上と、職人一人ひとりのレベルアップを目的に長野県自動車車体整備協同組合が主催し、2年前に記念すべき第1回大会が行われた「長野県自動車鈑金塗装技能競技大会」。2回目となる今回は、競技の開始前から多くの聴衆がその様子を見つめており、関心や注目度の高さが伺えた。
◆いよいよ競技開始! 会場は一気に独特の雰囲気に
大会は鈑金部門と塗装部門に分かれ、実技75分、学科75分の150分の合計得点で順位が争われる。今回は鈑金部門に5名、塗装部門に4名がエントリーした。
どちらの部門も、ダイハツ・ムーブの左フロントフェンダーを使用。鈑金は、サフェーサーを吹き付けられる状態にすること。塗装については、サフェーサーの研ぎおよびボカシ塗装をした状態にすることが求められた。
午前9時に競技が一斉にスタート。鈑金・塗装それぞれの参加者は、目の前のフェンダーを見つめ、普段から行っている作業へ集中していく。
まずは鈑金部門に目を移す。ハンマーで叩く→パテを塗る→乾かした後、サンドペーパーで表面の凹凸を無くすという主な鈑金作業の流れはどの参加者も同じだが、作業スピードや使用する機材に違いが見て取れたのは競技会ならではだろう。参加者の私語は厳禁のため、会場内にはハンマーの打音と無機質な機械音だけが響くという独特な雰囲気が流れていた。
一方の塗装部門は、ブース内で作業が行われていた。周りから覗き込まれるような環境の中での作業は異質だが、そういった環境下でも平常心で一定以上の塗装品質を保てるかがポイントだ。競技会スタッフによると『ボカシ塗装』は高度な技術が必要で差が出やすいという。
学科試験は、自動車車体整備および鈑金・塗装の基礎知識が問われる内容となっている。安心・安全な作業を行うにあたり、必須項目となるだけに、参加者は実技とはまた違った表情で、真剣に問題に取り組んでいた。
◆緊張の結果発表! 2代目チャンピオンに輝いたのは?
午後12時前に全ての競技、試験が終了。昼食と1時間の競技審査を経て、いよいよ審査結果が発表された。なお、鈑金部門が3位まで、塗装部門は2位までの選手が表彰される。
厳正なる審査の結果、塗装部門は泉カーサービス(株)の堀井和輝氏、鈑金部門は(有)白馬自動車工業の猪瀬公利氏が優勝の栄誉に輝いた。
表彰の後、今大会の会長である長野県自動車車体整備協同組合理事長の藤原富起人氏から大会全体を通じた講評が行われ
「鈑金も塗装も、最近では作業のやり方などが変化してきています。そういった流れに順応した皆さんの作業を今日は感心して見させて頂きました。選手の皆さんを始め、今日見学されていた職人の皆さんも、今日をきっかけにさらなる技術の向上に努めて頂き、お客様に安心・安全な技術をお届けできるように研鑽を積んで頂けるとするならば、今大会はまずまず成功になるかなと思います。本日は皆さんお疲れ様でした」と選手への激励が送られ、大会は幕を閉じた。
自動車の技術革新は凄まじいスピードで進んでいる。また最近はコンプライアンス面でも責任ある作業で安心と安全の提供がますます重要になってきている。このような大会を通じて、正確な作業の共有と職人たち一人ひとりのレベルアップが図られることは、業界全体にプラスになるだろう。一般のカーオーナーにとっても、いざという時にこんな職人たちがいれば心強いことこの上ない。
自動車は変わっても、安心・安全な技術の提供は不変だ。競技を通じて見えた職人たちの真剣な眼差しとその背中に、心強さを感じたのは筆者だけはないはずだ。2年に1回開催される大会が、職人たちのモチベーションとなり、塗装職人という裾野が広がっていくことを期待したい。
《カーケアプラス編集部@松岡大輔》
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