熱中症事故につながる「子どもの車内置き去り」。直近1年間で一般ドライバーの5人に1人が車内置き去りを経験し、子どもの車内置き去りを見かけても9割近くの人が何もせず素通りしている、という実態が明らかになった。
自動車内装材を取扱う複合型専門商社の三洋貿易は、車内置き去りの潜在リスクを把握することを目的に、全国の子どもを乗せて車を運転するドライバー2652名と、幼稚園・保育園で送迎を担当する267名を対象として実態調査を実施した。本稿では乗用車運転者に対して行なわれた調査について説明する。
米国の「Kids And Cars.org」によると、自動車内に取り残された子どもが熱中症で亡くなる事故のうち、5割以上が無意識の置き忘れだ。いっぽう日本においては現状や潜在リスクは十分に可視化されていない。三洋貿易では、共働き世帯の増加や保育現場での人手不足など、育児に関わる人々の負担増加により、意図せずに子どもを車内に置き去りにしてしまう可能性があると考えており、実態調査を独自に実施した。
結果、直近1年間で一般ドライバーの5人に1人(22%)が、車に子どもだけを残して車を離れたことがあることがわかった。また、子どもだけが車内に残されている状況を見かけても、87%の人がその場を素通りし、社会的セーフティーネットが弱い実態も明らかになった。
調査結果概要
1. これまでに全体の30%、直近1年間では全体の5人に1人(22%)が子どもを車内に残した経験あり
2. 車内置き去りの要因について、全体の70%が保護者の意識不足と認識
3. 置き去り検知システムの利用意向は20代、30代の現役子育て世代で高い
4. 子どもの車内置き去りを見かけても87%が何もせず素通りをし、社会的セーフティーネットがない
3で、子どもの車内放置を検知し、防止するシステムを欲しいと回答した人に、そういったシステムを取り入れるのにいくらまで支払うか質問したところ、20代では無償から1万円程度までとの回答が83%を占めた。60歳以上では同じ価格帯は64.2%で、3万円から10万円程度まで支払うと回答した割合が年代別で最も大きくなった。
帝京大学医学部附属病院高度救命救急センターのセンター長で、帝京大学医学部救急医学講座教授の 三宅康史先生は「子どもの車内置き去りについては規制がなく、認識も低い。子どもを一人にしなければならない理由がある中で、例えば子どもを簡単に預かってもらえる手段があれば、車内で待たせる必要はなくなる。さらに、置き忘れや車内環境の異常を知らせる技術の開発・設置や、温度・湿度・日射の制御、車内置き去りリスクを正しく認識すること、未就学児を連れていっても嫌がられない社会を醸成することなど、総合的な対策が求められる」とコメント。
三洋貿易では本調査を経て、車内置き去りについて個人の意識に任せるのではなく、センサーなどを活用した見守りの仕組みの導入や、社会全体で子どもを守る意識の醸成が必要であると考える。
調査概要
●調査方法:オンライン定量調査
●調査期間:2022年5月18~23日
●調査対象:子どももしくは孫を乗せて自動車の運転を行う20歳から69歳のドライバー
●サンプル数:全国2652人