デロリアンDMC-12 は「よく壊れる。でもそれが面白い」 19年間乗り続けるオーナーの本音
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イベントレポート
そう語ったのは、2019年12月7日から封切られた映画『ジョン・デロリアン』公開直前イベントで、映画コメンテーターの有村昆氏と対談した、デロリアン・オーナーズ・クラブ・ジャパン(DOCJ)会長の下原修氏。
下原氏は大学生のとき、映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー(BTTF)』シリーズのPART1をテレビで観て、デロリアンに一目惚れ。実際に購入できることを自動車雑誌で知って以来、所有を熱望するようになった。
下原氏の想いは強く、1994年に1台目のデロリアンをカリフォルニアの専門店から直接個人輸入。それだけでなく、なんと情報交換のために、自らデロリアンのオーナーズクラブ(DOCJ)まで設立。その後は世界中のイベントに参加しながら、カー専門店などを訪問し、それら店主やデロリアンオーナーたちとの交流を深めて、早25年。2019年現在、デロリアン・オーナーズ・クラブ・ジャパンには約200名(うち50名が実車を所有しているオーナーメンバー。なお、下原氏が所属しているDeLorean Owners Club UKは1995年創立)が集うクラブへと成長している。
ちなみに、下原氏が現在所有するデロリアンは2台目。仕事でイタリアのミラノに転勤した際、デロリアンに乗れない日々に物足りなさを覚え、スイスの友人が経営するデロリアン専門店から、イタリアへ個人輸入し、帰国時に日本へ持ち帰って以来、19年間乗り続けているという。
◆デロリアンは「新車」で買える!?
そんな下原氏と対談した映画コメンテーターの有村氏は、映画『BTTF』でマイケル・J・フォックスが演じた主人公マーティ・マクフライそのままのスタイルで、トークイベント会場に登場。
2年前までデロリアンを所有していた有村氏は、中古で購入したときのエピソードを話すと、下原氏は「テキサスにあるDMC社に注文すれば、新車を買えますよ。ただし部品は1981年当時のものになりますが、新車といえば新車でしょ? もちろん中古でも買えますけどね」と話し、有村氏がデロリアンを購入した専門店の経営者は、下原氏が会長を務めるDOCJメンバーであることも告げた。それを聞いた有村氏は「え!?」と仰天の表情に。
このあと下原氏は、デロリアン探しに役立つ本として『デロリアン・バイヤーズガイド 夢の車、購入の手引き(著:ジェームズ・エスペイ/発行:カマド)』を紹介。「1997年からお付き合いがあるDMC社のジェームズ副社長がアメリカ人向けに英語で発行した本がありまして。その本を訳して日本語版で出そうよ、と出版社をやっているDOCJメンバーの方から提案があり、実際に僕が訳して発行させて頂いたんです』とコメント。下原氏に限らず、デロリアンに魅了されたオーナーというのは、計り知れない強い想いと行動力がある人が多いことが伺いしれる話だった。
◆デロリアンは「人を呼び寄せる」
デロリアンの魅力について、有村氏は「思わず、わぁ~ってなって近寄って写真を撮りたくなる、愛されるクルマだと思うんですよね」と熱く魅力を語り、フェラーリやポルシェはスポーツカーとしての馬力はあれど、デロリアンを目にした時に感じるようなワクワクした気持ちを沸き起こさせる魅力は感じないという。
すると下原氏は、「フェラーリやポルシェのオーナーになったことがないから、よくわからないけど、たぶん話しかけられないと思うんですよ。でも、デロリアンに乗ってると老若男女からすごく話しかけられる。昨日も小さい子から、あのクルマ飛ぶの?って言われた」と満面の笑み。有村氏は「やっぱりガルウイングが良いんでしょうねえ。映画(BTTF)でも飛びますし。あと、いまだに廃れないですよね。デロリアンは超越してる」と分析した。
この有村氏の考えを聞いた下原氏は、ぐっと語気を強めて、「私はメーカーが造ってる車が酷すぎると思ってまして。数年間するとすぐモデルチェンジしちゃう。なんでモデルチェンジするかっていうと、次の車を買ってもらわなきゃいけないからですよね。ということは、前の車ってなんなの? 失敗作なんですよ絶対! 僕はそれが許せない」と強い思いを吐露。
さらに下原氏はこう続けた。「デロリアンは死ぬまで乗り続けられますよ。だけどよく壊れる。でもそれがとっても面白い。壊れない車はつまんない。デロリアンに乗ってると、壊れて煙吐いてるときに話しかけられることも多くて、こっちは修理に忙しいから声かけないでって思ってますけど、でもそれが楽しい」と熱弁する下原氏。その熱い気持ちに、有村氏は心を動かされたようで「もう一回、デロリアンを買い戻したくなります…」とポツリ。それを聞いた下原氏は明るい声で「ぜひ買いましょうよ! また一緒に走りましょう!」と有村氏に熱く語りかけ、二人のデロリアン愛が、炸裂しているのが目に見えるようだった。
◆デロリアンを造った男は、何者だったのか?
12月7日から公開される、映画『ジョン・デロリアン』の話題になると、有村氏はその人物像について「触ってはいけないものに手をつけた、ちょっと怪しい人物なのかなって思っていて。天才にはいろんな人が寄ってくるので、危うくて紙一重。映画ではそれがうまく描かれている」と話した。
下原氏は「僕はデロリアンオーナーなので、ジョン・デロリアンは神様のような存在ですよ。足を向けて眠れない。彼は確かに、人として怪しいところもあるのかもしれないけど、出るくいは打たれるという社会の犠牲になったのかも。彼の功績をしっかり讃えて、社会全体が彼の才能が活きるように後押しすべきだったように思いますね」と述べ、犯罪に手を染めるような出来事があったからこそ、映画にもなり、世界中の人々から注目され、いまも愛されているのではないかと、思いを述べていた。
このほか、イベント会場にデロリアンでかけつけた青年がトークショーに飛び入り参加する場面も。青年は今年10月の増税前、26歳の誕生日にデロリアンを購入したと話し、他の車とデロリアンの決定的な違いを尋ねられると「40年近く前に造られたクルマなのに、いまでもそのビジョンを超えるクルマがない。永遠に(他の車は)追い越せないタイムレスなデザインですかね」と思いを伝え、下原氏は「まったくその通り!」と深く同意し、会場からは拍手が沸き起こった。
映画『ジョン・デロリアン』は2019年12月7日から、新宿武蔵野館(東京都新宿区)で公開。その後は全国順次ロードショーが予定されている。
【ストーリー】
1977年、南カリフォルニア。パイロットのジムは、麻薬密売の現場をFBIに押さえられ、罪を問われない代わりにFBIの情報提供者となる。彼は引っ越した家の隣に住むのがゼネラルモーターズでポンテアック・GTOの開発に携わったジョン・デロリアンだと知り驚く。美しい妻子とともに素晴らしい家に住み、夢のために自らの会社を立ち上げ、革新的な車“デロリアン”を開発しているジョンの完璧な人生に憧れるジム。しかしジョンの会社は新車開発で様々なトラブルが発生し、彼は資金繰りに窮していることを知ったジムは、友人となったジョンをFBIに麻薬密売の罪で売り渡す計画を立てるのだった…。
【スタッフなど】
監督:ニック・ハム
出演:リー・ペイス、ジェイソン・サダイキス、ジュディ・グリア、マイケル・カドリッツ
原題:DRIVEN/日本語字幕:種市譲二
配給:ツイン
【デロリアン・オーナーズ・クラブ】
DeLorean Owners Club Japan http://doc.g2.xrea.com/
【オススメ・書籍情報】
書名:デロリアン・バイヤーズガイド《夢の車、購入の手引き》
著者:ジェームズ・エスペイ氏/翻訳:下原修氏
発行:カマド/発売:メディアパルムック
頁数:128ページ
判型:A4版
価格:3000円+税
発売:2015年5月16日
ISBN-10:4802150180
ISBN-13: 978-4802150187
販売サイト:https://www.amazon.co.jp/dp/4802150180/
<目次>
序文/著者まえがき/訳者まえがき
01・序論
デロリアンの歴史を紐解きます/さて、実際に探してみると
デロリアンの牽引と搬送/ デロリアンの製造番号の整合性
操作・操縦系統/メーターパネル/主要諸元
本書と、デロリアン・コミュニティーで使われる一般的な用語
02:外装
03:内装
04:トランク
05:エンジンルーム
06:フレーム、ボディー、ルーフ
07:デロリアンの機能と特徴
リレーおよびサーキットブレーカー、ヒューズ早見表
デロリアン燃料系統構成部品
デロリアン・タンク内蔵燃料系統構成部品
メーカー提供の整備関連
デロリアンの適度な運行と保管について
08:一般的な故障と修理法
09:ディ―ラーオプション
10:メーカー提供仕様車および特装車
11:補足事項
A【知っておきたい現在のデロリアン事情】
B【チューニングおよびエンジンスワップ】
C【ステンレスボディー VS 塗装済みデロリアン】
D【VIN と 製造番号】
E【メーカー所有のVIN】
F【購入資金と自動車保険】
G【デロリアンの整備】
H【デロリアンの関連書籍】
12:終わりに:日本のデロリアン事情
《カーケアプラス編集部@金武あずみ》
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